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生十四話 ……テメェー、一体何者だ?
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(えっ? グラサンしてないのに何で?)
多分、怒っている理由はそれじゃないと思う。でも、他に心当たりがない。
もしかして、レンタル店のTカード出したとか? うん、これも違う。
間違いなくカウンターの上に白い厚紙で作られた冒険者カードが置かれている。
「黙りか。知らねえようだから教えてやる。冒険者カードは町によって、種類が違うんだ。つまり、この冒険者カードはこの町で作られたもんだ。そして、俺はお前を知らねえ。見た事もねえ。これが意味する事は分かるよな?」
「…………」
これはちょっとヤバイかもしれない。
間違いなく極悪爺に貰ったカードなのに、極悪爺が『記憶にございません』と脅してきた。
これがこの組のやり方みたいだ。
「おいおい、やっちまったなあ! 冒険者カードの偽造は身分証の偽造と同罪なんだぜ。つまりはこれだ。ハァッ!」
(あっ、良い大男さんだ)
私のピンチに坊主がテーブルから立ち上がった。親切にニタニタ笑顔で説明を始めてくれた。
右手で首を掻っ切るような仕草をしたから、冒険者カードの偽造は死刑だ。
絶対に無理だと思うけど、無かった事にしたい。
「おい、余計な口開いてんじゃねえ。テメェーから殺すぞ」
「ヘーイ、すいやせんした。……ヘヘッ、怒られちまった♪」
全然反省してない。極悪爺に脅されて、坊主がピシィと姿勢を正して頭を下げた。
だけど、椅子に座った途端に近くの男達に向かって、自分の頭をコツンと優しく右拳で叩いて笑っている。
可愛いけど、それ絶対に今やったら駄目なやつだ。
「ガッハハハ! テメェーが褒められているところなんて一度も見た事ねえぞ」
「あれ? そうだっけ? お前らも忘れてんじゃねえのか? ほら、俺が昨日銀貨二枚貸しただろ。返してくれよ」
「借りてねえよ。そもそもテメェーが人に貸せる金なんて持ってねえだろ!」
「……あっ、本当だぁ~♪」
「ガッハハハ! 一石貨も無いってヤバイだろ!」
だから、絶対に今やったら駄目なやつだって!
極悪爺を気にせずに、いや、むしろ爺を皆んなでいじくり回して楽しんでいる。
坊主がポケットから財布を出して、逆さまにして中身を確認して驚くと、また馬鹿笑いしている。
このままだと皆殺し案件発生だ。バンダナ倒す前に極悪爺を倒さないといけなくなる。
「まったく馬鹿共が……おい、冒険者カードを貰ったのはいつだ?」
「はい? え、えっと、ああー……」
皆殺しにせずに坊主と他の冒険者に悪態をつくと、極悪爺がいきなり訊いてきた。
正直に『今日です』と答えたら、私が一番に殺されてしまう。
本当の事なのに本当の事が言えないって、凄く面倒だ。
「これも答えられねえか。まあいい。これはお前に聞く必要ねえからな。こっちに聞けば分かる事だ」
「?」
トントンと人差し指で、カウンターの冒険者カードを叩いて極悪爺が言ってきた。
もしかすると魔法のカードで、何をしたのかという履歴が残っているかもしれない。
それなら私の言った事が本当だと証明できる。
「この『ルカ』っていう文字は俺の字にそっくりだが、この程度なら誰だって真似できる。肝心なのは目に見えない部分だ。俺が登録した冒険者のカードには、採用した日と理由を必ず書いている。どんな奴か忘れねえようにする為にな。さて、こいつには何が書かれているんだ」
……うわぁー、予想的中なのに嫌な予感しかない。だって今日の日付が書かれているの確定だもん。
無実は証明できても、同じ日に別の事が起きた怪奇現象を証明しないといけなくなる。
そんなの不可能だ。
「へぇー、そんなんやってたのかよ。じゃあ次、俺の番な」
「ずっちいぞ。マスター、次は俺にしてくれよ!」
私の命がかかっているのに、面白半分で私の後ろに冒険者二人がカードを持って並んだ。
同じ白厚紙仲間の仮冒険者仲間だけど、この二人は馬鹿だから絶対にロクな事が書かれてない。
「遊びじゃねえんだ! 引っ込んでろ、馬鹿野朗共が!」
「な、何だよ、ケチジジイ!」
ほら、やっぱり馬鹿野朗だった。——って、こんな予想が当たっても意味がない。
極悪爺が何か青黒い光を放つランプを持ってきた。警察の鑑識が使うやつだ。
私の無実の証拠が浮かび上がってしまう。
『○月△日 病気の母親の為に少女が妖精の薬草探しの依頼に来る。断るとグリードとチャンプが少女に言い寄り、それをルカが止める。』
「……何だこりゃー? おい、グリード、チャンプ‼︎ こっち来い‼︎」
「はい、すぐに‼︎」
「何だよ、ジジイ。口は閉じてたぞ」
浮かび上がった紫色の文章を見ると、極悪爺が二人の名前を叫んだ。
すると猿顔が急いで、坊主が嫌々やって来た。
「おい、今日、この野朗にここ以外で会ったか?」
「はあ? 何言ってんだよ。知らねえよ」
「俺も全然知らねえです!」
私を指差す極悪爺に訊かれて、二人とも知らないと答えた。
坊主とは三回、猿顔とは二回も会ったのに酷い人達だ。
「だろうな。……テメェー、一体何者だ?」
多分、怒っている理由はそれじゃないと思う。でも、他に心当たりがない。
もしかして、レンタル店のTカード出したとか? うん、これも違う。
間違いなくカウンターの上に白い厚紙で作られた冒険者カードが置かれている。
「黙りか。知らねえようだから教えてやる。冒険者カードは町によって、種類が違うんだ。つまり、この冒険者カードはこの町で作られたもんだ。そして、俺はお前を知らねえ。見た事もねえ。これが意味する事は分かるよな?」
「…………」
これはちょっとヤバイかもしれない。
間違いなく極悪爺に貰ったカードなのに、極悪爺が『記憶にございません』と脅してきた。
これがこの組のやり方みたいだ。
「おいおい、やっちまったなあ! 冒険者カードの偽造は身分証の偽造と同罪なんだぜ。つまりはこれだ。ハァッ!」
(あっ、良い大男さんだ)
私のピンチに坊主がテーブルから立ち上がった。親切にニタニタ笑顔で説明を始めてくれた。
右手で首を掻っ切るような仕草をしたから、冒険者カードの偽造は死刑だ。
絶対に無理だと思うけど、無かった事にしたい。
「おい、余計な口開いてんじゃねえ。テメェーから殺すぞ」
「ヘーイ、すいやせんした。……ヘヘッ、怒られちまった♪」
全然反省してない。極悪爺に脅されて、坊主がピシィと姿勢を正して頭を下げた。
だけど、椅子に座った途端に近くの男達に向かって、自分の頭をコツンと優しく右拳で叩いて笑っている。
可愛いけど、それ絶対に今やったら駄目なやつだ。
「ガッハハハ! テメェーが褒められているところなんて一度も見た事ねえぞ」
「あれ? そうだっけ? お前らも忘れてんじゃねえのか? ほら、俺が昨日銀貨二枚貸しただろ。返してくれよ」
「借りてねえよ。そもそもテメェーが人に貸せる金なんて持ってねえだろ!」
「……あっ、本当だぁ~♪」
「ガッハハハ! 一石貨も無いってヤバイだろ!」
だから、絶対に今やったら駄目なやつだって!
極悪爺を気にせずに、いや、むしろ爺を皆んなでいじくり回して楽しんでいる。
坊主がポケットから財布を出して、逆さまにして中身を確認して驚くと、また馬鹿笑いしている。
このままだと皆殺し案件発生だ。バンダナ倒す前に極悪爺を倒さないといけなくなる。
「まったく馬鹿共が……おい、冒険者カードを貰ったのはいつだ?」
「はい? え、えっと、ああー……」
皆殺しにせずに坊主と他の冒険者に悪態をつくと、極悪爺がいきなり訊いてきた。
正直に『今日です』と答えたら、私が一番に殺されてしまう。
本当の事なのに本当の事が言えないって、凄く面倒だ。
「これも答えられねえか。まあいい。これはお前に聞く必要ねえからな。こっちに聞けば分かる事だ」
「?」
トントンと人差し指で、カウンターの冒険者カードを叩いて極悪爺が言ってきた。
もしかすると魔法のカードで、何をしたのかという履歴が残っているかもしれない。
それなら私の言った事が本当だと証明できる。
「この『ルカ』っていう文字は俺の字にそっくりだが、この程度なら誰だって真似できる。肝心なのは目に見えない部分だ。俺が登録した冒険者のカードには、採用した日と理由を必ず書いている。どんな奴か忘れねえようにする為にな。さて、こいつには何が書かれているんだ」
……うわぁー、予想的中なのに嫌な予感しかない。だって今日の日付が書かれているの確定だもん。
無実は証明できても、同じ日に別の事が起きた怪奇現象を証明しないといけなくなる。
そんなの不可能だ。
「へぇー、そんなんやってたのかよ。じゃあ次、俺の番な」
「ずっちいぞ。マスター、次は俺にしてくれよ!」
私の命がかかっているのに、面白半分で私の後ろに冒険者二人がカードを持って並んだ。
同じ白厚紙仲間の仮冒険者仲間だけど、この二人は馬鹿だから絶対にロクな事が書かれてない。
「遊びじゃねえんだ! 引っ込んでろ、馬鹿野朗共が!」
「な、何だよ、ケチジジイ!」
ほら、やっぱり馬鹿野朗だった。——って、こんな予想が当たっても意味がない。
極悪爺が何か青黒い光を放つランプを持ってきた。警察の鑑識が使うやつだ。
私の無実の証拠が浮かび上がってしまう。
『○月△日 病気の母親の為に少女が妖精の薬草探しの依頼に来る。断るとグリードとチャンプが少女に言い寄り、それをルカが止める。』
「……何だこりゃー? おい、グリード、チャンプ‼︎ こっち来い‼︎」
「はい、すぐに‼︎」
「何だよ、ジジイ。口は閉じてたぞ」
浮かび上がった紫色の文章を見ると、極悪爺が二人の名前を叫んだ。
すると猿顔が急いで、坊主が嫌々やって来た。
「おい、今日、この野朗にここ以外で会ったか?」
「はあ? 何言ってんだよ。知らねえよ」
「俺も全然知らねえです!」
私を指差す極悪爺に訊かれて、二人とも知らないと答えた。
坊主とは三回、猿顔とは二回も会ったのに酷い人達だ。
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