催淫魔法士の日常

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14:英才教育⑤

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『ドッビュルルル! ビュク、ビュルル!』
「んぐ! いっぱぃ、あああ! 溢れちゃ、やあああ!」

 腹の中を満たすように注がれる大量の熱い粘液に目を回しそうになる。

「ぉ、あ……すごぃ、はぁあ……あ」
『ビュルル!』
「ん! ぁ゙、なかだしすご、ぃ……」

 ノトスへ身を寄せていた触手達も、ノトスの口にビュクっと精を飛ばした。
 それを受け止めるように口を開けて舌を突き出す。

『ビュク』
『ビュルルン』
「はぁ……ん」

 ノトスは口に広がる粘液をゆっくり味わいながら、甘い吐息を漏らす。
 人間のものより青臭さが無い為、簡単に飲み込める。

『ピュクピュク』
『ビュル』
「ぅ、んん……みんな、結構出たな」

 顔射を行った触手達を綺麗にするようにちろちろと短い舌でご奉仕掃除をする。
 前髪にも散った精液がポタポタと頬に垂れるが、もう気にならない程に性液濡れになったノトスは余韻に浸りながら腹部を撫でた。

「俺が、女だったら……孕んでたな……こんな濃いの、いっぱい、出されて」
『グポポポ……』
「あ……あっ、ぁあっ」

 触手が引き抜かれる刺激にノトスは身悶える。粒が最後にプチュプチュと内部を撫で上げながら出て行った。
 ぽっかりと空いた後孔から、ドプンと白濁液が流れ出てくる。

『ゴポ……トロ……トププ……』
「あ、ああ……勿体無い」

 ノトスはこぽこぽと溢れてくる粘液の感覚に背筋を震わせる。その快感は癖になりそうで怖いくらいだ。

「はぁ……はは、すごいじゃん。こんな高性能な遅延性の媚薬……聞いた事ない」

 両手足を投げ出して大の字になったノトスを覗き込む触手達。
 毎年やっている触手達との性行為。今回が断トツの濃度なのは間違いない。

「……うーん……けど、あんまり連発しない方がいい。俺の同業者に乱獲されるかもしれないから」
『……ピーン』

 催淫魔法士の数は極めて少ないが、媚薬生成が出来る弱い淫獣や淫魔を使って媚薬の商品化をしている業者は多い。
 自分で全部調整出来るノトスと違い、そういった業者が商品にバリエーションを出すには、淫獣や淫魔に頼るほか無い為、珍しい媚薬成分を持つ淫獣や淫魔は金の成る木。狩り尽くされてしまう。

「(……でもいいなぁ。俺もこんな遅延性媚薬作ってみたい)」
《ノトスさん、お身体を》
「ああ……うん」

 サラがタオルでノトスの身体を清める。
 ボーッとしていると衣服まで着付けられ、ボサボサの髪も整えられ、行為前よりも身綺麗にされた。

「……ありがとう、サラ」
《いえ。床も掃除しておきますので、今はゆっくりお身体を休めてください》
「悪い……」

 重複した媚薬の後遺症で、いつもより重い倦怠感に見舞われているようだ。
 ノトスに寄り添う触手達に上手く動かせない手足の代わりに唇を押し当てる。

「もう、教えることは無い。仲間を守れるだけの技術は身についただろう」
『プルプル』
「これから、君達は悪意や殺意を快楽で跳ね返す防波堤になる。隣で仲間が切り殺されても、絡み付かないといけない」

 生存戦略に快楽を組み込んだ淫獣。
 自然界は、どんな時でも死と隣り合わせであり、彼らにとって人間も死の一部である。
 こちらを殺しにくる相手を生きたまま快楽で陥落させるという困難な手法を取らなければ生き残れない立場にいる。
 ノトスは、そんな自然界に不自然な形で食い込んでいる自分の存在に毎度眉を顰めるが……自然である向こうから助けを求めてきたのだから、救済処置を取るのは自然な事だ。そう自分を納得させる。

「(ここにいる子ども達の内、大人になれるのはほんの一握り……)」

 疲労でガクガク震える両腕で触手達を撫でながらぎゅうぎゅう抱き締める。

「死ぬんじゃないぞ」

 その言葉に含まれる感情を理解したように触手達がノトスの身体を優しく締め付けた。
 


 仮眠を取った後、人目のつかない深夜帯……サラと触手達は棲家へ帰る時が来た。
 授業料として、換金出来る鉱石をどっさり貰ったが、金銭に余裕のあるノトスにとって対価はどうでもよかった。

「……呆気ないな」
《湿っぽいのはお嫌いでしょう?》
「まぁな」

 濃密な二ヶ月最後の一夜が終わりを告げる。

「また会う日まで、エロトラップダンジョンの健闘を祈る」
《今日まで、ありがとうございました。また生きてお会いしましょう》

 サラと握手を交わすノトス。その手に絡み付く幾本もの触手達。イヤイヤと別れを惜しむ姿に、ノトスはついつい笑ってしまった。

「ぷ、はは……可愛い。全く、可愛いな……本当に」
『フルフル』

 ぎゅっと縋り付いて離れない触手達に、鼻の奥がツンと切なくなる。
 二度と会えないかもしれない。
 そんな思いが頭をよぎり、これ以上接していたら手を振り解けなくなると感じたノトスはサラと触手達から一歩距離を取った。

「……グス…………サラ、行ってくれ。ちょっとやばい」
《はい。では……いつでも遊びに来てくださいね。さようなら》
「ああ……またな」

 ノトスの触手教育という大仕事は無事、終わりを告げたのだった。
 数日、触手ロスでナイーブになったのは言うまでもない。
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