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生十七話 白紙冒険者
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拷問されずに無事に冒険者ギルドから外に出られた。
もちろん監視役が付いているので、逃げた場合は即自警団送りで拷問される。
(あーあ、何で予定通りに行かないんだろう……)
本物の冒険者カード出した所為で予定が狂ってしまった。
死んでもいい凶悪斧男に守らせる予定が、良い坊主と猿顔が付いてきた。
他の三十人近くいた冒険者達は暇じゃないらしく、ギルドでゴロゴロするそうだ。
それにしても、あれと結婚する女がいるなんて驚きだ。まだ野生の熊の方が可愛い。
「お、俺達二人だけなんて、む、無理だって! や、やめた方がいいって!」
「何ビビってんだよ。嘘の可能性もあるんだ。そん時はこの偽造野朗を自警団に売り渡して、コイツの金で飲みに行けばいいんだよ。人数少ない方が沢山飲めるから、ツイてるぜ!」
「全然ツイてねぇって‼︎」
ビクビク怯える猿顔なんか気にせずに、坊主は元気に進んでいく。
対照的な二人だけど、戦力になるのは坊主だけだ。
猿顔は私が前回秒殺した。超雑魚野朗は戦力外だ。
人間に進化してから出直して来いだ。
「おい、そういえば何で俺達二人の名前をカードに書いたんだ? もしかして、俺のファンか? いくら美形でも男に興味はないぜ」
心の中で猿を超絶ディスっていると坊主が訊いてきた。
「私も、いや、俺も興味ない。だけど、未来であんたが良い人間だってのは知ってる。困っている少女を見捨てずに助けようとしてた。そっちの猿顔と一緒にね」
「へぇー、流石は俺だな」
褒めてあげたけど、いくら良い人でも坊主の大男に興味はない。
男は顔、スタイル、金、最後に性格だ。性格は直せても、顔は一生直らない。
「おい、誰が猿顔だ。俺はチャンプだ。白紙冒険者のくせして、銅級冒険者の先輩様を馬鹿にするとはいい度胸だ。俺の拳で礼儀を教えてやろうか」
「はい、すみませんしたぁー」
坊主と話していたのに、直せない猿顔がイキリ顔で私の前に立ち塞がると、拳を鳴らして威嚇してきた。
部活で上下関係は厳しく教えられているので、先輩猿冒険者様にしっかり平謝りした。
「ムキィー! テメェー、絶対に俺のこと馬鹿にしてんだろ!」
「いえ、まったく」
「ガッハハハ! おもしれい奴だ! 気に入った! 金払ってくれたら見逃してやってもいいぜ!」
「はい、その時はよろしくお願いします」
謝ったのに何故かまだ猿が怒っている。
今度は顔の前で手をヒラヒラ振ってきちんと平否定した。
坊主は笑っているけど、猿顔はやっぱりまだ怒っている。
とりあえず猿は気にせず、横を通り抜けよう。
「さてと、白紙冒険者。一つ訊きたい事がある」
「はい、何ですか?」
何か変な呼び名が定着している。
とりあえず坊主に呼ばれたので返事した。
「これから行く場所で戦う前提で聞くが、お前の事を戦力に含めていいのか? 足手纏いになるなら、邪魔にならないようにチャンプの後ろに引っ込んでろよ」
「あー、お構いなく。これでも結構強いです。そこの猿も前回秒殺しましたよ」
「何が秒殺だ! テメェーを秒殺すんぞ!」
「おい、チャンプ、落ち着けって。冗談に決まってんだろ」
「フゥーッ、フゥーッ!」
何だか猿いじりが楽しくなってきた。顔を真っ赤にして怒っている。
だけど、ゴールの建物が見えてきた。これから先は遊びは一切通用しない。命と命を賭けた死闘になる。
興奮する猿を放置して、決戦の舞台を指差し説明を始めた。
「あの建物です。一階の左側の家が助けたい人の家で、その右隣の家がヤバイ薬でその人を魔女にして売ろうとしている、魔女狩りのおばさんの家です」
「なるほどな。で、どうすればいいんだ? おばさん倒すなら一人っきりのところを狙った方がいいぜ。人質取られたら厄介だ」
「そうですね……」
坊主に訊かれて、作戦を考えてみた。
このまま張り込んで、バンダナが外に出た瞬間に路地裏に連れ去って、三人でボコるのが手っ取り早いと思う。
頭のバンダナから棍棒を取り出せないように、バンダナを奪い取れば更に安全にボコれる。
「外に出た瞬間にボコって倒しましょう。抵抗されると厄介です」
「……それは出来ねえな」
「えっ、何でですか?」
連れ去る時間も与えない、まさに完璧なリンチ作戦が却下された。
納得できないので理由を坊主に訊いた。
「テメェーの話を全部信じてねえからだよ。普通の一般人襲ったら、犯罪者の仲間入りだ。証拠だ証拠。魔女が現れるまで待機すんぞ」
「ええー!」
信じられない! やっぱり斧男を連れて来るのが正解だった!
あの人なら扉蹴破って、バンダナパーマを掴んで家から引き摺り出して、地面に倒して顔殴りまくっている。
絶対確実に殺ってくれると信じられる。
(はぁぁ……仕方ない。こうなったら私が行くしかない)
非常事態なのに、良い坊主は使えない。こんな時なんだから多少の悪事は許される。
ペトラに頼まれたってラナさんの家に入って、特製回復ドリンク飲ませて魔女にしよう。
証拠が欲しいなら、これ以上の証拠はない。
もちろん監視役が付いているので、逃げた場合は即自警団送りで拷問される。
(あーあ、何で予定通りに行かないんだろう……)
本物の冒険者カード出した所為で予定が狂ってしまった。
死んでもいい凶悪斧男に守らせる予定が、良い坊主と猿顔が付いてきた。
他の三十人近くいた冒険者達は暇じゃないらしく、ギルドでゴロゴロするそうだ。
それにしても、あれと結婚する女がいるなんて驚きだ。まだ野生の熊の方が可愛い。
「お、俺達二人だけなんて、む、無理だって! や、やめた方がいいって!」
「何ビビってんだよ。嘘の可能性もあるんだ。そん時はこの偽造野朗を自警団に売り渡して、コイツの金で飲みに行けばいいんだよ。人数少ない方が沢山飲めるから、ツイてるぜ!」
「全然ツイてねぇって‼︎」
ビクビク怯える猿顔なんか気にせずに、坊主は元気に進んでいく。
対照的な二人だけど、戦力になるのは坊主だけだ。
猿顔は私が前回秒殺した。超雑魚野朗は戦力外だ。
人間に進化してから出直して来いだ。
「おい、そういえば何で俺達二人の名前をカードに書いたんだ? もしかして、俺のファンか? いくら美形でも男に興味はないぜ」
心の中で猿を超絶ディスっていると坊主が訊いてきた。
「私も、いや、俺も興味ない。だけど、未来であんたが良い人間だってのは知ってる。困っている少女を見捨てずに助けようとしてた。そっちの猿顔と一緒にね」
「へぇー、流石は俺だな」
褒めてあげたけど、いくら良い人でも坊主の大男に興味はない。
男は顔、スタイル、金、最後に性格だ。性格は直せても、顔は一生直らない。
「おい、誰が猿顔だ。俺はチャンプだ。白紙冒険者のくせして、銅級冒険者の先輩様を馬鹿にするとはいい度胸だ。俺の拳で礼儀を教えてやろうか」
「はい、すみませんしたぁー」
坊主と話していたのに、直せない猿顔がイキリ顔で私の前に立ち塞がると、拳を鳴らして威嚇してきた。
部活で上下関係は厳しく教えられているので、先輩猿冒険者様にしっかり平謝りした。
「ムキィー! テメェー、絶対に俺のこと馬鹿にしてんだろ!」
「いえ、まったく」
「ガッハハハ! おもしれい奴だ! 気に入った! 金払ってくれたら見逃してやってもいいぜ!」
「はい、その時はよろしくお願いします」
謝ったのに何故かまだ猿が怒っている。
今度は顔の前で手をヒラヒラ振ってきちんと平否定した。
坊主は笑っているけど、猿顔はやっぱりまだ怒っている。
とりあえず猿は気にせず、横を通り抜けよう。
「さてと、白紙冒険者。一つ訊きたい事がある」
「はい、何ですか?」
何か変な呼び名が定着している。
とりあえず坊主に呼ばれたので返事した。
「これから行く場所で戦う前提で聞くが、お前の事を戦力に含めていいのか? 足手纏いになるなら、邪魔にならないようにチャンプの後ろに引っ込んでろよ」
「あー、お構いなく。これでも結構強いです。そこの猿も前回秒殺しましたよ」
「何が秒殺だ! テメェーを秒殺すんぞ!」
「おい、チャンプ、落ち着けって。冗談に決まってんだろ」
「フゥーッ、フゥーッ!」
何だか猿いじりが楽しくなってきた。顔を真っ赤にして怒っている。
だけど、ゴールの建物が見えてきた。これから先は遊びは一切通用しない。命と命を賭けた死闘になる。
興奮する猿を放置して、決戦の舞台を指差し説明を始めた。
「あの建物です。一階の左側の家が助けたい人の家で、その右隣の家がヤバイ薬でその人を魔女にして売ろうとしている、魔女狩りのおばさんの家です」
「なるほどな。で、どうすればいいんだ? おばさん倒すなら一人っきりのところを狙った方がいいぜ。人質取られたら厄介だ」
「そうですね……」
坊主に訊かれて、作戦を考えてみた。
このまま張り込んで、バンダナが外に出た瞬間に路地裏に連れ去って、三人でボコるのが手っ取り早いと思う。
頭のバンダナから棍棒を取り出せないように、バンダナを奪い取れば更に安全にボコれる。
「外に出た瞬間にボコって倒しましょう。抵抗されると厄介です」
「……それは出来ねえな」
「えっ、何でですか?」
連れ去る時間も与えない、まさに完璧なリンチ作戦が却下された。
納得できないので理由を坊主に訊いた。
「テメェーの話を全部信じてねえからだよ。普通の一般人襲ったら、犯罪者の仲間入りだ。証拠だ証拠。魔女が現れるまで待機すんぞ」
「ええー!」
信じられない! やっぱり斧男を連れて来るのが正解だった!
あの人なら扉蹴破って、バンダナパーマを掴んで家から引き摺り出して、地面に倒して顔殴りまくっている。
絶対確実に殺ってくれると信じられる。
(はぁぁ……仕方ない。こうなったら私が行くしかない)
非常事態なのに、良い坊主は使えない。こんな時なんだから多少の悪事は許される。
ペトラに頼まれたってラナさんの家に入って、特製回復ドリンク飲ませて魔女にしよう。
証拠が欲しいなら、これ以上の証拠はない。
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