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#1 レツオウガ起動
Chapter01 邂逅 04-05
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推論は全てが終わってから、風葉に憑依したままの犬耳も踏まえて、じっくりと重ねれば良い。今必要なのは、私的な目的で幻燈結界を破壊しようとしている輩を、全力で止める事だ。
そして、その為には。
「霧宮さん、泉さんを頼むよ」
「え? う、うん。分かったけど」
床に座らされた泉の背をしゃがんで支えながら、風葉は辰巳を見上げる。
「どうする気なの?」
「出前を頼むのさ」
「……何の?」
目が点になる風葉だが、辰巳は素知らぬ顔でヘッドギアのバイザーを開け、左腕の腕時計を操作。通信モードに切り替わったそれを口元に寄せながら、辰巳は風葉の知らぬ同僚に連絡を取る。
「ファントム4よりファントム3、至急オウガローダーを転送してくれ。場所は日乃栄高校の校庭の西側だ」
『了解。三十秒貰うぞ』
返って来たのは、予想外に甲高いボーイソプラノ。鈴を転がすように軽やかな響きを見せるその声は、二十二秒時点でポツリとつぶやく。
『……やまと屋の桜餅』
「あー、分かった分かった。終わったらな」
ひらひらと手を振る辰巳。その横顔には今までとはまるで違う親しみが浮かんでおり、風葉は出前とは別の驚きで目を丸くした。
辰巳がここまで心を許す相手が居るんだ、と。
しかしてそんな驚きは、突然巻き起こった怪現象に吹き飛ばされる。
窓の外。唐突に差し込んだ紫色の光が、校庭、生徒、キクロプスまでをもその輝きで塗り潰したのだ。
方角は西、丁度辰巳が要請したのと同じ方角。
その光源へ向けて、偶然にも同じタイミングで顔を向ける風葉とキクロプス。
そこには紫色の輝きを発する巨大な魔法陣が一つ、悠然と浮かんでいた。恐らくは、辰巳がファントム3と呼ぶ人物が、何らかの術式を発動したためなのだろう。
忽然と現れた魔法陣の全長は、キクロプスよりも一回り大きいだろうか。紫に光る巨大な円の中には、見た事も無い文字と紋様が、複雑に絡み合いながら一個の術式を描き出している。さながら、光の格子細工だ。
そんな細工を呼び出した張本人である辰巳は、まっすぐに左腕を、腕時計の青石を掲げる。
そして、叫ぶ。
「オウガローダーッ! 発進ッ!」
そして、その為には。
「霧宮さん、泉さんを頼むよ」
「え? う、うん。分かったけど」
床に座らされた泉の背をしゃがんで支えながら、風葉は辰巳を見上げる。
「どうする気なの?」
「出前を頼むのさ」
「……何の?」
目が点になる風葉だが、辰巳は素知らぬ顔でヘッドギアのバイザーを開け、左腕の腕時計を操作。通信モードに切り替わったそれを口元に寄せながら、辰巳は風葉の知らぬ同僚に連絡を取る。
「ファントム4よりファントム3、至急オウガローダーを転送してくれ。場所は日乃栄高校の校庭の西側だ」
『了解。三十秒貰うぞ』
返って来たのは、予想外に甲高いボーイソプラノ。鈴を転がすように軽やかな響きを見せるその声は、二十二秒時点でポツリとつぶやく。
『……やまと屋の桜餅』
「あー、分かった分かった。終わったらな」
ひらひらと手を振る辰巳。その横顔には今までとはまるで違う親しみが浮かんでおり、風葉は出前とは別の驚きで目を丸くした。
辰巳がここまで心を許す相手が居るんだ、と。
しかしてそんな驚きは、突然巻き起こった怪現象に吹き飛ばされる。
窓の外。唐突に差し込んだ紫色の光が、校庭、生徒、キクロプスまでをもその輝きで塗り潰したのだ。
方角は西、丁度辰巳が要請したのと同じ方角。
その光源へ向けて、偶然にも同じタイミングで顔を向ける風葉とキクロプス。
そこには紫色の輝きを発する巨大な魔法陣が一つ、悠然と浮かんでいた。恐らくは、辰巳がファントム3と呼ぶ人物が、何らかの術式を発動したためなのだろう。
忽然と現れた魔法陣の全長は、キクロプスよりも一回り大きいだろうか。紫に光る巨大な円の中には、見た事も無い文字と紋様が、複雑に絡み合いながら一個の術式を描き出している。さながら、光の格子細工だ。
そんな細工を呼び出した張本人である辰巳は、まっすぐに左腕を、腕時計の青石を掲げる。
そして、叫ぶ。
「オウガローダーッ! 発進ッ!」
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