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おまけ②

おまけ②・嵐の前のうたた寝

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 モモの監修を突破し、完成した香水は娼館へ卸された。
 配給希望者に配られた香水の効果は目に見えて個人の報酬に現れた。
 純一郎の香りは自身を魅力的見せ、相手の性欲を掻き立てる。レプリカであろうとも、それは他には無い催淫力を持ち得た。
 二の足を踏んでいた男娼が次々と指名されるようになり、チップまで貰えるようになった。
 娼館での使用者が増え、一般販売も徐々に軌道に乗り始め、店は益々好景気となった。
 当然、各娼館が対抗意識を燃やすのは言うまでもなく、同じ香水を仕入れるようになった。
 香水を生み出した調香師であるカスミの名も広がり、他の依頼も舞い込むようになったりと良い方向へと状況が回っていっていた。

「……ジュンの香りが街の至る所でする」
「はは、カムフラも菓子売りで混乱してたって聞いた。慣れたみたいだけど、モモはまだ慣れない?」

 昼食を作っている最中の純一郎を背後から抱き締めながら作業を眺めるモモが愚痴を吐く。

「慣れない……慣れるわけないだろ。お前の香りに」
「んっ……はぁ、んッ……モモ…………長……ん、ゃッ」

 舌に舌が絡み付く。クチュクチュと水音が台所に響き、吐息が重なり合う。

「……ぷは……もぅ、料理中だぞ」
「もう終わっただろ」
「盛り付けるまでが料理だ」
「……そういうものか」
「そういうものだよ」

 食卓に料理を運び、カムフラのブラッシングをしている三つ子を呼ぶ。

「みんな、ご飯だぞ」
「パパぁ見て見て! こんなに取れたー!」
「おお、すごい。もっこもこ」

 カムフラの抜け毛でマリモを作る三人を抱き上げて、手洗いうがいの後に椅子に座らせる。

「カムフラも、はい」
『バウ!』

 用意されたカムフラ用のご飯を美味しそうに食べ始める。頭を撫でてから、自分の席についた。

「いただきます」
「いただきまーす!」

 いつもの食事風景だ。けれど、もうすぐこの風景に変化が訪れるだろう。

「モモパパ、からだへん?」
「おねつ?」
「大丈夫。寝れば治る」
「……ジュンパパ」
「みんな優しいね。モモパパの具合はパパが良くするから、心配しなくていいよ」

 モモの産卵期が来ていた。今年はいよいよ三回目の子作りに取り掛かる。
 
「(今回も無事、生まれますように)」

 下腹部を撫でながら、まだ見ぬ我が子への祈りを捧げる。
 久しぶりの子作りを控え、純一郎は何処か浮ついた様子で家事をこなしていた。

「(水槽新調したし、綿と木箱も準備した。俺のレベルが上がってモモがイきやすくなったから前より短時間でセックスは終わるかもしれないな)」
「ただいまー。あっモモパパが寝込んでる」
「モモパパ、大丈夫? もしかして、そういう時期?」
「そうだ。季節の変わり目のそういうヤツだ」

 双子が帰ってきてリビングのソファで横になっているモモを心配しながら揺する。
 
「ジュンパパが治してくれるって言ってた」
「言ってた」
「だからすぐ良くなるって」

 兄と姉の真似をして駆け寄ってきた三つ子に揺さぶられるモモ。

『ガックンガックン』
「モモパパをユサユサしない。モモパパの変わりにご飯の用意手伝って」
「「はーい」」

 素直な子ども達は配膳を行う。
 起き上がったモモの手を引くアサヒ。
 準備が終わったら皆で席について食事を始める。
 双子の学校であった話しを聞き、三つ子がカムフラのブラッシングの話しを興奮気味に語る。
 食後は食器を片付けて、双子の宿題をモモが見ている間に三つ子のお風呂。
 
「パパにはどうしてピンクないの?」
「ん? ああ、模様かな?」

 ヒヨリの指摘にヒナタとアサヒも気付き、純一郎の身体を凝視する。

「みんなのそのピンクはモモパパから貰ったものだよ。パパは持ってない」
「なんで? モモパパ、ジュンパパ大好きなのに、あげないの?」
「あっははは、別のもの貰ってるから大丈夫だよ」
「何貰ったの?」

 泡だらけの三つ子の頬を一人一人摘んで、微笑む純一郎。キョトンと純一郎を見つめる三つ子。

「嬉しい事、いっぱいいっぱい。今日も貰ったよ」
「嬉しい事?」
「なんだろ」
「なんだろね」

 疑問の尽きないお年頃。何故何故も今後増えていくだろうが、しっかり応えてあげられるように今後も鑑定に頼る事になるだろう。
 お風呂が終われば、モモと双子の入浴になる。
 ドタバタと素っ裸で走り回る三つ子を追いかけてタオルで包んで各々拭き上げる。
 パジャマを着せて、風魔法で髪を乾かす。
 今日も外を走って遊び回っていたおかげか、歯を磨き終わる頃にはうとうとと船を漕いでいた。
 
「ぱぁぱ」
「うん。寝るまでそばに居るよ」

 子ども達の寝室で三つ子を寝かし付ける為に共に横になる。
 
「あしたね、かむふらとね、うみでね、かいがらさふぁすの」
「ぼくも……すな、ほる」
「…………」

 明日の予定を純一郎に伝えながら眠りに落ちていく様を眺めていた。

「……ふぁぁ……」

 そして、うっかり純一郎もその場で眠ってしまった。
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