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#1 レツオウガ起動

Chapter01 邂逅 01-07

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「うーん。みんな元気だなぁ」
「その元気に火を点けたのは誰よ!?」
「いやぁ、ついね。火災報知機のボタンとか押したくなる時あるじゃん?」
「押したくなるだけにしてよ! 良識の範疇で思いとどまろうよ!?」
 辰巳にジト目を向けながら、両耳に手を当てて塞ぐ風葉。もちろんその頬は真っ赤だ。
「はっは、ゴメンよ」
 笑いつつ、辰巳は風葉の手と耳を観察する。
 今、風葉が押さえている耳は人間の方だけだ。犬耳の方も騒音を避けるようペタリと垂れ下がってはいるが、先端は元の耳を塞ぐ風葉の指先を突き抜けている。
 どうやら、憑依の度合いはまだまだ低いようだ。
「まぁ、そんなのはどうでもいいとしてだ。銀髪と犬耳に関して心配することはないよ」
「ちょっ、どうでもいいって事は……って、えっ?」
 目が点になる風葉に、辰巳は更なる断言を重ねる。
「色々と準備が要るから今すぐってワケにはいかないが、それくらいなら簡単に戻るはずさ」
「そう、なんだ。それは、よかった、けど」
 安心半分、びっくり半分な表情を浮かべながら、風葉はまじまじと辰巳を見つめる。
「なんで、そんなに詳しいの?」
「さて、その辺を聞かれると返答に困るんだなー。ヤマが外れたテストみたいにさ」
「そこはちゃんと勉強しようよ」
「はっは、ゴメンよ」
 からから、と屈託なく辰巳は笑う。散々悩んでいた風葉とは対照的に、なんでもないような口振りだ。
「まぁ冗談は置いといて、実際もうすぐ朝のホームルームが始まるから――」
 その後で、という続きを、辰巳は言うことが出来なかった。
 あまつさえ、犬耳と銀髪についての追求は、全て後回しになってしまった。
 それ以上の怪異が、堂々と出現したからだ。
「っ!?」
 みし、と震える空気。
 たったそれだけで、世界は影色に沈んだ。
「……なに、これ」
 つぶやく風葉。
 一直線の廊下。朝日が差し込む窓。向かいに見える北校舎。並んでいる教室の扉。歩いて来る担任の先生方、等々。
 風葉の目に映っている全てのモノから、精彩が失われていた。
 比喩ではない。本当に、あらゆる色が、薄墨色のベールの向こうにあるのだ。
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