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14:心と衣の入れ替え時※
しおりを挟む「ぅ……ストールさん、どうですか?」
《経験者とは思えない程、引き締まってますね。コレは解すのに骨が折れます》
「…………ほぐす?」
水浴び場で、身を清めて事前準備を行なっていたら、経験者であるはずのホープは前戯というものを知らなかった。
「無理に挿れるとめちゃくちゃ痛いし流血沙汰になるから、指で解すんだ」
「へぇーー……そうなんだ」
「おま、まさか……毎度そのまま?」
「薬打たれて、力入らない時に……こう、後ろから誰かきた」
《筋肉に作用する弛緩剤ですかね。脱力している間は無抵抗で好き放題。人間のやりそうな手口です。同族の誰かにやらせたんでしょう》
頭が痛くなったタスクがチャプンと水面に顔をつける。
「タスクさん?」
「…………」
『パシャ』
濡れた前髪を掻き上げながら、真剣な表情でホープを見つめる。
「ちゃんと快楽を教えてやる」
「ぇ、あ、うん」
娘が生きていたならば、ホープと同じ年頃だろう。タスクは、子どもを相手にするような手付きで、ホープの頭を撫でた。
今から子どもには決してしない手解きをするというのに、タスクの中に親心が溢れてきた。
『クチュ』
「ここ……シコリがあるの、わかるか?」
「んっ、んっ……」
埋め込んだ自分の指を誘導されて、前立腺を見つける。
タスクが前の面倒を見ながら、慎重に広げてやれば、少しずつ柔らかくなってきた。
「ゃっ……はぅ……」
「大丈夫か?」
「……お腹の中、きゅーってなる。絞るみたいに、捻れてる、感じ」
「そうか、息吸って。吐いて……もう一回」
「はーぁ……はぁ……」
落ち着かせて、快感への意識を鮮明にさせる。
「(デカい……)」
ホープの性器は体格にあった立派なもので、膨張したソレは小柄なタスクの両手には収まりきらない。
「タスクさっ、ぁ、んっ…………僕ね、内臓押し込まれるような感覚、気持ち悪かったから嫌なんだけど……なんか今は変な感じ」
「嫌じゃないか?」
「うん……しくしく、する」
指を動かすと内も収縮し悦んで反応しているのがわかる。
《ココまで順応が早いのは才能ですよホープさん》
「ほん、と? へへ……嬉しい、です」
《そのシクシクする感覚をもっと高めてください。反応するところを指で触って》
「んん……はぃ」
『クチュクチュ』
後孔に根元まで指を挿し込んで前立腺を刺激する。
タスクが先走りを塗り込むように扱く前の快感も相まって、腰がカクカクと揺れてイイトコロに当たるよう擦り付ける。
「上手上手」
「へ、ぁ……出る、出ちゃう」
「気にせずイっていい」
「ぁ、ああ、もっ! だめ!」
『ビュク!』
『プシャ!』
「え!?」
ピシャっと顔にかかる白い液体にタスクが目を白黒させる。精液は手で受け止めたのに、何故顔に?
フッと上を見ると、両胸を押さえたホープが射精の余韻にビクビクと身体を震わせながら、母乳を噴き出していた。
「ああッ、んぁ」
『ぴゅ!』
指の隙間からピュクピュクと飛び出る母乳が褐色の肌を伝い、水の中へ落ちていく。
「……乳……だ」
頬を伝う乳白色の液体を舐めとるタスク。
「と、まんな、い……いっぱい出るっ」
《勿体無いので瓶に移しましょう!》
せっせと瓶を持ってきたストールから受け取り、溢れ出る母乳を溜める。
四つ瓶が満杯になった。
「二リットルの瓶が……」
「はーーっ……はーーっ……!」
「ホープ、疲れたな。今日はここまでにしような」
「ぅん、明日も……頑張る」
「良い子だ」
皮肉にも、人間達の読みは正しかった。
ホープは、性的な刺激を受けると母乳が出やすくなるようだ。
快感による絶頂が深ければ深い程、母乳が溢れ出て来る。
「これからも……いっぱい出ちゃうかも。セリアス様の寝床汚しちゃう」
「魔王様はきっと気にしないでしょうし、最中は気にする余裕も無くなる」
「そう、かな?」
「ああ……」
※※※
セリアスは悩んでいた。
ストールに言われた計画実行についての人数と手段に頭を捻っている。
「……文化の違いなどと言ってられないが……どうしても、浮気のようで」
《誠実過ぎるのも考えものですね。ホープさんにも誠実になられれば良いだけです。タスクさんも了承しておりますし、浮気ではありません。多重の番です》
「タスクやホープの他にも必要なのだろう?」
《負担と時間がかかり過ぎるので》
「……この子らの自切部位をどう人界に紛れ込ませるかも……今のところ思いつかん」
一歩一歩、確実に進んでいる。終着地は見えていても一歩先の景色は霧に包まれ、道のりが見えない。
少し大きくなった子ども達を腕に抱え上げながら、悩んでばかり。
「ラージャの言っていた魔族狩りの件も夜狼が確認を取って来た。襲われている魔族達を守る為に黒光龍人の一派が矢面に立ってくれている」
《……魔王様と対立していた穏健派達ではないですか》
魔王と仰がれるセリアスであっても、全魔族から支持を受けていたわけではない。
人類滅亡という物騒な野望に意義を唱えていた者もいる。
セリアスは、それらを跳ね除けて切り捨てたりなどはしなかった。当時の穏健派の代表であった黒い鱗と角を持つ黒光龍人のデジィと話し合いを何度も行った。
殺し以外の手段で人間達と交渉の術は無いのかと問いかけられていた。セリアスは自分に良い顔をしていた人間に何度も何度も裏切られた経験から、交渉が成立しようがきっと搾取され続けると断言した。それをきっかけに水掛論となり、話し合いは言い合いへ発展して、和解の対談はいつも決裂した。
「正直言って、彼らとは気が合わない。だが、彼らは別に人間を守ろうとしていたわけではない。人間達と友好関係にある魔族達の為に私へ直談判を繰り返した。目的は同じく魔族達の平穏だったが、お互いの考え方と手段が噛み合う事はなかったな」
《今はどうでしょうね。人間達の魔族狩りという部分を見ても、こちらへ和平交渉を唱えられるでしょうか》
「…………どうだろうな」
キツい顔をした黒い龍人を思い出す。デジィは、魔王であるセリアスを前にしても対等な立場で口喧嘩をしてくれた唯一“友”と呼べる存在である。
「無事である事を祈る」
『タッタッタッタッ!』
「セリアス様ー! 見てくださいコレ」
「!」
部屋に走り込んで来たホープは、ボロ布ではなくちゃんとした衣服を着用していた。
尻尾も考慮されたオーバーオールをホープは大層気に入った様子でセリアスに見せに来た。
「どうしたんだその服」
「エルフ達が編んで作ってくれたんです。魔王様の服も出来てるみたいなんで行きましょ!」
グイグイと手を引かれて、エルフ達の階層まで連れてこられたセリアスを皆が出迎える。
「魔王様、お待ちしておりました」
「鬼とドワーフとエルフの傑作ですぜ」
「綺麗に染まったと思います」
「……コレは」
まともな衣服を纏い、身なりの整ったヘルクラスがセリアスへ藍色の服と装飾品を差し出した。
「記憶にある魔王様の衣装を皆で再現してみました。時間がかかってしまいましたが、良い出来だと思います」
「……ああ、素晴らしい。懐かしくも、新しい」
王族の正装を彷彿とさせる藍色の服と彩る金装飾の金具は、神々しい見た目に仕上がっている。
「ありがとう。大切に着させてもらう」
『キィン』
そう言ってセリアスは衣装に防御魔法を付与した。
見た目豪華なだけの代物が、セリアスによってマグマに浸かっても傷一つつかない国宝級の防具と化した。
人間ならば、いや、並の魔族であっても世代を紡いで付与を重ねなければ到達出来ない次元の防御力を一瞬で施したセリアスに、皆は目を輝かせながらも、若干呆れている。
「凄すぎて……なんか、もう、驚かなくなってきた」
「魔王様だからなー」
「カッチコチだ」
セリアスはゆっくりと服に袖を通し、金具を留めれば、ボロ布を纏っていたとは思えない絢爛な雰囲気と端正な顔立ちを際立たせる。
「どうだ?」
「…………」
「ヘルクラス?」
「あ! ぉ、お似合いです!」
美男美女揃いで美貌に耐性のあるエルフがうっかり見惚れてしまう程に、外見の魅力度が跳ね上がった。
セリアスは不意に、この場に居ないタスクを首を振って探した。
「タスクは何処だ?」
「ああ……彼方です。拵えた服をお召しになられたんですが、恥ずかしいらしくて小屋から出て来ないんです」
「そうか。タスクの服も見たいが、恥ずかしがっているところに無理矢理行っては嫌われそうだ。ソッとしておいてやろう」
「セリアス様、僕はどう? 可愛い?」
「ふふ、可愛い可愛い」
ぎゅうぎゅうしがみついてくるホープの頭を撫でながら、セリアスは胸の中のモヤモヤが晴れていく感覚を覚えた。
「(皆のように、訪れる平穏を待つのではなく、自分達で作り上げていかなければな。先の事は、誰にもわからん。考えていても仕方ない……今出来る事を精一杯やるだけだ)」
出来る事をするだけ。簡単だが、難しい。
「ホープ」
「はい」
「今夜、準備しておいてくれ」
「…………ぇ」
「お前に向き合えそうだ」
唐突な宣告に、ホープは笑顔のまま固まった。
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