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おまけ

33:ランジェリー①

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「セリアスが服装で態度を変える? そんな薄っぺらいヤツではないはずですけど」
「いや、ダメな意味じゃなくて良い意味で。いつもよりすごかった」
「まぁ、恥ずかしかったですけど……あれほど昂ってくれるなら、着た甲斐があります」
「……へぇ」

 定期的に行われている交流会にて、タスク殿とホープ殿が面妖な情報を教えてくれた。
 セリアスは服に興奮するのか? 着る物によって印象が変わるのはわかるが、そこまで情緒が乱れるとは思えない。
 ヘルクラス殿も首を傾げている。

「へへ、デジィさん最近やらかしてるからご機嫌取ったら?」
「うっ……ぅうーむ」

 高層の建物が増えて、急旋回や細やかな速度調整が必須となった現在。
 我は上手くそれに対応出来ず、壁にめり込んでいる。そういう場所は極力避けているがどうしても全ては避けられない。

「業務上どうしてもスピードが落とせずに突っ込んでしまうんです」
「デジィさんは警官隊ですからね。悪さをする者達に飛行能力があったら、高層地でも飛び回らないといけなくなります。まぁ、毎度壁からお尻だけ出てるのは冗談みたいに面白いですけど」
「面目無い」

 人間が絶え、豊かになっても規則を破り、悪に手を染める者達が出てくる。
 それを捕らえるのが我々の業務だ。
 けれど、自由に飛び回れないのが欠点だ。

「魔王様が怒る事はありませんが、機嫌は少し斜めになってますよ。心配されてましたし」
「うーん……仕方ない……機嫌取ります」

 そう言った瞬間、タスク殿がハイと我に包みを手渡してきた。

「魔王様は“ムッツリ”なのでこういうのもお好きなはずです」
「ありがとうございます……」

 交流会の解散の後、賑やかな市場へ赴く。
 魔人や獣人、ドワーフ、鬼、龍人、魚人族に至るまで、様々な種族が闊歩している。個人的な見回りを兼ねてぐるっと一周しようかと歩いていると声をかけられた。
 
「デジィ様、この前はありがとうございます。これよろしければ」
「ああ、お気になさらず。我の役目ですので」
「いえいえ。魔族同士の喧嘩のとばっちりで壊された屋台の修繕を手伝っていただいたお礼です。どうぞ、お受け取りください」
「デジィさーん! こっちも受け取ってください!」
「これも食べなー」

 見回りのつもりが両手いっぱいにお礼の品を抱え込む羽目になった。
 有難いが、毎度毎度貰っていてはキリがない。ちゃんと断りたいが善意は拒否し辛い。迷惑ではないから余計に。
 警官隊の寮施設に寄って、皆が寛ぐ休憩所に赴く。

「あれ? デジィ、今日と明日は非番だろ?」
「どうしたんですか? 寂しくなっちゃいました?」
「違う。市場でお礼の品を貰ったから皆で分けようと持ってきたんだ」

 机の上に置かれる品々に休憩中の皆がわらわらと寄ってきた。

「デジィは自警団の頃からココの顔なだけあるな。俺達じゃここまで貰えない」
「くく、よく建物に刺さってるから印象に残ってるんだろう」
「喧しい! 巡回から戻った者達にも残しておけよ」
「「はいはーい」」
「“はい”は一回」
「「はーい」」

 我は一息付いてから家に戻る為に帰路についた。
 手ぶらで。







「あれ? この紙袋だけ、なんか違うな」
「どれどれ、中身は…………は?」
「…………ガーターストッキング」
「ちょ、ちょちょ! 誰かデジィ追いかけて! まずいまずいまずい! 勝負下着だぞこれ!」
「くっそ! セリアスさん変態かよ!」

 大慌てで追いかけてきた。お礼の品に紛れてしまっていた手荷物の存在を思い出した。
 届けてくれた礼を言うと、ガシッと肩を掴まれた。

「嫌なら嫌ってちゃんとセリアスさんに言えよ?」
「????」

 神妙な顔で心配されてしまったが、よく意味がわかっていない我がその言葉を理解するのは、自室で袋の中身を確認した時だった。



 タスク殿……どういう意図でこんな破廉恥な物を……しかもサイズピッタリ。

「……こうで合ってるのか?」

 ガーターベルトとストッキング、これらはそう呼ばれ、所謂ランジェリーに分類されるセクシー下着だ。普通、女性の魅力を上げる装飾性の高い物だが……我のような者に履かせても面白いだけではないか?
 Tバックだし。

「(我を笑者にしたいのか? 機嫌を損ねているのは、セリアスだけではなかったという事か?)」

 タスク殿の考えがわからずどんどんマイナス思考へ落ち込んでしまう。
 見苦しい下着を脱ごうかと手をかけたところで、我の部屋をノックする者がいた。

『コンコンコン』
「!!?」
「デジィ、入るぞ」

 なんで我の時だけ伺いも無く入ってくるんだ!!

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