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生四話 三種の神材料集め
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持ち物を全部冷蔵庫にブチ込むと歩くのを再開した。
この森を抜けるのは、今度で五回目だ。流石にこの森で一日迷って、ラナさんを死なせる事はない。
『あっ、この辺通ったかも』と思いながら、簡単に森を抜け出せた。
「ふぅー、次は街と」
今回は薬草集めはしなかったから、かなり早く森を抜け出せた。
体力節約も出来て、万全の状態で戦える。街に着いたら、休憩時間も少しは取れる。
そうと決まったら、さっさと街に行ってやる。
早く着いたからって観光なんかして体力は減らさないぞ。
もう失敗は許されないんだ。
♢
「ふぅー、到着ぅ~」
ここまでは予定通り順調だ。
顔見知りの槍持ち門番の前を通り過ぎ、トンネルみたいなアーチ門を抜けて街に入った。
(うーん、まずは材料集めかな?)
ジョイに断られる可能性もあるので、断られない買い物からだ。
近場の野菜屋のおばちゃん、マロウ酒、薬屋の順に回るとしよう。
「コレ、三つください」
「はいよ。『クラウン』、三つで銅貨五枚でいいよ」
銅貨五枚なら約五百円ぐらいかな?
財布から鉄貨一枚を取り出して、おばさんに手渡した。
「毎度あり。はい、お釣りね」
「ありがとうございます。これって『アマレテ』ですよね? 何でこんな名前なんですか?」
おばちゃんから銅貨五枚を受け取ると、時間があるので楕円形のニンジンサツマイモを指差し聞いてみた。
薬草や『クラウン』というリンゴもそうだけど、この世界の名前の由来がちょっと気になった。
「ハッハ! そんなの作った人の名前に決まってるだろ。あとは発見した人の名前だね。野菜は品種改良が多いから、名前を覚えるのも大変だよ。毎年十個は必ず新しいのが増えちまう。野菜屋は特に大変だよ。こんな事なら肉屋をやるべきだったね」
「へぇー、そうなんですねぇー」
私も受験と試験で英単語を覚えるのに苦労した。
おばちゃんに頼んで野菜屋で働かせてもらうのはやめよう。
ラナさんを助けた後は森で薬草でも集めながら、たまに熊肉を肉屋で売って静かに暮らそうかな。
おばちゃんとの世間話を済ませると、ドリンクバーのお兄さんからマロウ酒を購入した。
一杯ぐらい飲む余裕はあるけど、これは人間を駄目にする飲み物だ。
包丁小を取り出して冷蔵庫にすると、木のコップをそのまま入れた。
これでキンキンに冷えたままのマロウ酒を使える。
「ちょっ、ちょっとお兄さん⁉︎ コップは返してもらわないと困るよ!」
「えっ?」
あっ、持ち帰りは駄目みたい。お兄さんに呼び止められてしまった。
使用後に返すから許してほしいけど、多分無理そうだ。
木のコップ代(銅貨七枚)を支払って、何とか持ち帰りOKにしてもらった。
「ふぅー、危うく泥棒になるところだったよ。気をつけないと」
ラーメン屋の器と一緒で持ち帰ったら駄目みたいだ。
あれでインスタントラーメン食べると最高に美味いのに、見つかっちゃった。
今度は失敗しないようにしないと。
しっかり反省すると次の目的地に向かった。これで材料が全部揃う。
若い女の子向けの真っ白な壁にピンクの四つ葉のクローバーが描かれた店が見えてきた。
カランカランと扉の鐘を鳴らして、ペトラ行きつけの薬屋に到着した。
「すみません、薬が欲しいんですけど……」
伸びた灰色の前髪で目が見えないおじさん店長に近寄ると訊いてみた。
「あーあ、薬ですか……何が欲しいんですか?」
んっ? 何か対応が塩対応だ。案外、常連以外はこんなものなのかもしれない。
常連のペトラと一緒じゃないから、店長の声がいかにもやる気がなさそうだ。
これだと潰れるのも時間の問題だと思う。
「魔力消し薬と回復薬です。どっちも四百グラム欲しいんですけど、ありますか?」
塩対応は気にせずに訊いてみた。
前に大量購入したから、もしかすると無いかもしれない。
その場合は一見さんにも神対応の薬屋を探す事になる。
時間もまだあるし、私はそれでも全然困らない。
「えぇーありますけど、何に使うんですかぁ? 見たところ必要そうには見えませんけど……」
まったく売る気が感じられない。店長がジロジロと私の身体を見回し怪しんでいる。
確かに健康体にはどっちも必要ないけど、重病人が薬屋に買い物に行けるわけがない。
代理人が代わりに買いに来たと考えるのが、察しのいい店長だ。
「ペトラのお母さんのラナさんに使うんです。病気を治すに必要なんで急いでいるんです。でも、無いなら他の店を探すので失礼します」
察しの悪い店長の為に説明すると店を出ようとした。
すると……
「あーあ! ちょっと待ってください! ありますから!」
急に店長が態度を急変させた。
私がペトラの知り合いだと言った途端に神対応に切り替えた。
やれば出来るなら最初からやればいいのに、これだから個人経営の店は……。
とりあえず文句は言わずに我慢した。
別の店を探すのは面倒だし、神対応になるなら腕前を見せてもらう。
私の審査は厳しいけど、チャンスをやるんだから頑張ってよね。
この森を抜けるのは、今度で五回目だ。流石にこの森で一日迷って、ラナさんを死なせる事はない。
『あっ、この辺通ったかも』と思いながら、簡単に森を抜け出せた。
「ふぅー、次は街と」
今回は薬草集めはしなかったから、かなり早く森を抜け出せた。
体力節約も出来て、万全の状態で戦える。街に着いたら、休憩時間も少しは取れる。
そうと決まったら、さっさと街に行ってやる。
早く着いたからって観光なんかして体力は減らさないぞ。
もう失敗は許されないんだ。
♢
「ふぅー、到着ぅ~」
ここまでは予定通り順調だ。
顔見知りの槍持ち門番の前を通り過ぎ、トンネルみたいなアーチ門を抜けて街に入った。
(うーん、まずは材料集めかな?)
ジョイに断られる可能性もあるので、断られない買い物からだ。
近場の野菜屋のおばちゃん、マロウ酒、薬屋の順に回るとしよう。
「コレ、三つください」
「はいよ。『クラウン』、三つで銅貨五枚でいいよ」
銅貨五枚なら約五百円ぐらいかな?
財布から鉄貨一枚を取り出して、おばさんに手渡した。
「毎度あり。はい、お釣りね」
「ありがとうございます。これって『アマレテ』ですよね? 何でこんな名前なんですか?」
おばちゃんから銅貨五枚を受け取ると、時間があるので楕円形のニンジンサツマイモを指差し聞いてみた。
薬草や『クラウン』というリンゴもそうだけど、この世界の名前の由来がちょっと気になった。
「ハッハ! そんなの作った人の名前に決まってるだろ。あとは発見した人の名前だね。野菜は品種改良が多いから、名前を覚えるのも大変だよ。毎年十個は必ず新しいのが増えちまう。野菜屋は特に大変だよ。こんな事なら肉屋をやるべきだったね」
「へぇー、そうなんですねぇー」
私も受験と試験で英単語を覚えるのに苦労した。
おばちゃんに頼んで野菜屋で働かせてもらうのはやめよう。
ラナさんを助けた後は森で薬草でも集めながら、たまに熊肉を肉屋で売って静かに暮らそうかな。
おばちゃんとの世間話を済ませると、ドリンクバーのお兄さんからマロウ酒を購入した。
一杯ぐらい飲む余裕はあるけど、これは人間を駄目にする飲み物だ。
包丁小を取り出して冷蔵庫にすると、木のコップをそのまま入れた。
これでキンキンに冷えたままのマロウ酒を使える。
「ちょっ、ちょっとお兄さん⁉︎ コップは返してもらわないと困るよ!」
「えっ?」
あっ、持ち帰りは駄目みたい。お兄さんに呼び止められてしまった。
使用後に返すから許してほしいけど、多分無理そうだ。
木のコップ代(銅貨七枚)を支払って、何とか持ち帰りOKにしてもらった。
「ふぅー、危うく泥棒になるところだったよ。気をつけないと」
ラーメン屋の器と一緒で持ち帰ったら駄目みたいだ。
あれでインスタントラーメン食べると最高に美味いのに、見つかっちゃった。
今度は失敗しないようにしないと。
しっかり反省すると次の目的地に向かった。これで材料が全部揃う。
若い女の子向けの真っ白な壁にピンクの四つ葉のクローバーが描かれた店が見えてきた。
カランカランと扉の鐘を鳴らして、ペトラ行きつけの薬屋に到着した。
「すみません、薬が欲しいんですけど……」
伸びた灰色の前髪で目が見えないおじさん店長に近寄ると訊いてみた。
「あーあ、薬ですか……何が欲しいんですか?」
んっ? 何か対応が塩対応だ。案外、常連以外はこんなものなのかもしれない。
常連のペトラと一緒じゃないから、店長の声がいかにもやる気がなさそうだ。
これだと潰れるのも時間の問題だと思う。
「魔力消し薬と回復薬です。どっちも四百グラム欲しいんですけど、ありますか?」
塩対応は気にせずに訊いてみた。
前に大量購入したから、もしかすると無いかもしれない。
その場合は一見さんにも神対応の薬屋を探す事になる。
時間もまだあるし、私はそれでも全然困らない。
「えぇーありますけど、何に使うんですかぁ? 見たところ必要そうには見えませんけど……」
まったく売る気が感じられない。店長がジロジロと私の身体を見回し怪しんでいる。
確かに健康体にはどっちも必要ないけど、重病人が薬屋に買い物に行けるわけがない。
代理人が代わりに買いに来たと考えるのが、察しのいい店長だ。
「ペトラのお母さんのラナさんに使うんです。病気を治すに必要なんで急いでいるんです。でも、無いなら他の店を探すので失礼します」
察しの悪い店長の為に説明すると店を出ようとした。
すると……
「あーあ! ちょっと待ってください! ありますから!」
急に店長が態度を急変させた。
私がペトラの知り合いだと言った途端に神対応に切り替えた。
やれば出来るなら最初からやればいいのに、これだから個人経営の店は……。
とりあえず文句は言わずに我慢した。
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