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#1 レツオウガ起動
Chapter03 魔狼 09-01
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時間は少々巻き戻る。
『……たった今、オウガを自爆させる事が決定したよ』
明日の天気は雨だそうだ。
それくらいに軽い語調で、巌はぼんやりとつぶやいた。
「え」
二度、三度。まばたきする風葉。
「そっかーならしゃーないなー。自壊術式の準備せんと」
今まで以上に表情のない顔で、利英はキーボードを叩き始めた。周囲に浮かんでいた立体映像モニタ群に、何かよくわからない文字列が踊り出す。
「あの、ちょっと」
周りの男どもを見回す風葉だが、誰も取り合おうとしない。
「なら、僕も準備しなきゃな。労働環境は劣悪の一言だったが、なかなかどうして退屈しなかったぞ」
『それは光栄。それで、Rフィールドの突破方法は――』
淡々と冥はタブレットを置き、巌も受話器越しに淡々と誰かと話し込んでいる。
その様は、酷く退屈な事務手続きにも似ていて。
「ちょ、ちょっと待って下さい!」
気付けば、風葉は叫んでいた。
「オウガを自爆させるってどういう事ですか!? オウガって五辻くんが乗ってるでっかいロボットの事ですよね!?」
ああ、と頷く三人の男。
即座に、ごく当たり前に。
彼等は辰巳を切り捨てると、言ってのけた。
くらりと、風葉は目眩を覚えた。
「ど、どうしてですか!? そんな事をしたら五辻くん、は――!」
「死ぬな、確実に。何せ辰巳自身が爆破信管みたいなもんだからな。後はこっちで火種を送ってやるだけさ」
肩をすくめ、おどけるように冥は言う。平素なら、その仕草とウインクにどぎまぎしてしまった事だろう。
だが今。怒りの火がついた風葉の目に、そんなものは映らない。
「だから、どうして五辻くんが死ななきゃならないんですか!? どうしてあなた達は、五辻くんをっ、見殺しにできるんですか!?」
『そういう取り決めだからさ。この部隊が出来た時の、ね』
淡々と、巌が画面越しに言う。
「取り決めって……そんなの!」
『おかしい、と言いたいかい。ヒトの命がかかってるんだろう、と言いたいのかい』
先んじる巌の声は、奇妙なくらいに穏やかで。
図らずも、風葉は気勢を削がれてしまった。
『……たった今、オウガを自爆させる事が決定したよ』
明日の天気は雨だそうだ。
それくらいに軽い語調で、巌はぼんやりとつぶやいた。
「え」
二度、三度。まばたきする風葉。
「そっかーならしゃーないなー。自壊術式の準備せんと」
今まで以上に表情のない顔で、利英はキーボードを叩き始めた。周囲に浮かんでいた立体映像モニタ群に、何かよくわからない文字列が踊り出す。
「あの、ちょっと」
周りの男どもを見回す風葉だが、誰も取り合おうとしない。
「なら、僕も準備しなきゃな。労働環境は劣悪の一言だったが、なかなかどうして退屈しなかったぞ」
『それは光栄。それで、Rフィールドの突破方法は――』
淡々と冥はタブレットを置き、巌も受話器越しに淡々と誰かと話し込んでいる。
その様は、酷く退屈な事務手続きにも似ていて。
「ちょ、ちょっと待って下さい!」
気付けば、風葉は叫んでいた。
「オウガを自爆させるってどういう事ですか!? オウガって五辻くんが乗ってるでっかいロボットの事ですよね!?」
ああ、と頷く三人の男。
即座に、ごく当たり前に。
彼等は辰巳を切り捨てると、言ってのけた。
くらりと、風葉は目眩を覚えた。
「ど、どうしてですか!? そんな事をしたら五辻くん、は――!」
「死ぬな、確実に。何せ辰巳自身が爆破信管みたいなもんだからな。後はこっちで火種を送ってやるだけさ」
肩をすくめ、おどけるように冥は言う。平素なら、その仕草とウインクにどぎまぎしてしまった事だろう。
だが今。怒りの火がついた風葉の目に、そんなものは映らない。
「だから、どうして五辻くんが死ななきゃならないんですか!? どうしてあなた達は、五辻くんをっ、見殺しにできるんですか!?」
『そういう取り決めだからさ。この部隊が出来た時の、ね』
淡々と、巌が画面越しに言う。
「取り決めって……そんなの!」
『おかしい、と言いたいかい。ヒトの命がかかってるんだろう、と言いたいのかい』
先んじる巌の声は、奇妙なくらいに穏やかで。
図らずも、風葉は気勢を削がれてしまった。
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