81 / 162
#1 レツオウガ起動
Chapter03 魔狼 01-07
しおりを挟む
「おお! 完成したのですね!」
「ええ、調整に中々手間取りましたけどね。ここに刻まれた術式の、最後のパーツ。貴方の霊力を増大し、オウガを圧倒する大鎧装を生成可能とさせる……そうですね、霊力増幅器です」
「ありがとう! これで私は、夢を取り戻せる!」
笑顔のまま部屋の中央に霊力増幅器を設置し、早速術式の起動準備にかかるギノア。
その背中に、サトウは忠告する。
「ですが気をつけて下さいね? いかんせん試作品なので、あまり長く動かしていると不具合が起きるかもしれません」
「大丈夫ですよ、それほど時間がかかるとは思えませんし! ともあれ、早速始めましょう!」
気を抜けば口笛でも吹きそうな喜びはそのままに、ギノアはまず日本にある分霊術式を起動させ、精神集中状態に移行する。
分霊と一口に言っても、グレードによって制御に割く精神集中の度合いは変わってくる。
単純な命令しか出来ない代わりに自律行動が出来る個体もいれば、五感全てを没入出来る代わりに本体は指一本動かせなくなる個体もいる。
ギノアが操作しているのは、まさに後者だ。
今、ギノアの意識は空間を飛び越えて日本の日乃栄高校にいる。なのでよほど強烈な大声や打撃でも浴びせない限り、今のギノアは何も反応しないだろう。
それを良い事に、グレンは当人の前で堂々とぼやく。
「あーあ面倒クサ。サトウさんよぉ、こんな死に損ないとっとと片付けて、さっさと温泉にでもいこうぜ? 風呂上がりにキンキンの牛乳をこう、キュッとよ」
「それは実に魅力的な提案ですが、仕事はきっちりやり遂げなければいけませんよ。それがビジネスです」
「へいへい、分かってますよ。その為にわざわざ仕込んだんだしな」
ちら、とグレンは霊力増幅器に視線を落とす。あの箱の内部、天板の裏側にも彼は転移術式を仕込んだのだ。
「にしても、中々エグイ事してるよな俺ら。この死に損ない、あの箱の中身が何なのか分かってないんだろ?」
「そうですね。ですがまぁ、フリードマンさん自身が望まれた事ですし」
「ハ、良く言うぜ。この死に損ないを復活させたのも、中身のアレに細工したのも、サトウさんなんだろ?」
変わらぬ笑顔を貼り付けたまま、サトウは頷く。
判子で押したように変わらぬ表情には、しかしうっすらと愉悦が透けていた。
「ええ、調整に中々手間取りましたけどね。ここに刻まれた術式の、最後のパーツ。貴方の霊力を増大し、オウガを圧倒する大鎧装を生成可能とさせる……そうですね、霊力増幅器です」
「ありがとう! これで私は、夢を取り戻せる!」
笑顔のまま部屋の中央に霊力増幅器を設置し、早速術式の起動準備にかかるギノア。
その背中に、サトウは忠告する。
「ですが気をつけて下さいね? いかんせん試作品なので、あまり長く動かしていると不具合が起きるかもしれません」
「大丈夫ですよ、それほど時間がかかるとは思えませんし! ともあれ、早速始めましょう!」
気を抜けば口笛でも吹きそうな喜びはそのままに、ギノアはまず日本にある分霊術式を起動させ、精神集中状態に移行する。
分霊と一口に言っても、グレードによって制御に割く精神集中の度合いは変わってくる。
単純な命令しか出来ない代わりに自律行動が出来る個体もいれば、五感全てを没入出来る代わりに本体は指一本動かせなくなる個体もいる。
ギノアが操作しているのは、まさに後者だ。
今、ギノアの意識は空間を飛び越えて日本の日乃栄高校にいる。なのでよほど強烈な大声や打撃でも浴びせない限り、今のギノアは何も反応しないだろう。
それを良い事に、グレンは当人の前で堂々とぼやく。
「あーあ面倒クサ。サトウさんよぉ、こんな死に損ないとっとと片付けて、さっさと温泉にでもいこうぜ? 風呂上がりにキンキンの牛乳をこう、キュッとよ」
「それは実に魅力的な提案ですが、仕事はきっちりやり遂げなければいけませんよ。それがビジネスです」
「へいへい、分かってますよ。その為にわざわざ仕込んだんだしな」
ちら、とグレンは霊力増幅器に視線を落とす。あの箱の内部、天板の裏側にも彼は転移術式を仕込んだのだ。
「にしても、中々エグイ事してるよな俺ら。この死に損ない、あの箱の中身が何なのか分かってないんだろ?」
「そうですね。ですがまぁ、フリードマンさん自身が望まれた事ですし」
「ハ、良く言うぜ。この死に損ないを復活させたのも、中身のアレに細工したのも、サトウさんなんだろ?」
変わらぬ笑顔を貼り付けたまま、サトウは頷く。
判子で押したように変わらぬ表情には、しかしうっすらと愉悦が透けていた。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
日本国転生
北乃大空
SF
女神ガイアは神族と呼ばれる宇宙管理者であり、地球を含む太陽系を管理して人類の歴史を見守ってきた。
或る日、ガイアは地球上の人類未来についてのシミュレーションを実施し、その結果は22世紀まで確実に人類が滅亡するシナリオで、何度実施しても滅亡する確率は99.999%であった。
ガイアは人類滅亡シミュレーション結果を中央管理局に提出、事態を重くみた中央管理局はガイアに人類滅亡の回避指令を出した。
その指令内容は地球人類の歴史改変で、現代地球とは別のパラレルワールド上に存在するもう一つの地球に干渉して歴史改変するものであった。
ガイアが取った歴史改変方法は、国家丸ごと転移するもので転移する国家は何と現代日本であり、その転移先は太平洋戦争開戦1年前の日本で、そこに国土ごと上書きするというものであった。
その転移先で日本が世界各国と開戦し、そこで起こる様々な出来事を超人的な能力を持つ女神と天使達の手助けで日本が覇権国家になり、人類滅亡を回避させて行くのであった。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
スペーストレイン[カージマー18]
瀬戸 生駒
SF
俺はロック=クワジマ。一匹狼の運び屋だ。
久しく宇宙無頼を決めていたが、今回変な物を拾っちまった。
そのまま捨ててしまえば良かったのに、ちょっとした気の迷いが、俺の生き様に陰をさす。
さらば自由な日々。
そして……俺はバカヤロウの仲間入りだ。
●「小説化になろう」様にも投稿させていただいております。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
妹が憎たらしいのには訳がある
武者走走九郎or大橋むつお
SF
土曜日にお母さんに会うからな。
出勤前の玄関で、ついでのように親父が言った。
俺は親の離婚で別れた妹に四年ぶりに会うことになった……。
お母さんに連れられた妹は向日葵のような笑顔で座っていた。
座っていたんだけど……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる