【完結】6代目総長

ジロ シマダ

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狂気が動き出す

急速展開

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 「調べられたがどうすればいい」
 「指定するところに送付してくれ」
 「不用心じゃないか」
 「そんな重要なものを送付する馬鹿もいないだろう」

 黒木は電話越しの源田げんだの言葉に頷く。確かに源田げんだの考え方にも一理あると、了承し本部に行く前によることにした。木下達がいれば大丈夫だろうと考えて。まさか本部の目の前で尊が撃たれるなど誰も予期していない。

 赤く染まる六本木本部前は騒然としていた。連絡をもらい黒木が駆けつけた時には変色した血のみが残っていた。



 「なぜ! 離れた! 死んでいたかもしれないんだぞ」
黒木は久留原くるはらをはじめとする幹部に責め立てられる。

 「まってください、叔父貴。俺もこのような状況で離れたのが悪い」
 隠岐おきの頭を下げる姿に皆が驚き、還田かんだも並んで頭を下げた。尊の過去、山戸の聞かれてはどうすればいいかわからず、詫びを入れることもできなかった。しかし、黒木がばかリが責められていいいはずがない。
 隠岐おきの言葉に久留原くるはらは眉間に深く皺を刻む。

 「このような状況とはどういうことだ、隠岐おき
 「総長が危険だとわかっていたということですか! 頭」

隠岐おきの頭に大きな声が降り注ぐ。

 「頭は悪くないんです! 俺が悪いんです!」
黒木のかばう声が大きく会議室にこだまする。

 「黒木、総長には俺が説明する。皆に話そう」

 


 「あの脳カスが・・・・・・尊ちゃんをやってどうするんだ」
 副総監室で山戸が爪をぎりぎりと咬んでいた。受けた連絡に苛立ちが隠せない。
 事は山戸の計画とは違う方向に流れた。山戸は大切な尊を自分以外の人間が傷つけたことが許せない。尊が生きていることは幸いだ。山戸は爪を噛み続け、ひたすらこれからの計画を練り直す。

 「邪魔なものは消さなければ」
山戸にとって苦しみ歪む尊の顔が宝。いとも簡単に尊の支えとなる隠岐おき、黒木、還田かんだたちは邪魔でしかない。使えるものはなんでも使わなければと思考範囲を広げる。なまじ頭が良すぎるのも考えものだ。
 源田げんだも慌てた。自分の動きがばれて尊が殺されかけたのではないかと不安でならない。それは疲れている源田げんだの顔を青から白にするには十分。源田げんだを伺う捜査員たちはこの事件は暴力団の抗争に発展するのだろうと気を引き締めた。

 「部長は大丈夫でしょうか」
 「わかるわけないだろう」
 「俺、聞いてみます」
 「おい! 堂園!」
堂園は長谷川の制止を聞かず源田げんだの前に立った。机に肘をつき顔を俯かせていた源田げんだの顔がゆっくりと上がる。

 「部長・・・・・・何かあったのでしょうか」
 「何のことだ」
 「顔色もお悪いですし、疲れてらっしゃいます。俺になにかできることはありますか」
 源田げんだは目を見開いた。その瞳がわずかに水の膜を張る。それをごまかすために源田げんだは再度、下を向く。

 「堂園! 申し訳ありません、部長」
長谷川は失礼なことを言いそうで怖いと早々に堂園を引き下げようとした。そこに待ったがかかった。長谷川は源田げんだをみた。そこには助けを求める目があった。いよいよただ事ではないと長谷川は喉を鳴らした。




 「許せないだろ! 山戸を殺すべきだ」
 「そうだ!」

話を聞いた幹部たちは口々に殺すべきだという声を上げる。

 「黙れ!」

 隠岐おきの怒鳴り声が騒がしい会議室に衝撃を与える。隠岐おきの声は空気を震わせた。隠岐おきの握りこんだ手から血が流れ落ちカーペットに吸い込まれる。肩で息をする隠岐おきは顔を上げ居並ぶ幹部を見渡す。

 「俺だって殺したい。だが総長はそんなことを望んでいない」
 「しかし!」
 「俺たちに! 俺たちになにかあれば総長は悲しむ」
言葉尻が小さく消えるように隠岐おきの声は空間に溶けた。

 「・・・・・・今は総長を撃ったやつを探しましょう」
湖出こではわずかに震える隠岐おきの握りこんだ手を持ち上げ、ハンカチで押さえてそう言った。隠岐おき湖出こでの行動に驚き、そして笑った。その笑いは何とも悲しく情けなさを含んだものだ。

 「そうだな」
 
「総長が悲しむならしかたねぇか。だが! 総長をやったやつを許すことはできない」
「当たり前だ、じん

 隠岐おきはわいわいとどう動くか話し出す幹部に隠岐おきはにやりと笑うとハンチング帽を深くかぶった。隠岐おきも尊をやったやつを許すことはできない。例え、尊が止めてもこればかりはやらなければならない。尊が自分たちの守護するものならば、自分たちも尊を守護するものでなくてはならない。

 「黒木と還田かんだは総長についてろ」
 「「へい!」」
 
  
 源田げんだは堂園、長谷川を自室に自室に招きいれた。恐る恐る部屋に入ったもの源田げんだは何も言葉にせず5分は経過していた。

 「・・・・・・お前たちの判断に任せる」
 重々しい声でそういうと堂園と長谷川を巻き込む。話を聞くうちに堂園達の顔は青くなり、信じられないといった表情がありありと浮かぶ。しかし、山戸よりも信を置くのは源田げんだだ。

 「では副総監は神林総長をその・・・・・・」
 「色恋の話かは分からないだが異常だと思った・・・・・・あの声は異常だ。狂人きょうじんだ」
源田げんだはあの時にきいた山戸の声を思い出す。関係のない源田げんだが聞いても鳥肌が立つようなあの声は狂人きょうじんでしかない。

 「これはお前たちの身に大きな影響を与えることだ。このまま聞かなかったことにしてもいい・・・・・・または副総監に伝えても構わない」
 源田げんだの台詞に長谷川が机をたたきつけた。長谷川は源田げんだの最後の言葉に怒りがわく。この部長はそういう情けないことは言わないと思っていた。自分たちの身を案じてのことだということはわかる。それでもその言葉を聞きたくなかった。

 「俺は警察官です」
 立ち上がり宣言するかのように言い放つ長谷川を堂園は少し上を見上げ、口を堅く噛み締めた。いつかの尊の言葉が堂園の脳内に聞こえた。

 「あなたは警察官でしょう」
堂園は背筋を伸ばし眉をきつく上げるとしっかり源田げんだをみた。

 「俺も警察官です」

 「ありがとう」
 源田げんだは長谷川と堂園に頭を下げた。堂園達は慌てて、堂園がバランスを崩し、少し賑やかな空間に変化する。源田げんだは久しぶりに柔らかな表情を浮かべることができた。

 「俺たちに指示を」
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