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異世界旅行編

蘇生魔法『リザレクション』

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(……だが、本当にそれでいいのか?)

 目的を諦める為の答えは用意された。
 その答えに納得すれば、その先はその問題に頭も心も悩まされずに済む。
 綺麗な死体はあるんだ。死体の中身に心や魂が無くても、十分に可愛い女だ。
 抱こうと思えば抱ける。それが男というものだ。

「フンッ。くだらない。魂の無い女は二次元だ。俺はアニキャラを抱くつもりはないぞ」

 この俺とした事がズボンを脱ぎそうになった。まだまだ諦めるには早過ぎる。
 俺は創造主で魔王だ。死んでいる美少女がいれば、生き返らせてヤる。
 そのぐらいの覚悟がなければ、魔王を名乗る資格はない。

「とりあえず、キスからだな」

 古今東西、寝ている女を起こす方法は王子のキスだ。
 魔王の俺はその条件を兼ね揃えている。
 静かに眠る茶ツインテールの唇に、そっと俺の唇を重ねてみた。

「……」

 反応がない。舌も入れないと駄目か?

「……やはり駄目か」

 分かっていた事だが、これでキスで目覚めないのはハッキリした。
 もちろん最初からこれで生き返るとは思っていない。本命はこれからだ。
 同じ部屋に寝ている死体から服を剥ぎ取ると、女の下半身に乗せた。
 その恥ずかしい姿で外には連れて行けない。錬金術で長ズボン、下着、靴を作った。
 さて、『壊れた魂』の有効活用だ。俺の為に死んでもらおうか。

 ★

「ぴっぃ、ひひぃぃ、はひぃ、ひぃひぃ……」
「あーくそッ! 何が楽勝だよ! こんな場所に閉じ込められてもう終わりだよ!」
「まだ決まった訳じゃない。他の七大悪魔が必ず来る。この場所が重要なんだからな」
「魔王がいるんだ! 来ても一緒だよ!」

 七大悪魔とか偉そうに言ってたくせに、正体不明の悪魔『魔王』に倒された。
 今まで何百体も悪魔を見てきたが、あの魔王は明らかに別物だ。
 悪魔はほとんど人間に興味がないのに、あの魔王は人間にしか興味がなかった。
 あんな拷問方法思いつくなんて、頭が何千回もイカれないと思いつかない。
 早く自殺しないと俺もパルソングと同じ目に遭う。

「ひょい♪ 遊びに来ちゃった♪」
「ひいい、ひいいい、ひいやあああ‼︎」

 鉄格子の向こうに笑っている魔王が現れた。
 あまりの恐ろしさに目を見開き、悲鳴が止まらない。
 もう自殺しても間に合わない。死んでも生き返される。

 ♦︎

「あー良かった。これで実験できる」

 入り口の兵士達を魔眼で眠らせると、俺が作った仮設刑務所に潜入した。
 あの王子、俺が肛門好きの拷問好きだと勘違いしたのか、捕虜に近づけさせようとしない。
 まったく俺が好きなのは拷問だけだぞ。

「ゴメンゴメン、ちょっと失礼するよ。恋話とかしてた?」
「「「ハァハァ‼︎ ハァハァ‼︎」」」
「いやぁー結構集まってるね。これなら二、三人失敗しても大丈夫かな?」

 鉄格子の扉を壊して中に入ると、休憩中の捕虜達に新入りとして礼儀正しく挨拶した。
 王子には生け捕りの才能があるのか、牢屋の中には顔色の悪い先輩囚人が六人もいた。
 その中で用があるのは涎を垂らした廃人だけだ。

「ま、魔王‼︎ 俺達を殺しに来たのか‼︎」
「あゔっ? 魔王? 魔王様だろうがあああ‼︎」
「あぶう‼︎」
「「「ひいいい‼︎」」」

 ここの看守は囚人の躾がなってない。無礼な囚人を怒鳴りつけると殴り飛ばした。
 この俺様の手を煩わせるんじゃねえよ。

「よっと。さてと、どうやってやるんだ? 力尽くでいいのか?」

 女兵士を包んだ布袋を床に置くと、廃人状態の茶髪男を見た。
 魂や心が何処にあるのか分からない。脳みそか心臓か……まあ、どっちかの可能性が高い。
 でも、脳みそと心臓を掴み出して、女兵士に移植しても生き返るとは思えない。
 こういう時は他人の知恵に頼るのも一つの手だ。牢屋の囚人達に訊いてみた。

「なあ、お前ら。魂は何処にあると思う?」
「魔王様、お願いです! 俺達を殺してください! こんな生き地獄耐えきれません!」
「えっ、いいの? 本当に殺すよ?」
「お願いします‼︎ 本当に殺してください‼︎」
「おおお‼︎」

 まさかの人体実験志願者だ。
 コイツら女兵士の為に自分の命を犠牲にするなんて——男の中の男だ。
 まだ、本当の男がこの世界にも行き残っていたんだな。

「くっ、お前達の気持ちだけ有り難く貰っておく! 殺すのは一人で十分だ!」
「ぴいやあ‼︎」
「「「魔王様ぁー‼︎」」」

 この熱い胸の鼓動を感じるなら、魂がある場所なんて一つしかない。
 廃人男を殴って気絶させると、布袋から女兵士を取り出した。
 左手で廃人男のおっぱいを揉みながら、右手で女兵士のおっぱいを揉んで蘇生させる。
 いや、おっぱいを揉む必要はない。むしろ、男のおっぱいなんて揉みたくない。
 左手に錬金術、右手に創造主の力をイメージすると奇跡を願った。

(『生き返らせてヤるリザレクション』‼︎)
 
 二人の胸に手を置き、左手から右手に魂を移動させる。移動するように念じる。
 魔力によって、左手は黄金に輝き、右手は白銀に輝く。信じれば願いは叶う。
 俺は必ずヤれる男だ。溜め込んだHPエロポイントを全て使ってもいい。
 さあ、奇跡よ起れ‼︎

「おおおお‼︎ 『リザレクション』‼︎」

 二度も唱えた。そして、駄目押しに右手を服の下に潜り込ませて心肺蘇生を開始した。
 揉み揉み、揉み揉み、揉み揉み、揉み揉み、揉み——

(逝き還れえええええ‼︎ あうう、あうぅぅぅ♡)

 生き返れ……正解はこっちだ。だが、人は間違って成長するものだ。
 おっぱい如きでHPが消費されていく。何たる不覚。何たる不覚だ。
 だが、成果はあった。

「うあああああ‼︎ ハァハァ‼︎ ハァハァ‼︎ ハァハァ‼︎」

 永遠の眠りに堕ちていた女兵士が息を吹き返した。
 俺の右手におっぱいの激しい鼓動を感じる。生きている証拠だ。

「……化け物が」
「あん?」

 鉄格子の外から不快感を隠さない声が聞こえた。
 聞き覚えのある声に、服から右手を引き抜き振り返ると、そこに王子が立っていた。
 お前は家政婦かよ。

「死んだ人間さえ生き返らせるとは、お前は何者だ? 悪魔だとしても、その力は神に匹敵する。ただの悪魔では不可能だ」
「フッ♪ 今さら自分が呼び出した存在に恐怖しているのか?」
「お前の本当の目的は何だ? 捕虜を生かして捕まえるように命じたのは知っている。その女は敵だ。もしや……地の将ジルフォードは生きているのか? だとしたら、この岩の建造物も説明がつく」
「はあ?」

 王子の被害妄想と想像力には敬意を払うよ。次は俺が七大悪魔の仲間と言い出すんだろ。
 この馬鹿王子はだから住民に半血王子と馬鹿にされるんだ。お前を騙して、俺に何の得があるんだよ。

「何か勘違いしているようだから教えてやる。この女を生き返らせたのは俺の部下にする為だ。むさ苦しい男は嫌いでね」
「お前に部下が必要なのか? 人間なんて足手纏いになるだけだろう」
「一人で出来ない事が色々とあるんだよ♪ それよりもいいのか?」
「何がだ?」
「お前にも生き返らせたい人間がいるんじゃないのか? 叶えてやろうか?」
「……」

 やれやれ、そろそろコイツとは縁を切る頃かな。
 利用できるなら役に立つが、利用できないなら邪魔になる。
 どちらになるかはコイツの答え次第だ。

「死んだ国民全員だ。私の無力さで死んだ者達だ。出来るのか?」

 罪悪感と後悔、それがお前の原動力か。実にくだらない人生だ。

「フッ。当たり前だ♪ その道を選ぶならここから先は地獄だぞ。生者を殺し、死者を蘇らせる。死したお前が向かう先は地獄の最下層だ。大悪魔になる覚悟は出来てるんだろうな♪」
「……構わない、好きにしろ。私の地獄はここだ」
「クヒィ♪ いいイカれ具合だ。ようこそ地獄へ」

 俺とは対照的な責任感の塊みたいな男だが、まあ仲良くやれるなら問題ない。
 俺は俺の為に、お前は国民の為に協力しようじゃないか。

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