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#1 レツオウガ起動
Chapter02 凪守 04-04
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気付けば、辰巳は語り出していた。
無味乾燥な、自分の過去の断片を。
「二年前の話だ。ある組織が途方も無くデカイ、かつ悪い事を企んでいた。プロジェクトI.S.F.――Immortal Silhouette Flame。日本語訳すると神影鎧装計画だな」
「しんえい、がいそう?」
首を捻る風葉。先日、同じ言葉を巌が言った憶えがあったからだ。
「端的に言えば、それは神様の力を持つ鎧装を造る計画だった。霊力で神様の模造品――神様の影を造り出して、そいつを大鎧装に接続しちまおうって寸法さ」
背もたれに寄りかかり、だらしなく天井を見上げる辰巳。かつて若草色だったろう天井は染みだらけで、どこもかしこもくたびれていた。
「それが完成すれば、恐らく一機だけでも世界のパワーバランスは大きく変わってただろう。霊力で組んだ紛い物とはいえ、神様の力を振るえるんだからな」
ふ、と辰巳はそこで一つ息をつく。
自嘲、と言うにはどうにも空虚な感じだ。
「無論、凪守にそれを見逃す理由は無かった。選抜された急襲チームが現地に入って、突入の段取りを確認して、いざ――って時に、全ては終わった」
「完成、しちゃったの?」
「機体はな。だがシステムは不完全だった。だからその組織の秘密基地は、凪守の急襲チームが突入しようとした直前に、大爆発を起こした……暴走した神影鎧装が、基地を炎の海に変えちまったのさ」
天井の染みを数えるのを止め、辰巳は視線を戻す。
そうして浮かんでいた昆虫のような無表情に、風葉は危うく声をあげかけた。
「この時点で凪守の急襲作戦は、救出作戦に切り替わった。無差別破壊の前じゃあ、敵も味方も無かったからな」
色の無い辰巳の目は、真正面の風葉を見ていない。きっと、どこも見ては無い。
テーブルの上で手を組み、ただ淡々と言葉を吐き出していく。
「だが居たのはどうしようもなく死んでるヤツと、辛うじて死んでないヤツと、神影鎧装の余剰霊力にあてられてイカレたヤツだけだった。その合間にも神影鎧装は破壊活動を続け、あまつさえ神様が垂れ流す霊力のせいで、辺り一帯の霊脈が歪み出していた」
「ど……どう、なったのそれ」
「色々あって、急襲チームが神影鎧装のコアユニットを破壊してな。それでようやく止まった」
「そう、なんだ」
よかった、と言いかけた口を風葉は慌ててつぐむ。
実感こそ湧かないが、人死が出ているのだ。それも、恐らくはかなりの数の。まかり間違っても、そんな言葉を口走る訳にはいかなかった。
無味乾燥な、自分の過去の断片を。
「二年前の話だ。ある組織が途方も無くデカイ、かつ悪い事を企んでいた。プロジェクトI.S.F.――Immortal Silhouette Flame。日本語訳すると神影鎧装計画だな」
「しんえい、がいそう?」
首を捻る風葉。先日、同じ言葉を巌が言った憶えがあったからだ。
「端的に言えば、それは神様の力を持つ鎧装を造る計画だった。霊力で神様の模造品――神様の影を造り出して、そいつを大鎧装に接続しちまおうって寸法さ」
背もたれに寄りかかり、だらしなく天井を見上げる辰巳。かつて若草色だったろう天井は染みだらけで、どこもかしこもくたびれていた。
「それが完成すれば、恐らく一機だけでも世界のパワーバランスは大きく変わってただろう。霊力で組んだ紛い物とはいえ、神様の力を振るえるんだからな」
ふ、と辰巳はそこで一つ息をつく。
自嘲、と言うにはどうにも空虚な感じだ。
「無論、凪守にそれを見逃す理由は無かった。選抜された急襲チームが現地に入って、突入の段取りを確認して、いざ――って時に、全ては終わった」
「完成、しちゃったの?」
「機体はな。だがシステムは不完全だった。だからその組織の秘密基地は、凪守の急襲チームが突入しようとした直前に、大爆発を起こした……暴走した神影鎧装が、基地を炎の海に変えちまったのさ」
天井の染みを数えるのを止め、辰巳は視線を戻す。
そうして浮かんでいた昆虫のような無表情に、風葉は危うく声をあげかけた。
「この時点で凪守の急襲作戦は、救出作戦に切り替わった。無差別破壊の前じゃあ、敵も味方も無かったからな」
色の無い辰巳の目は、真正面の風葉を見ていない。きっと、どこも見ては無い。
テーブルの上で手を組み、ただ淡々と言葉を吐き出していく。
「だが居たのはどうしようもなく死んでるヤツと、辛うじて死んでないヤツと、神影鎧装の余剰霊力にあてられてイカレたヤツだけだった。その合間にも神影鎧装は破壊活動を続け、あまつさえ神様が垂れ流す霊力のせいで、辺り一帯の霊脈が歪み出していた」
「ど……どう、なったのそれ」
「色々あって、急襲チームが神影鎧装のコアユニットを破壊してな。それでようやく止まった」
「そう、なんだ」
よかった、と言いかけた口を風葉は慌ててつぐむ。
実感こそ湧かないが、人死が出ているのだ。それも、恐らくはかなりの数の。まかり間違っても、そんな言葉を口走る訳にはいかなかった。
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