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#1 レツオウガ起動

Chapter03 魔狼 01-07

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「おお! 完成したのですね!」
「ええ、調整に中々手間取りましたけどね。ここに刻まれた術式の、最後のパーツ。貴方の霊力を増大し、オウガを圧倒する大鎧装を生成可能とさせる……そうですね、霊力増幅器です」
「ありがとう! これで私は、夢を取り戻せる!」
 笑顔のまま部屋の中央に霊力増幅器を設置し、早速術式の起動準備にかかるギノア。
 その背中に、サトウは忠告する。
「ですが気をつけて下さいね? いかんせん試作品なので、あまり長く動かしていると不具合が起きるかもしれません」
「大丈夫ですよ、それほど時間がかかるとは思えませんし! ともあれ、早速始めましょう!」
 気を抜けば口笛でも吹きそうな喜びはそのままに、ギノアはまず日本にある分霊術式を起動させ、精神集中状態に移行する。
 分霊と一口に言っても、グレードによって制御に割く精神集中の度合いは変わってくる。
 単純な命令しか出来ない代わりに自律行動が出来る個体もいれば、五感全てを没入出来る代わりに本体は指一本動かせなくなる個体もいる。
 ギノアが操作しているのは、まさに後者だ。
 今、ギノアの意識は空間を飛び越えて日本の日乃栄高校にいる。なのでよほど強烈な大声や打撃でも浴びせない限り、今のギノアは何も反応しないだろう。
 それを良い事に、グレンは当人の前で堂々とぼやく。
「あーあ面倒クサ。サトウさんよぉ、こんな死に損ないとっとと片付けて、さっさと温泉にでもいこうぜ? 風呂上がりにキンキンの牛乳をこう、キュッとよ」
「それは実に魅力的な提案ですが、仕事はきっちりやり遂げなければいけませんよ。それがビジネスです」
「へいへい、分かってますよ。その為にわざわざ仕込んだんだしな」
 ちら、とグレンは霊力増幅器に視線を落とす。あの箱の内部、天板の裏側にも彼は転移術式を仕込んだのだ。
「にしても、中々エグイ事してるよな俺ら。この死に損ない、あの箱の中身が何なのか分かってないんだろ?」
「そうですね。ですがまぁ、フリードマンさん自身が望まれた事ですし」
「ハ、良く言うぜ。この死に損ないを復活させたのも、中身のアレに細工したのも、サトウさんなんだろ?」
 変わらぬ笑顔を貼り付けたまま、サトウは頷く。
 判子で押したように変わらぬ表情には、しかしうっすらと愉悦が透けていた。
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