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全てが予定通りには進まない。全てが予想通りには進まない。愚かな人間が救いを求めても、救いを求めた相手が愚かでは救いはやって来ない。『善人が善意を持って善行を成したとしても、その結果が良いものになるとは限らない。』これも真理が行き着く終着点である。そして、『悪人が悪意を持って悪行を成しても、その結果が悪いものになるとは限らない。』これも真理である。物事には善し悪しはない。我々は決めようとする。選ぼうとする。選択肢を用意して正解と間違いに分けようとする。どちらとも正解ならば、より優れた正解を求めようとする。善悪を行動基準、判断基準にするべきではない。だからこそ、同意なき監禁生活が始まってしまったのだ。
警察署の牢獄にしばらくすると3人の人間がやって来た。私に2、3質問すると精神科病棟に措置入院する事が決まった。ようするにタダで病院の中で治療してもらう事が出来るというものだった。話を聞くだけならば良い話だった。だが、実際は全く違うものだった。白い壁の部屋に連れて行かれる事になった。消毒液の臭いが常にしていた。畳三畳ほどの広さの部屋にトイレだけが置かれていた。私はこの部屋で3週間も閉じ込められる事になった。最初は抵抗した。唯一の出入り口である鉄の扉を殴った、蹴った、何度も何度も壊そうとしたが、人間の力では無理だった。そういう物だった。
お世辞にも食事が美味しいと思える事は一度もなかった。家畜用の餌と言われたら納得出来るだろう。いっその事、冷たい方がまだマシだろうと思った。生温い食事は異様に不味く、不快な料理を食べる事を拒否すると、点滴が打たれる事になった。料理か、点滴か、2つに1つを選べる権利があった。実に良心的な治療が続いた。白い部屋には楽しみはない。苦痛もなければ、やる事もなかった。一日中、ただ、ただ起きているだけであった。すぐに寝る事が出来なくなる。1日に14時間以上寝る事はとても難しいだろう。それに精神治療薬も飲まされていた。私が助けを求めたのだ。この苦難を乗り越えれば、私は救われるかもしれない。私の中に新しく希望が生まれたのは事実だった。これは修業だと思えば少しは我慢が出来た。いや、正確には我慢をする必要はなかった。
精神治療薬を飲む事で感情の変化は極端になくなった。意識が朦朧とした状態で起きているといった感じだった。性欲も低下させるようだった。それでも食欲というものは残っていた。やる気は何も起きない。何かをしたいと思わなくなった。これでは鬱病と同じである。白い部屋を出るとやっと他の入院患者と接触する事が出来るようになった。大勢の人間がこの病棟に隔離されていた。それが何階もあるらしい。私は入院患者の中では若く、年老いた老人の中には自分が閉じめれられている事も分からずに一日中病棟の通路を回り続けていた。楽しみがあるとしたら、男女が同じ病棟である事ぐらいだが、性欲はほぼ皆無である。何も反応しなくなっていた。
26ぐらいの金髪の女性が椅子に座っていた。化粧もしていないのに美しいと思った。病的に肌が白く、儚げな目をしていた。刃物を渡せば自分の首を切ってしまうかもしれない。これ程に弱々しく不安定な女性を見た事がなかった。守りたいと思える存在もいれば殺したいと思う存在もいた。入院している男のほとんどがロクでもない存在だった。殺した方が明らかに世の中から不安材料が消えてくれるはずだ。あの男達が外を彷徨くだけで迷惑をかけるのは、1日でも観察すれば誰でも分かる事だと確信するだろう。それは私も含めてそうだと思うからだ。私はこの病院の精神科医に統合失調症と診断された。幻聴、妄想、幻覚という症状らしい。確かに声は聞こえる。姿は見えないが存在を感じる事が出来る。薬を飲む事で声も気配も消えたが、私の不安やイライラは消えてはくれなかった。
たったの5分だった。診察は毎日ではなかった。たまに主治医から呼び出されて5分程度話すだけで診察は終わる。あとは放置される。テレビは病棟に2台だけで、ほとんど患者のボス的な存在が牛耳っていた。その病棟の中で一番我儘で面倒臭い奴という事だろう。食堂に置いてあるパイプ椅子で殴り殺すのは簡単に出来るぐらいに弱そうだった。とにかく口が悪く、風呂の時間には他人のシャワーの水がかかっただけで喚き散らしていた。一番ムカつくのは職員さえも、そいつの味方をしている事だった。どうやら、大人しい奴には我慢させて、暴れるような奴には出来るだけ味方するらしい。自分の負担を減らす為の賢い策だとは思うが、そこに正義はなかった。
2ヶ月の措置入院は終了したという書類が渡された。これで自由という訳ではなかった。家族が私を入院させる事を決めたようだった。私はまだまだ自由にはなれないという事だった。この生活が永遠に終わらないかと思うと狂いそうになってしまう。不安とイライラは日増しに強くなった。1日の終わりに睡眠薬を飲まされて無理矢理眠らされる。そして、朝起きると涎を垂らしてベッドのシーツを濡らしていた。私の脳味噌を薬を使って殺しているのかと思うぐらい、この病院には不信感しかなかった。早く出なければ一生をベッドの上で涎を垂らすだけの人間にされそうだった。
意味のない治療に付き合うつもりはなかった。奴らは理解出来る事しか理解しようとはしない、そんな感じの人間だろうか?だからこそ私が話を合わせるしかなかった。他の人格を消しても意味があるとは思わなかった。主治医が私の中に凶悪な別人格が潜んでいると勘違いしているようなら、それは間違いでしかない。多重人格とは2人以上の色々な人格が存在する事を意味するが、全員が戦闘狂では意味がないはずだ。私を含めて戦闘方法が少し違うだけでしかなかった。
私はとても狡賢く奇襲攻撃を好む性格だった。剣や拳を使った正々堂々といった力比べには全く興味がなかった。何故、怪我をするリスクがあるのに真っ向勝負をしようとするのか、私には他の人格の考えが理解出来なかった。バレないように殺す、無傷で殺す事が美学である。精神科病棟密室殺人事件など簡単に解決されてしまいます。やるだけ損でしかありません。治療が無意味だと分かったのなら、やる事は1つです。まずは外に出るしかありません。外に出なければ何も出来ません。そして、自由になるのに2ヶ月もかかりました。4ヶ月の隔離治療で学んだ事は、1ヶ月の入院費用が10万円を超えるという事と、私の治療が不可能だという事です。
久し振りの自由は最高でした。それでも精神治療薬を服用し続けました。退院は許されたものの、月2回、診察を受ける事が条件でした。私の思い通りに上手く行き過ぎでした。簡単に退院させる理由がありました。薬の副作用です。少し走るだけで食べた物を吐いてしまうようになりました。時には缶コーヒーを飲んだだけで吐くようになりました。食後、歯を磨くだけでもです。これによって運動能力を極端に低下させられました。それ以外にも睡眠薬を飲まないと寝れなくなりました。薬を飲まないと不快な副作用が身体を苦しめます。訴えたら勝てそうな気がするぐらいです。本当に世の中、私を不快にさせる事が多いです。不幸や憎悪もある一定のラインを超えると笑うしかなくなるようです。私はとても楽しくなりました。そして、今度こそ皆殺しにする事を決めました。だってここまでされたのです。信用したのです。そして、何度も裏切られたのです。いい加減にウンザリです。他人に期待した私が一番の馬鹿ですが、これからは私のやり方です。正しくても、間違ってもいい、私が決める番がやって来ました。
警察署の牢獄にしばらくすると3人の人間がやって来た。私に2、3質問すると精神科病棟に措置入院する事が決まった。ようするにタダで病院の中で治療してもらう事が出来るというものだった。話を聞くだけならば良い話だった。だが、実際は全く違うものだった。白い壁の部屋に連れて行かれる事になった。消毒液の臭いが常にしていた。畳三畳ほどの広さの部屋にトイレだけが置かれていた。私はこの部屋で3週間も閉じ込められる事になった。最初は抵抗した。唯一の出入り口である鉄の扉を殴った、蹴った、何度も何度も壊そうとしたが、人間の力では無理だった。そういう物だった。
お世辞にも食事が美味しいと思える事は一度もなかった。家畜用の餌と言われたら納得出来るだろう。いっその事、冷たい方がまだマシだろうと思った。生温い食事は異様に不味く、不快な料理を食べる事を拒否すると、点滴が打たれる事になった。料理か、点滴か、2つに1つを選べる権利があった。実に良心的な治療が続いた。白い部屋には楽しみはない。苦痛もなければ、やる事もなかった。一日中、ただ、ただ起きているだけであった。すぐに寝る事が出来なくなる。1日に14時間以上寝る事はとても難しいだろう。それに精神治療薬も飲まされていた。私が助けを求めたのだ。この苦難を乗り越えれば、私は救われるかもしれない。私の中に新しく希望が生まれたのは事実だった。これは修業だと思えば少しは我慢が出来た。いや、正確には我慢をする必要はなかった。
精神治療薬を飲む事で感情の変化は極端になくなった。意識が朦朧とした状態で起きているといった感じだった。性欲も低下させるようだった。それでも食欲というものは残っていた。やる気は何も起きない。何かをしたいと思わなくなった。これでは鬱病と同じである。白い部屋を出るとやっと他の入院患者と接触する事が出来るようになった。大勢の人間がこの病棟に隔離されていた。それが何階もあるらしい。私は入院患者の中では若く、年老いた老人の中には自分が閉じめれられている事も分からずに一日中病棟の通路を回り続けていた。楽しみがあるとしたら、男女が同じ病棟である事ぐらいだが、性欲はほぼ皆無である。何も反応しなくなっていた。
26ぐらいの金髪の女性が椅子に座っていた。化粧もしていないのに美しいと思った。病的に肌が白く、儚げな目をしていた。刃物を渡せば自分の首を切ってしまうかもしれない。これ程に弱々しく不安定な女性を見た事がなかった。守りたいと思える存在もいれば殺したいと思う存在もいた。入院している男のほとんどがロクでもない存在だった。殺した方が明らかに世の中から不安材料が消えてくれるはずだ。あの男達が外を彷徨くだけで迷惑をかけるのは、1日でも観察すれば誰でも分かる事だと確信するだろう。それは私も含めてそうだと思うからだ。私はこの病院の精神科医に統合失調症と診断された。幻聴、妄想、幻覚という症状らしい。確かに声は聞こえる。姿は見えないが存在を感じる事が出来る。薬を飲む事で声も気配も消えたが、私の不安やイライラは消えてはくれなかった。
たったの5分だった。診察は毎日ではなかった。たまに主治医から呼び出されて5分程度話すだけで診察は終わる。あとは放置される。テレビは病棟に2台だけで、ほとんど患者のボス的な存在が牛耳っていた。その病棟の中で一番我儘で面倒臭い奴という事だろう。食堂に置いてあるパイプ椅子で殴り殺すのは簡単に出来るぐらいに弱そうだった。とにかく口が悪く、風呂の時間には他人のシャワーの水がかかっただけで喚き散らしていた。一番ムカつくのは職員さえも、そいつの味方をしている事だった。どうやら、大人しい奴には我慢させて、暴れるような奴には出来るだけ味方するらしい。自分の負担を減らす為の賢い策だとは思うが、そこに正義はなかった。
2ヶ月の措置入院は終了したという書類が渡された。これで自由という訳ではなかった。家族が私を入院させる事を決めたようだった。私はまだまだ自由にはなれないという事だった。この生活が永遠に終わらないかと思うと狂いそうになってしまう。不安とイライラは日増しに強くなった。1日の終わりに睡眠薬を飲まされて無理矢理眠らされる。そして、朝起きると涎を垂らしてベッドのシーツを濡らしていた。私の脳味噌を薬を使って殺しているのかと思うぐらい、この病院には不信感しかなかった。早く出なければ一生をベッドの上で涎を垂らすだけの人間にされそうだった。
意味のない治療に付き合うつもりはなかった。奴らは理解出来る事しか理解しようとはしない、そんな感じの人間だろうか?だからこそ私が話を合わせるしかなかった。他の人格を消しても意味があるとは思わなかった。主治医が私の中に凶悪な別人格が潜んでいると勘違いしているようなら、それは間違いでしかない。多重人格とは2人以上の色々な人格が存在する事を意味するが、全員が戦闘狂では意味がないはずだ。私を含めて戦闘方法が少し違うだけでしかなかった。
私はとても狡賢く奇襲攻撃を好む性格だった。剣や拳を使った正々堂々といった力比べには全く興味がなかった。何故、怪我をするリスクがあるのに真っ向勝負をしようとするのか、私には他の人格の考えが理解出来なかった。バレないように殺す、無傷で殺す事が美学である。精神科病棟密室殺人事件など簡単に解決されてしまいます。やるだけ損でしかありません。治療が無意味だと分かったのなら、やる事は1つです。まずは外に出るしかありません。外に出なければ何も出来ません。そして、自由になるのに2ヶ月もかかりました。4ヶ月の隔離治療で学んだ事は、1ヶ月の入院費用が10万円を超えるという事と、私の治療が不可能だという事です。
久し振りの自由は最高でした。それでも精神治療薬を服用し続けました。退院は許されたものの、月2回、診察を受ける事が条件でした。私の思い通りに上手く行き過ぎでした。簡単に退院させる理由がありました。薬の副作用です。少し走るだけで食べた物を吐いてしまうようになりました。時には缶コーヒーを飲んだだけで吐くようになりました。食後、歯を磨くだけでもです。これによって運動能力を極端に低下させられました。それ以外にも睡眠薬を飲まないと寝れなくなりました。薬を飲まないと不快な副作用が身体を苦しめます。訴えたら勝てそうな気がするぐらいです。本当に世の中、私を不快にさせる事が多いです。不幸や憎悪もある一定のラインを超えると笑うしかなくなるようです。私はとても楽しくなりました。そして、今度こそ皆殺しにする事を決めました。だってここまでされたのです。信用したのです。そして、何度も裏切られたのです。いい加減にウンザリです。他人に期待した私が一番の馬鹿ですが、これからは私のやり方です。正しくても、間違ってもいい、私が決める番がやって来ました。
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