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再十九話 冷凍庫の次はフライパン
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「ラナさん‼︎ ラナさん、起きて‼︎」
目の前に倒れているラナさんの身体を急いで揺すった。
大事な商品だと言っていたけど、何をされるか分からない。
二人で逃げた方がいい。
「ぅぅあぁ……」
ラナさんの口から呻き声が聞こえた。死んだと思ったのに生き返った。
ペトラが生きていたら、凄く喜んだだろう。でも、今はそんな時間はない。
「余計な真似すんじゃないよ!」
棍棒の二撃目がやって来た。狙いはやっぱり頭だ。
ラナさんに当たらないように、私だけに当たるように振り下ろしてきた。
ベッドに倒れ込んでいるこの状態で頭だけ無理に避けても身体に当たる。
だけど、無理だと分かっていてもやるしかない。
頭を守るように包丁を頭上に構えると『守って!』と強く願った。
——パァァァ!
目の前の包丁が光り出して、形を変えている途中で両手に強い衝撃がやって来た。
ガァン‼︎
「くぅっ!」
棍棒が私が両手で支える何かと激突した。支える両手にジーンと痺れが走った。
思わず瞑ってしまった目を開けると、私の手にはフライパンがあった。
(フライパン? 冷凍庫の次はフライパン?)
盾の方が絶対良いのに、包丁が変化したのはフライパンだった。
冷凍庫に変わって押し潰されるよりはいいけど。
「嘘だろ……あんたまさか……!」
「んっ?」
突然現れたフライパンに驚いたのか、バンダナが追撃せずに後ろに下がった。
私の事を信じられないといった顔で見ている。
もしかして、私を怖がっている? だとしたら今がチャンスだ。
ゆっくりベッドの上から立ち上がると、フライパンを構えた。
これなら殺す心配はない。気絶するまで殴って、この世界の警察に突き出してやる。
「ヒィヒヒヒ! なんてツイてる日だい! 金貨の方からやって来るなんて!」
「ヤァッ!」
だから、意味不明なんだよ! バンダナが狂ったように笑い出した。
その笑い顔に問答無用でフライパンの角を振り下ろした。
ガァン‼︎
「がぐぅ! 痛っっっ、痛いじゃないかい♪」
「チィッ!」
間違いなく力一杯振り下ろした。ノーガードの脳天にフライパンが直撃した。
それなのに平気そうに笑いながら、フライパンを頭に乗せたまま私を見てきた。
急いでフライパンを横に振り抜くと、顔の左側を狙って真横に振り回した。
「うあああッッ‼︎」
直撃すれば奥歯が吹き飛ぶ程のフルスイングだ。
ガァツン‼︎
「痛ぅっ! だから、痛いじゃないか♪」
「な、何で……」
それなのに左腕一本で受け止められた。
骨折は無理だとしても、打撲は確実の一撃だった。
普通の人間が平気な顔で受け止められるものじゃない。
「そんなの私が『魔女狩り』だからに決まっているだろ。魔女対策はしてんだよ。それにしても『魔女』のくせに攻撃力が低いねえー。まあ、『金属の形状変化』が出来るなら、買い手はいくらでも見つかるから安心しな。出来るだけ良いところを選んでやるよ」
(魔女? 魔女ってあの? 私が魔女……?)
フライパンが効かずに動揺する私にバンダナが得意げに話してきた。
そのお陰でやっと分かってきた。このバンダナは魔女を捕まえて売るのを仕事にしている。
とりあえず私が魔女かどうかは置いておいて、殺すつもりがなくなったらしい。
私を生け捕りにして、何処かの変態に売り飛ばすと決定したらしい。
そんなのもちろんお断りだ。
フライパンが効かないなら、包丁で攻撃するしかない。
フライパンに包丁に変わるように願った。
「ヒィぎゃああああ‼︎」
「——ッゥ‼︎」
でも、フライパンが変わる前に後ろの方、ベッドの方から耳を裂くような悲鳴が鳴り響いた。
反射的に振り向いて、正面のバンダナから目を離してしまった。
私の目に映ったのは浮かぶ炎と、その炎に纏わりつかれるラナさんだった。
「ハァァッ……」
(ヤバイ‼︎ フライパン‼︎)
口から真っ白な煙を吐き出しながら、ラナさんが私を震えるような怖い目つきで見て、左手を向けた。
背中をゾクッと嫌な予感が走り抜けると同時に、強制予定変更と横への全力回避を実行した。
ゴォオオオオ‼︎
「ぐぅああああっっ‼︎」
「熱ッ‼︎」
私が立っていた場所を左手から噴き出した炎が濁流のように通過していった。
フライパンの平たい底で顔を守る事には成功したけど、バンダナが炎の濁流に飲み込まれた。
「炎ッ⁉︎ ラナさん——っぅ‼︎」
ラナさんが私を助けてくれたのかと、一瞬だけ思ってしまったけど、それは間違いだった。
ラナさんが右手を私の方に振り回すと、右手から発生した炎の濁流が私に向かってきた。
(駄目だ! 冷凍庫ッ‼︎)
回避は間に合わない。素早く身体全体を守れる大きな物を願った。
「ぐああぁぁぁ‼︎」
だけど、間に合わなかった。
変化の途中で炎の濁流にフライパンが飲み込まれた。
炎に身体が流され、壁に激しく激突する。その間もフライパンの変化は止まらない。
なりかけの四角い冷凍庫と壁に挟まれ、身体が潰されないように踏ん張るしか出来ない。
目の前に倒れているラナさんの身体を急いで揺すった。
大事な商品だと言っていたけど、何をされるか分からない。
二人で逃げた方がいい。
「ぅぅあぁ……」
ラナさんの口から呻き声が聞こえた。死んだと思ったのに生き返った。
ペトラが生きていたら、凄く喜んだだろう。でも、今はそんな時間はない。
「余計な真似すんじゃないよ!」
棍棒の二撃目がやって来た。狙いはやっぱり頭だ。
ラナさんに当たらないように、私だけに当たるように振り下ろしてきた。
ベッドに倒れ込んでいるこの状態で頭だけ無理に避けても身体に当たる。
だけど、無理だと分かっていてもやるしかない。
頭を守るように包丁を頭上に構えると『守って!』と強く願った。
——パァァァ!
目の前の包丁が光り出して、形を変えている途中で両手に強い衝撃がやって来た。
ガァン‼︎
「くぅっ!」
棍棒が私が両手で支える何かと激突した。支える両手にジーンと痺れが走った。
思わず瞑ってしまった目を開けると、私の手にはフライパンがあった。
(フライパン? 冷凍庫の次はフライパン?)
盾の方が絶対良いのに、包丁が変化したのはフライパンだった。
冷凍庫に変わって押し潰されるよりはいいけど。
「嘘だろ……あんたまさか……!」
「んっ?」
突然現れたフライパンに驚いたのか、バンダナが追撃せずに後ろに下がった。
私の事を信じられないといった顔で見ている。
もしかして、私を怖がっている? だとしたら今がチャンスだ。
ゆっくりベッドの上から立ち上がると、フライパンを構えた。
これなら殺す心配はない。気絶するまで殴って、この世界の警察に突き出してやる。
「ヒィヒヒヒ! なんてツイてる日だい! 金貨の方からやって来るなんて!」
「ヤァッ!」
だから、意味不明なんだよ! バンダナが狂ったように笑い出した。
その笑い顔に問答無用でフライパンの角を振り下ろした。
ガァン‼︎
「がぐぅ! 痛っっっ、痛いじゃないかい♪」
「チィッ!」
間違いなく力一杯振り下ろした。ノーガードの脳天にフライパンが直撃した。
それなのに平気そうに笑いながら、フライパンを頭に乗せたまま私を見てきた。
急いでフライパンを横に振り抜くと、顔の左側を狙って真横に振り回した。
「うあああッッ‼︎」
直撃すれば奥歯が吹き飛ぶ程のフルスイングだ。
ガァツン‼︎
「痛ぅっ! だから、痛いじゃないか♪」
「な、何で……」
それなのに左腕一本で受け止められた。
骨折は無理だとしても、打撲は確実の一撃だった。
普通の人間が平気な顔で受け止められるものじゃない。
「そんなの私が『魔女狩り』だからに決まっているだろ。魔女対策はしてんだよ。それにしても『魔女』のくせに攻撃力が低いねえー。まあ、『金属の形状変化』が出来るなら、買い手はいくらでも見つかるから安心しな。出来るだけ良いところを選んでやるよ」
(魔女? 魔女ってあの? 私が魔女……?)
フライパンが効かずに動揺する私にバンダナが得意げに話してきた。
そのお陰でやっと分かってきた。このバンダナは魔女を捕まえて売るのを仕事にしている。
とりあえず私が魔女かどうかは置いておいて、殺すつもりがなくなったらしい。
私を生け捕りにして、何処かの変態に売り飛ばすと決定したらしい。
そんなのもちろんお断りだ。
フライパンが効かないなら、包丁で攻撃するしかない。
フライパンに包丁に変わるように願った。
「ヒィぎゃああああ‼︎」
「——ッゥ‼︎」
でも、フライパンが変わる前に後ろの方、ベッドの方から耳を裂くような悲鳴が鳴り響いた。
反射的に振り向いて、正面のバンダナから目を離してしまった。
私の目に映ったのは浮かぶ炎と、その炎に纏わりつかれるラナさんだった。
「ハァァッ……」
(ヤバイ‼︎ フライパン‼︎)
口から真っ白な煙を吐き出しながら、ラナさんが私を震えるような怖い目つきで見て、左手を向けた。
背中をゾクッと嫌な予感が走り抜けると同時に、強制予定変更と横への全力回避を実行した。
ゴォオオオオ‼︎
「ぐぅああああっっ‼︎」
「熱ッ‼︎」
私が立っていた場所を左手から噴き出した炎が濁流のように通過していった。
フライパンの平たい底で顔を守る事には成功したけど、バンダナが炎の濁流に飲み込まれた。
「炎ッ⁉︎ ラナさん——っぅ‼︎」
ラナさんが私を助けてくれたのかと、一瞬だけ思ってしまったけど、それは間違いだった。
ラナさんが右手を私の方に振り回すと、右手から発生した炎の濁流が私に向かってきた。
(駄目だ! 冷凍庫ッ‼︎)
回避は間に合わない。素早く身体全体を守れる大きな物を願った。
「ぐああぁぁぁ‼︎」
だけど、間に合わなかった。
変化の途中で炎の濁流にフライパンが飲み込まれた。
炎に身体が流され、壁に激しく激突する。その間もフライパンの変化は止まらない。
なりかけの四角い冷凍庫と壁に挟まれ、身体が潰されないように踏ん張るしか出来ない。
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