上 下
88 / 162
#1 レツオウガ起動

Chapter03 魔狼 03-03

しおりを挟む
「……ふぅん。こりゃ困った」
 つまらなさそうに鼻を鳴らしながら、辰巳はギノアの能力を試算する。
 瞬発力は恐らくフェンリル化した時と同等以上、防御力はやや下。接近戦に持ち込めれば一撃で片がつくだろうが、弾幕と跳躍がそれを許そうとしない。
 まぁ、その為に辰巳は自動拳銃を装備したのだが。
「では、こちらの番ですよっ!」
 笑いを顔面に貼り付けながら、光弾の連射を再開するギノア。
 それを先程と同様に再びかいくぐり、今度は銃撃での撃ち落としも挟みながら、辰巳は再度左腕を口元に寄せる。
「チェンジ、ブーストカートリッジ!」
『Roger BoostCartridge Ready』
 今までとは別個の指令。Eマテリアルから射出される新たな光。
「――むぅっ?」
 それに新たな術式を見たギノアは、それを撃ち落とすべく照準、発射、発射、発射。
 だがその射線は辰巳にも見え透いており、即座に銃弾で迎撃、迎撃、迎撃。
 一瞬の狭間で応酬される光弾と銃弾。その合間に光は指令通りに自動拳銃の弾倉カートリッジへと姿を変え、くるくると回転しながら辰巳の前に落下。
 同時に辰巳は左肩上へ自動拳銃を振り上げながら、弾倉を排出。五秒のリミットを待つ間も無く、飛び込んだ光弾とぶつかって相殺爆発。
 その爆光を隠れ蓑に、辰巳は真横へ、殴りつけるように銃把を振るう。
 銃把の軌道上にあった弾倉は、吸い込まれるようにその中へと収まった。
 更に辰巳は勢いを殺さず身体ごと半回転、銃口をギノアの正反対方向へと向ける。
 ここでようやく相殺爆発の煙が消え、ギノアは辰巳の奇妙な体勢を見た。銃口が、まったくの逆方向を向いている。
 何がしたいのか知らないが、とにかく光弾を――と杖を構えた時にはもう遅い。
 発砲。
 光弾の爆発にも負けぬ轟音が、自動拳銃の銃口から放たれる。
 そしてその轟音に乗り、辰巳は十五メートルの距離を飛んだ。
 自動拳銃を、即席の短距離加速装置に変える――名前通りの加速弾倉ブーストカートリッジというわけだ。
 コンマ四秒。全身に音の壁を感じながら、辰巳はギノアへ肘打ちを叩き込んだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

銀河辺境オセロット王国

kashiwagura
SF
 少年“ソウヤ”と“ジヨウ”、“クロー”、少女“レイファ”は銀河系辺縁の大シラン帝国の3等級臣民である。4人は、大シラン帝国本星の衛星軌道上の人工衛星“絶対守護”で暮らしていた。  4人は3等級臣民街の大型ゲームセンターに集合した。人型兵器を操縦するチーム対戦型ネットワークゲーム大会の決勝戦に臨むためだった  4人以下のチームで出場できる大会にソウヤとジヨウ、クローの男3人で出場し、初回大会から3回連続で決勝進出していたが、優勝できなかった。  今回は、ジヨウの妹“レイファ”を加えて、4人で出場し、見事に優勝を手にしたのだった。  しかし、優勝者に待っていたのは、帝国軍への徴兵だった。見えない艦隊“幻影艦隊”との戦争に疲弊していた帝国は即戦力を求めて、賞金を餌にして才能のある若者を探し出していたのだ。  幻影艦隊は電磁波、つまり光と反応しない物質ダークマターの暗黒種族が帝国に侵攻してきていた。  徴兵され、人型兵器のパイロットとして戦争に身を投じることになった4人だった。  しかし、それはある意味幸運であった。  以前からソウヤたち男3人は、隣国オセロット王国への亡命したいと考えていたのだ。そして軍隊に所属していれば、いずれチャンスが訪れるはずだからだ。  初陣はオセロット王国の軍事先端研究所の襲撃。そこで4人に、一生を左右する出会いが待っていた。

悠久の機甲歩兵

竹氏
ファンタジー
文明が崩壊してから800年。文化や技術がリセットされた世界に、その理由を知っている人間は居なくなっていた。 彼はその世界で目覚めた。綻びだらけの太古の文明の記憶と機甲歩兵マキナを操る技術を持って。 文明が崩壊し変わり果てた世界で彼は生きる。今は放浪者として。 ※現在毎日更新中

ARIA(アリア)

残念パパいのっち
ミステリー
山内亮(やまうちとおる)は内見に出かけたアパートでAR越しに不思議な少女、西園寺雫(さいおんじしずく)と出会う。彼女は自分がAIでこのアパートに閉じ込められていると言うが……

サイバーパンクの日常

いのうえもろ
SF
サイバーパンクな世界の日常を書いています。 派手なアクションもどんでん返しもない、サイバーパンクな世界ならではの日常。 楽しめたところがあったら、感想お願いします。

銀河戦国記ノヴァルナ 第1章:天駆ける風雲児

潮崎 晶
SF
数多の星大名が覇権を目指し、群雄割拠する混迷のシグシーマ銀河系。 その中で、宙域国家オ・ワーリに生まれたノヴァルナ・ダン=ウォーダは、何を思い、何を掴み取る事が出来るのか。 日本の戦国時代をベースにした、架空の銀河が舞台の、宇宙艦隊やら、人型機動兵器やらの宇宙戦記SF、いわゆるスペースオペラです。 主人公は織田信長をモデルにし、その生涯を独自設定でアレンジして、オリジナルストーリーを加えてみました。 史実では男性だったキャラが女性になってたり、世代も改変してたり、そのうえ理系知識が苦手な筆者の書いた適当な作品ですので、歴史的・科学的に真面目なご指摘は勘弁いただいて(笑)、軽い気持ちで読んでやって下さい。 大事なのは勢いとノリ!あと読者さんの脳内補完!(笑) ※本作品は他サイト様にても公開させて頂いております。

処理中です...