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体調不良
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先日、街中で悲劇を見てしまってからなんだか、体調が良くない。
頭痛やめまいや吐き気が頻繁に起こるようになった。体もなんだか重く、だるさが抜けない。あんなものを見てしまったから気持ちの問題かなと思っていたが、ある日とうとう倒れてしまった。
倒れる間際見えた自分の手は透けていた。
医師が呼ばれて診察を受けたところ原因はわからないらしい。
そんななか症状が進行しているのか、いないのか。頭痛やめまい、吐き気は治った。しかし次第に時間が飛ぶようになった。どうやら意識障害が出ているようだった。
次に目覚めた時にはギルフォード殿下がそばにいた。
とても心配そうにしている顔がこちらをのぞき込んでいた。申し訳ないと思っていたが、次に聞かされた話のせいで全て吹っ飛んでしまった。
なぜなら……
このままではわたし、いや神子は消えてしまうという。
神子の体にこちらの生体エネルギーを取り込まなければいけないらしい。そうしないと神子はこの世界から消えてしまうらしい。
しかし、その生体エネルギーの摂取方法が問題だった。
それはつまり、男女の交わりだった。
男女の交わりにより、神子の体にの生体エネルギーを取り込み、体内に巡らせなくてはいけないという。
当然わたしは拒否した。そんな、セッ……いや交わりによって存在を確定するなんてどうしても理解出来ないし、こちらの世界の人のために、この世界に留まらなきゃいけない理由もなく、受け入れられなかった。
存在をこちらの物にする。それはまるで神話のヨモツヘグイのようだと思った。
これらの話から考えるに別に私は病気ではないのだと思う。多分消えるというのは元の世界に戻るのだと思う。
調べた訳じゃないのになぜかわたしにはわかっていた。
わたしとしては正直、このまま消えてもいいと思った。そもそもわたしはあの時、死んでいたはずだったのだから。
訳のわからない世界に来て何もさせてもらえない。
この世界で大切にされている、しようとしてくれているというのはわかるけど。違うのだ。ずっと。
この世界に未練なんてない、強いていうならよくしてもらったのに申し訳ないという罪悪感みたいなものだ。
もう楽になりたかった。過剰に敬われるのも押し付けられるのも、悪口を言われるのも嫌だった。
しかし、ギルフォード殿下は違った。
「私を受け入れて下さい。そうしなければ、神子様は消えてしまうのです」
「いや、嫌です、わたしの嫌がることはしなくていいって言っていたじゃないですか」
「どうして?消えてしまうかもしれないのですよ?お嫌なのですか?文献にはかつての神子様は交わりを好まれるとあり、常に見目麗しい男性を側におき、ご寵愛を授けていたとされています。神子様も好まれるのでは?それに私達は番です。交わることによってより幸福を得ることが出来ます」
神子様に選ばれることは大変名誉なことであり、こぞってみなそのご寵愛を受けようと争ったという。
わたしはその神子じゃないんです。
わたしはわたしです。
「何がご不満なのですか?私では嫌なのですか?」
そう言って彼は悲しい顔で私を見て説得し続けた。だが、わたしはそれに応じることはなかった。
これでいい。これで元の世界に帰れる……なんてそんな希望を抱いて……そう思って目を瞑った。
ようやくわたしが選んで決めた唯一のこと……
頭痛やめまいや吐き気が頻繁に起こるようになった。体もなんだか重く、だるさが抜けない。あんなものを見てしまったから気持ちの問題かなと思っていたが、ある日とうとう倒れてしまった。
倒れる間際見えた自分の手は透けていた。
医師が呼ばれて診察を受けたところ原因はわからないらしい。
そんななか症状が進行しているのか、いないのか。頭痛やめまい、吐き気は治った。しかし次第に時間が飛ぶようになった。どうやら意識障害が出ているようだった。
次に目覚めた時にはギルフォード殿下がそばにいた。
とても心配そうにしている顔がこちらをのぞき込んでいた。申し訳ないと思っていたが、次に聞かされた話のせいで全て吹っ飛んでしまった。
なぜなら……
このままではわたし、いや神子は消えてしまうという。
神子の体にこちらの生体エネルギーを取り込まなければいけないらしい。そうしないと神子はこの世界から消えてしまうらしい。
しかし、その生体エネルギーの摂取方法が問題だった。
それはつまり、男女の交わりだった。
男女の交わりにより、神子の体にの生体エネルギーを取り込み、体内に巡らせなくてはいけないという。
当然わたしは拒否した。そんな、セッ……いや交わりによって存在を確定するなんてどうしても理解出来ないし、こちらの世界の人のために、この世界に留まらなきゃいけない理由もなく、受け入れられなかった。
存在をこちらの物にする。それはまるで神話のヨモツヘグイのようだと思った。
これらの話から考えるに別に私は病気ではないのだと思う。多分消えるというのは元の世界に戻るのだと思う。
調べた訳じゃないのになぜかわたしにはわかっていた。
わたしとしては正直、このまま消えてもいいと思った。そもそもわたしはあの時、死んでいたはずだったのだから。
訳のわからない世界に来て何もさせてもらえない。
この世界で大切にされている、しようとしてくれているというのはわかるけど。違うのだ。ずっと。
この世界に未練なんてない、強いていうならよくしてもらったのに申し訳ないという罪悪感みたいなものだ。
もう楽になりたかった。過剰に敬われるのも押し付けられるのも、悪口を言われるのも嫌だった。
しかし、ギルフォード殿下は違った。
「私を受け入れて下さい。そうしなければ、神子様は消えてしまうのです」
「いや、嫌です、わたしの嫌がることはしなくていいって言っていたじゃないですか」
「どうして?消えてしまうかもしれないのですよ?お嫌なのですか?文献にはかつての神子様は交わりを好まれるとあり、常に見目麗しい男性を側におき、ご寵愛を授けていたとされています。神子様も好まれるのでは?それに私達は番です。交わることによってより幸福を得ることが出来ます」
神子様に選ばれることは大変名誉なことであり、こぞってみなそのご寵愛を受けようと争ったという。
わたしはその神子じゃないんです。
わたしはわたしです。
「何がご不満なのですか?私では嫌なのですか?」
そう言って彼は悲しい顔で私を見て説得し続けた。だが、わたしはそれに応じることはなかった。
これでいい。これで元の世界に帰れる……なんてそんな希望を抱いて……そう思って目を瞑った。
ようやくわたしが選んで決めた唯一のこと……
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