つがいなんて冗談じゃない

ちか

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なぜ?

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 それからのわたしはギルフォード殿下のお見送りをした後用意された小説を読み、庭園でお茶をしたりして過ごすのが日課になった。
 ギルフォード殿下とも何回か一緒にお茶をするようになった。その度にキスをされたり、腰に手を回されたりされた。
 その度にわたしは緊張して硬くなってしまった。

 なかなかスキンシップには慣れそうになかった。


 そんなふうに日々を過ごしていたある日サンルームで読書をして部屋に戻る途中たくさんのシーツを抱えたメイドを見かけた。すると、ぽろっシーツが落ちた。わたしは急いで拾い、手伝いますと申し出た。すると

「神子様おやめ下さい。そのようなことさせられません」

 と必死に断られた。えっでもと思っていたら「ミオ様、この者が何かなさいましたか?大変申し訳ありません」とメイド長が飛んできた。

「いえ、大変そうだったので手伝おうかと……」

 そう言うと

「とんでもございません。そのようなことはさせられません」

 とメイド長にまで頭を下げられてしまった。二人を困らせていることがわかりわたしは「すみませんでした」と足早に立ち去った。

 次の日、ギルフォード殿下とのお茶会があった。そこで昨日のことが話題に上がった。

「ミオ様、昨日メイドからミオ様が来て手伝わせてほしいと言われたと。洗濯に何かご不満でも?」


「いえ、すみません。お世話になっているのに何もしないのは悪いと思って大変そうだったんでつい何かお手伝い出来ないかと思ったんです。逆に迷惑かけてしまいごめんなさい」

「いえ、迷惑と言うほどではないのです。ですが、ミオ様がなさる必要はありません。働くなどミオ様はしなくて大丈夫です。あぁ、それと入浴の際、自分一人でなさりたいと言われるとお聞きしました。何かご不快な思いをさせたようで申し訳ありません。今までのものは解雇しましたのでご安心下さい。これから新しいもの担当いたします。今度こそご満足いただけると思います」

「……はぁ?」

 えっ解雇?わたしが恥ずかしがって一人で入りたがったから?えっ?なんで?

「えっ?解雇したんですか?なんで?わたしは別に……」

「いいえ、私の番で神子様のミオ様がご満足いただけない使用人など不要です。これからは何かありましたらすぐにおっしゃって下さい。いつでも対応いたします」

 そう言って彼はわたしの手を握り「我が屋敷でお辛い思いをさせてすみません」とキスをした。

 そして「安心して下さい。何ものからも私がお守りします」と私を抱きしめた。

 確かにお風呂と着替えの時間は未だ慣れず、むしろ苦痛だった。
 どうしても他人に裸を見せ、さらに好き勝手触れられるのが嫌だった。

 でもだからって辞めさせるなんて思わなかった。すぐ取り消してもらおうと思ったがもう屋敷を出ていると言われてどうしようもなかった。

 もうお風呂と着替えはたとえ恥ずかしくても我慢しよう、必要以上に騒いではいけないと思った。慣れればいいことなのだから。きっといつか、わたしも何とも思わない日が来るはずだ。だってみんな平気なんだから。



 彼女たちには本当に申し訳ないことをした。
 
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