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#1 レツオウガ起動
Chapter01 邂逅 03-03
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そう。ここまで技量の開きがあるとは、流石のフェンリルも予想外だったのだ。
例えば、先ほどから空振り続けている爪刃。
未だにかする気配すら見せない連撃ではあるが、フェンリルはそれらを一撃たりとも闇雲に振るった覚えはない。
魔術の多重操作を可能とする優秀な頭脳と、人間の範疇を大きく上回る魔獣の膂力。その二つに裏打ちされた爪刃で、今もフェンリルはあらゆる攻撃を矢継ぎ早に繰り出しているはずなのだ。
正面からの斬撃、返す刀での逆袈裟、フェイントを織り交ぜた刺突、全身全霊を込めた唐竹割り、等々。
どれか一撃でも当たれば即死は免れない、しかも秒単位で間断なく繰り出されている爪刃の嵐。それを、辰巳は全て打ち払い、あるいは最小限の身のこなしで回避し続けている。
まさしく神技だ。そうと言う他に言葉がない。
そんな神技を振るう相手が、何もせず、ただ赤い瞳でこちらを見つめ続けている――。
不意に、フェンリルは背中を氷柱で突き抜かれたような錯覚を受けた。
ああ、勝てない。
四十数年前、二度目に死んだあの時の絶望が、フェンリルの脳裏へ鮮やかに蘇る。
大いなる冬。地獄の赤に染まる空。終末を告げる笛の音。
どうあがいても勝てない戦力差。どうもがいても覆せない状況。それでも戦い続けた彼は、結局何も出来ぬまま死んだのだ。
そして最初に名乗った通りのスペクターと成り果て、気付いた時には全てを失っていた。
だから。だからこそ。
「それを、取り戻すんですよォッ!!」
崩れかけた戦意を決意で補強し、フェンリルは左右の爪刃を連続で振るう。
右、左。真空波すら起こす勢いで強襲する二本の巨大な刃を、辰巳はやはり打ち払って回避。余波が生み出す空気の断層にプロテクターを削られながら、辰巳は不意に左手首を口元に寄せる。
「アンタの事情は知らんが、それはこっちのセリフだ」
黒く塗り込められたフェイスシールドの向こうから、淡々と呟く辰巳の声。フェンリルの連撃が途切れる隙を狙っていた赤い瞳が、今こそ反撃の言葉を告げる。
「セット。モード、インペイル」
『Roger Impale Buster Ready』
例えば、先ほどから空振り続けている爪刃。
未だにかする気配すら見せない連撃ではあるが、フェンリルはそれらを一撃たりとも闇雲に振るった覚えはない。
魔術の多重操作を可能とする優秀な頭脳と、人間の範疇を大きく上回る魔獣の膂力。その二つに裏打ちされた爪刃で、今もフェンリルはあらゆる攻撃を矢継ぎ早に繰り出しているはずなのだ。
正面からの斬撃、返す刀での逆袈裟、フェイントを織り交ぜた刺突、全身全霊を込めた唐竹割り、等々。
どれか一撃でも当たれば即死は免れない、しかも秒単位で間断なく繰り出されている爪刃の嵐。それを、辰巳は全て打ち払い、あるいは最小限の身のこなしで回避し続けている。
まさしく神技だ。そうと言う他に言葉がない。
そんな神技を振るう相手が、何もせず、ただ赤い瞳でこちらを見つめ続けている――。
不意に、フェンリルは背中を氷柱で突き抜かれたような錯覚を受けた。
ああ、勝てない。
四十数年前、二度目に死んだあの時の絶望が、フェンリルの脳裏へ鮮やかに蘇る。
大いなる冬。地獄の赤に染まる空。終末を告げる笛の音。
どうあがいても勝てない戦力差。どうもがいても覆せない状況。それでも戦い続けた彼は、結局何も出来ぬまま死んだのだ。
そして最初に名乗った通りのスペクターと成り果て、気付いた時には全てを失っていた。
だから。だからこそ。
「それを、取り戻すんですよォッ!!」
崩れかけた戦意を決意で補強し、フェンリルは左右の爪刃を連続で振るう。
右、左。真空波すら起こす勢いで強襲する二本の巨大な刃を、辰巳はやはり打ち払って回避。余波が生み出す空気の断層にプロテクターを削られながら、辰巳は不意に左手首を口元に寄せる。
「アンタの事情は知らんが、それはこっちのセリフだ」
黒く塗り込められたフェイスシールドの向こうから、淡々と呟く辰巳の声。フェンリルの連撃が途切れる隙を狙っていた赤い瞳が、今こそ反撃の言葉を告げる。
「セット。モード、インペイル」
『Roger Impale Buster Ready』
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