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第38話

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『ビイイ♪』
「ふぅー、雑魚魔物を一匹友達にするのに、ボス戦のテンションになってしまった」

 自覚しないようにしていたけど、僕って、物凄く弱いと思う。戦闘はほとんど友達任せだ。
 優秀な部下達に任せっきりの親の七光りの二代目若社長と一緒だ。

 まあ、今更自分の無能さに気づいたとしても、頑張る気持ちにはなれない。
 そもそも、やる気があって、頑張れる人間は友達に任せっきりにはしない。前線に立って活躍している。

 一度、楽してお金と強くなる方法を覚えてしまったら、もう後戻りは出来ないんだ。
 優秀な部下達が汗水垂らして頑張っている中で、銀座で回らない寿司を食べて、六本木の高級クラブで若い娘に囲まれながら、ピンクドンペリ十四万円ぐらいを飲むのがやめられないんだ。止められないんだ。

 多分、今の僕の心理状態はそんな感じなんだと思う。クソ最低の屑野朗なんだ。でも、やめられないんだ。

「全員、影の中で休憩するように」
『『ピィー!』』
『ビイイ!』

 HPが減っている牝鹿二匹と虎蜂一匹を影に避難させて、まずはHP回復を優先させた。
 この三人には、まだまだ僕の為に働いてもらわないといけない。

 それにお金が無いので、傷ついた友達に回復アイテムを買ってあげる事も出来ない。
 給料無し、食事無しの完全なブラックフレンド悪い友達だけど、友達ならば我慢してほしい。

「さてと、あと一匹友達に出来るけど……」

 ハッキリ言えば、使えない友達を増やすつもりはない。
 さっきもそうだけど、牝鹿二匹なんて囮役にしかならなかった。

 この森には他に四種類の魔物がいるようだけど、森カエルンは多分、二本足で歩くだけのカエルだ。
 プチトレントはトレントの身体が小さくなったような魔物で、ワイルドボアとワイルドホークは好戦的な猪とたかだと思う。
 確か身体が大きければ、イーグル=わしと呼ばれて、身体が小さければ、ホーク=鷹と呼ばれるらしい。
 英語の授業で聞いたのか分からないけど、なので、ワイルドホークは好戦的な小さな鷹だと予想できる。

「つまりは飛行能力と飛び道具を持っている虎蜂が、このノイジーの森、最強の使える魔物になると思う」

 んんっ~~~? 普通に虎蜂四匹でも良いとは思うけど、虎蜂が精神的に打たれ弱いのが少し気になる点だ。
 ここは地上と上空からのダブル攻撃の方が安定感がある気がする。
 森カエルンか、ワイルドボアを一匹ぐらいは友達にした方が良いかもしれない。

 まあ、圧倒的なレベル差があれば、細かい事を気にする必要はないとは思う。
 でも、最初は戦力を分散させないで、虎蜂四匹のレベルを上げてから、二匹ずつのパーティー二組から始めた方が安全だと思う。
 そして、最終的にはレベル30一匹で、森の魔物を倒せるようになってくれれば、最高だ。

「——という訳で虎蜂をあと三匹捕まえないといけないな」

 倒し方は分かったから、僕の仕事は水魔法で虎蜂を奇襲してから墜落させるだけでいい。
 あとは牝鹿二匹と虎蜂一匹に一撃ずつ攻撃させた後に、三匹の誰か一匹に一撃攻撃してもらえば、虎蜂の残りHPは十パーセント以下になる。
 あとはスキルを発動させて、友達にすれば、虎蜂二匹目を友達に出来る。そうなれば、あとは流れ作業だ。

 虎蜂三匹目の時に牝鹿一匹目を友達解雇して、虎蜂四匹目の時に牝鹿二匹目を友達解雇する。
 これで女王蜂のように僕が、レベル30の虎蜂四匹を引き連れて、ノイジーの森の中を蹂躙できるようになれる。

「欲を言えば、アクア幼女っぽい魔物四匹を友達にして、お風呂場でハーレムパーティーを開きたいけど……」

 でも、それは女神様に禁止されているし、見つかった去勢されてしまう。
 とりあえず、今は煩悩は捨てた方がいいのは確かだ。
 幼女っぽい魔物も美少女っぽい魔物も出会った時に友達にすればいいんだ。
 まずは目先の利益を追求しよう。お金とレベルアップだ。それだけを考えよう。
 
 ♦︎

 予定通りに虎蜂だけのパーティーはすぐに完成した。
 早速、完成した部隊を引き連れて、森の住民達の蹂躙を開始した。

【名前=森カエルン。種族=カエル人族。レベル=12。
 HP=4243/4243。MP=420/420。
 腕力=217。体力=222。知性=215。精神=184。
 重さ=普通。移動速度=少し速い。経験値=19。換金エル=48。
 特技=『泡鉄砲』『葉っぱ手裏剣』。
 固有能力=『水中呼吸』】

 まずは森カエルンだ。
 このカエル忍者は全身緑色で木の上の葉っぱに擬態していた。
 木の上から奇襲攻撃して来るコイツは非常に厄介な強敵だと思う。
 でも、神フォンの探知機能があれば、まったく問題なかった。
 バレていないと油断しているカエル忍者を、虎蜂四匹で文字通り、蜂の巣にしてやった。

【名前=ワイルドボア。種族=猪獣族。レベル=12。
 HP=4714/4714。MP=372/372。
 腕力=280。体力=226。知性=187。精神=91。
 重さ=普通。移動速度=少し速い。経験値=27。換金エル=31】

 デカイだけの茶色い毛皮の大猪だ。
 サイズは大型バイクぐらいはあるので、剣を構えて突っ込んで来る猪の相手をすると、かなり怖い。
 でも、空中戦が出来るお友達がいれば、敵ではなかった。
 針飛ばしの攻撃で一方的に倒す事が出来た。

【名前=ワイルドホーク。種族=鳥獣族。レベル=12。
 HP=3116/3116。MP=281/281。
 腕力=156。体力=271。知性=120。精神=110。
 重さ=普通。移動速度=少し速い。経験値=22。換金エル=31。
 固有能力=『飛行』】

 予想よりも少し大きな鷹で、縦百五十センチ、横九十センチぐらいはある。身体は黒茶色で、頭部だけが白色になっている。
 飛行能力だけならば虎蜂よりも優れていたものの、四対一ならば流石に勝てるはずがない。
 ワイルドホークが攻撃しようと向かって来たところを、虎蜂に尻針を飛ばさせずに、カウンター攻撃させて撃墜させた。

【名前=プチトレント。種族=トレント族。レベル=12。
 HP=2750/2750。MP=481/481。
 腕力=123。体力=146。知性=292。精神=165。
 重さ=軽い。移動速度=普通。経験値=16。換金エル=26。
 魔法=『初級地魔法』】

 出来れば、虎蜂四匹を友達にする前に出会いたかった。
 
「初級地魔法か……どうしようかなぁ~?」

 身長百十センチ、赤色の大きな蕾の胴体と赤色の小さな蕾の両手を持つ魔物『プチトレント』を見つけた時はショックだった。
 プチトレントが使う初級地魔法は、地面から岩棘を一本突き出すという単純な魔法だった。

 コルヌコピアイの町で、エルフのアルアに魔法は教えてもらえる。必要ないとは思っている。
 でも、目の前に魔法を習得できるチャンスがある。やるしかないでしょう。

『パァ! ♪パァネェテェレ♪ パァ!』
「えっ? やっぱり、何って言っているのか分かんない」

 戦闘中にプチトレントは呪文を何度も唱えているけど、何度聞いても、『パパ、寝て』にしか聞こえない。
 僕はパパでもないし、いきなり関係を求めてくる相手は要注意だ。
 僕は友達にせずに呪文を聞き取るのを諦めると、鞘から剣を抜いて攻撃を開始した。
 これは友達にしてから、発音チェックしてもらわないと絶対に習得できない。

「よっと!」

 ドォスン‼︎ 地面から真っ直ぐに飛び出して来た岩棘を真横に飛んで回避した。

「ハァァァッッ、潰れろ‼︎」

 再び魔法を使われる前に、素早く接近して、プチトレントの蕾頭つぼみあたまに剣を振り下ろして叩き潰した。

『パァヤァァァァ⁉︎』

 ザァン‼︎ プチトレントは象の鳴き声を可愛らしくしたような悲鳴を上げる。
 でも、可愛い声だからといって、攻撃の手を止める訳にはいかない。

「おらおらおら! 魔法なんて使わせないぞ!」
『パパャァァァ⁉︎ パァパャァァァッ⁉︎』

 僕は弱そうな魔物には一切容赦はしない。
 ザァン、ザァン、ザァンと四連撃攻撃で瀕死状態にすると、スキルを発動して、強制的に友達にさせてもらった。

 ♦︎

「……疲れた。そろそろ町に帰りたい」

 お昼に焼きそばを食べて、そこそこ頑張った。お腹は空いてはいない。
 午後六時を過ぎて、もう空も暗くなって来たから帰りたいのだ。
 神フォンで魔物を探して、四十匹も倒した。気分はもういいでしょうだ。

 今日の戦果は、ディア二匹、虎蜂二十匹、森カエルン八匹、ワイルドボア七匹、プチトレント五匹、ワイルドホーク四匹、換金エルは1295エルで、獲得経験値は869だった。

 これだけ頑張っても、レベル10→11になっただけだ。
 流石にそう簡単にはレベルアップさせてくれないらしい。

「まあ、のんびり、ゆっくり強くなれという事かもしれないな」

 一日1レベルアップ出来るならば、レクシーとアルアの一週間の修業を受けながら、装備品の強化も出来る。
 目標は決まった。とりあえず、レベル20と初級地魔法の習得を目指そう。
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