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#1 レツオウガ起動
Chapter03 魔狼 05-02
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掲げられた左腕Eマテリアルから、まっすぐに放たれる青い光。安全装置解除のシグナルであるその青は、紫色の円陣越しにオウガローダーのコクピットへと着信。
合図を受け取ったオウガローダーは鋼の心臓を脈打たせ、真正面に穿たれた紫色の門へと突っ込む。
暗い門を潜る時間は、僅かに一秒。
利英の改変によってディティールこそ多少違うが、色は変わらぬ紫色の出口を抜ければ、そこはもう日乃栄高校のグラウンドだ。
先日キクロプスと対峙した時のように、神影鎧装の真向かいへ停車するオウガローダー。
ぶわりと風を叩きつける巨大なバンパーを背に、辰巳は己の大鎧装へシステム起動を告げる。
「モードチェンジ、スタンバイ」
『Roger Silhouette Frame Mode Ready』
通常では使われない変形用の機構が熱を帯び、循環する霊力が辰巳のバイザーにコンディションを転送。
オールグリーン、準備完了。そして、辰巳は叫んだ。
「オウガローダーッ! シルエットモードッ!」
轟、と。パイロットの指令を受け、オウガローダーが立ち上がる。
寄せ木細工のように装甲がスライド、姿を現しつつ組み上がっていく鋼鉄の足、腕、胴体。
そんな鋼鉄の上を、辰巳は待つのももどかしく跳び上っていく。律儀に牽引ビームを待っていて、ギノアの神影鎧装に隙を突かれては泣くに泣けない。
「……うん?」
そうしてオウガのコクピットに着地した辰巳は、いつものコンソールの背後に妙なモノを見つけた。
床面に据え付けられた、一メートル四方の小さなシャッター。先日は影も形も無かったモノだ。枠外に小さく書かれた注釈から察するに、その下にあるのは多分内部機構へのコネクターだろう。
「へぇ。レツオウガとかいうヤツの再現、ホントに出来たのか」
――二年前。まだ五辻辰巳という仮の名ですら無かった頃。
現在仮設のコクピットが設置されているこの場所に、かつて合体していたコアユニット。それがどんな形状だったかは聞いた事も無いが、とにかくその機能を再現するための素地は整ったらしい。
だが果たして、それを披露する機会は訪れるのだろうか。
「……ち」
半ば叩きつけるような勢いで、辰巳は左腕をコンソールと接続。
各種制御システムが起動し、バイザーの内側に各種パラメータが表示。同時に左腕を基点として霊力の流れが拡張し、辰巳はオウガと同調開始。
『Get Set Ready』
黒色をしたプロテクターの表面に光の紋様――同調を示す術式が刻まれ、機体各所のEマテリアルとリンクが確立。
「大鎧装! 展開ッ!」
起動キーワードを言い放つ辰巳。直後に光のワイヤーフレームがコクピット全体を包み、更にオウガ頭部の骨組みを瞬く間に編み上げる。
その編み目越しにギノアを見やれば、向こうの神影鎧装も完成目前であった。白い影が、輝く光が、神の姿を赤色の空に投射している。
そんな光と霊力の隙間から、両者は互いを垣間見た。
言葉はない。そもそも届く距離ではない。
ただ、辰巳は睨みながら、ギノアは笑いながら。
両者は、術式に完成の指令を告げた。
合図を受け取ったオウガローダーは鋼の心臓を脈打たせ、真正面に穿たれた紫色の門へと突っ込む。
暗い門を潜る時間は、僅かに一秒。
利英の改変によってディティールこそ多少違うが、色は変わらぬ紫色の出口を抜ければ、そこはもう日乃栄高校のグラウンドだ。
先日キクロプスと対峙した時のように、神影鎧装の真向かいへ停車するオウガローダー。
ぶわりと風を叩きつける巨大なバンパーを背に、辰巳は己の大鎧装へシステム起動を告げる。
「モードチェンジ、スタンバイ」
『Roger Silhouette Frame Mode Ready』
通常では使われない変形用の機構が熱を帯び、循環する霊力が辰巳のバイザーにコンディションを転送。
オールグリーン、準備完了。そして、辰巳は叫んだ。
「オウガローダーッ! シルエットモードッ!」
轟、と。パイロットの指令を受け、オウガローダーが立ち上がる。
寄せ木細工のように装甲がスライド、姿を現しつつ組み上がっていく鋼鉄の足、腕、胴体。
そんな鋼鉄の上を、辰巳は待つのももどかしく跳び上っていく。律儀に牽引ビームを待っていて、ギノアの神影鎧装に隙を突かれては泣くに泣けない。
「……うん?」
そうしてオウガのコクピットに着地した辰巳は、いつものコンソールの背後に妙なモノを見つけた。
床面に据え付けられた、一メートル四方の小さなシャッター。先日は影も形も無かったモノだ。枠外に小さく書かれた注釈から察するに、その下にあるのは多分内部機構へのコネクターだろう。
「へぇ。レツオウガとかいうヤツの再現、ホントに出来たのか」
――二年前。まだ五辻辰巳という仮の名ですら無かった頃。
現在仮設のコクピットが設置されているこの場所に、かつて合体していたコアユニット。それがどんな形状だったかは聞いた事も無いが、とにかくその機能を再現するための素地は整ったらしい。
だが果たして、それを披露する機会は訪れるのだろうか。
「……ち」
半ば叩きつけるような勢いで、辰巳は左腕をコンソールと接続。
各種制御システムが起動し、バイザーの内側に各種パラメータが表示。同時に左腕を基点として霊力の流れが拡張し、辰巳はオウガと同調開始。
『Get Set Ready』
黒色をしたプロテクターの表面に光の紋様――同調を示す術式が刻まれ、機体各所のEマテリアルとリンクが確立。
「大鎧装! 展開ッ!」
起動キーワードを言い放つ辰巳。直後に光のワイヤーフレームがコクピット全体を包み、更にオウガ頭部の骨組みを瞬く間に編み上げる。
その編み目越しにギノアを見やれば、向こうの神影鎧装も完成目前であった。白い影が、輝く光が、神の姿を赤色の空に投射している。
そんな光と霊力の隙間から、両者は互いを垣間見た。
言葉はない。そもそも届く距離ではない。
ただ、辰巳は睨みながら、ギノアは笑いながら。
両者は、術式に完成の指令を告げた。
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