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#1 レツオウガ起動

Chapter03 魔狼 03-05

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「まぁ、いいや」
 幻燈結界の外に出た塊を跨ぎ、辰巳は倒れ伏したギノアに近付いていく。
 まずは術者本人であるギノアを倒す。考えるのはその後で、ファントム・ユニットの全員を交えてすれば良い。いつもそうしてきた事だ。
 もっとも今回はそれが裏目に出てしまうのだが――今の辰巳に、それを知る由は無かった。
 そうこうするうちに、辰巳はギノアの真横に辿り着いた。
 辰巳に足を向けたまま大の字になっているギノアは、ぴくりとも動こうとしない。
 と言うよりも、動けないのだろう。胴体に巨大な穴があいているために。
「よう。涼しそうだな」
「涼しい、どころか。これでは、風邪を――引、いてしまい、ますよ」
 ひゅうひゅうと。語調そのものは苦しげながらも、ギノアの言葉の端々からは余裕が垣間見える。
「アンタ死霊術師リッチだろ、死人が病気になるかよ」
 言いつつ、辰巳は考える。
 程度の差はあれど、分霊は基本的に本体と常に繋がっている。出来によって程度の差はあるが、この寸分違わぬ外見から鑑みるに、この分霊は本体と相当に深く繋がっている筈だ。
 今のうちにこれを確保して色々と調べれば、この一件を終わらせ、引いては風葉かざはに危険が及ぶ事も無くなる――。
「――。いや、何考えてんだ俺は」
 首を振る辰巳。
 ギノアが言っていたでは無いか。狙いは辰巳だ、と。
「……ん?」
 だが、だとしたら。
 いわおを筆頭として誰にも分からず、他にも色々と問題が重なっていたため、今の今まで保留にしていた疑問が、不意に鎌首をもたげた。
「一つ聞かせろ。どうして霧……いや、日乃栄の女子生徒にフェンリルが憑いたんだ」
「フェンリル……? ああ、あの娘さんですか。きっと保有霊力が大きかったせいで、引き寄せられたんでしょうねぇ」
 ギノアが口走ったのは、ファントム・ユニット内でも上げられた仮定の一つだ。常に放出され続けているのが一般人の霊力であるとは言え、当然ながらその量は個人によってムラがある。
 恐らく風葉はそれなりに霊力が留まる体質、世間一般で言う『霊感がある』『ちょっとするどい』と言ったクチだったのだろう。
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