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#1 レツオウガ起動

Chapter03 魔狼 11-07

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「な、え、はっ、はぁ!?」
 想定外にも程があるこの状況に、辰巳はわかりやすくうろたえた。左手がコンソールから外せたなら、風葉に詰め寄っていた事だろう。
「な、なんで――」
「ストップ! 気持ちは分かるけどその前に聞かせて!」
 平手を突き出し、風葉は辰巳を強引に遮る。
「その、ええと……落ちて来るまでの間、私のコト見えてた? このバイクの運転手だって分かってた?」
「そんなわけないだろ!?」
「そう。ならいいんだ」
 乱れたスカートを手直しし、念のため尻尾で腰回りを覆い隠して、風葉は一息つく。
 が、辰巳の方は一息つく暇なんてない。
「良くない。まったくもって良くない。何で霧宮さんがここに居るんだ? 冥はどうしたんだ? それにその耳と尻尾は!?」
 まくし立てる辰巳。あまりの状況にギノアすら動きを止めていたが、風葉は意に介さない。
「ああ、これ? フェンリルと同調したんだよ。私が、私の意志で」
「どうしてそんな事を!?」
 苛立ちを隠そうともしない辰巳。割れたバイザーの向こうから覗く苛立ちと困惑を、風葉はまっすぐに見据えた。
「自爆」
 一息。
 放たれた一言に、辰巳の表情が消えた。
「するつもり、だったんでしょ」
 言いつつ、風葉はレックウのシートから降りた。合体状態におけるレックウ搭乗者の役目は、主に特殊装備への霊力供給である。最初の起動に必要な霊力は合体時に供給済みなので、こうした融通は効くのだ。
「そういうの、何て言うか、困る」
 二歩、三歩。風葉は風葉の後ろから、真横に移動する。
「うん、すごい困る。大体私、五辻いつつじくんに言いたいことがあるもの」
「言いたい事……?」
「そ。さっき、寮の玄関先で言いそびれたこと」
 風葉が頷いたのと同時に、オウガのEマテリアルへ光が灯る。
 足首。膝。手首。肩。そして胸部。未だ最適化が終わらぬ辰巳の左手首に先駆け、新たな術式が銀色の息吹に輝く。
「私はね、五辻くん」
 そんな銀色に照らされながら、風葉はまっすぐに辰巳を見た。
 近い。あと一歩で互いの息がかかりかねない至近距離から、金色の双眸が辰巳を見据える。
 そして、言った。
「キミの事が、嫌いなんだよ」
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