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第3章

第98話⑩解決

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『舐めるなよ、人間風情が! ”アセンブル集まれ〟!』
『ゔゔああぁぁ……』

 ムキになるのは追い込まれている証拠だ。
 息子がママに頼らずに死霊達に頼り出した。

「またデカイのでも作るのか?」

 リッチロードの黒狼死竜なら相手にならない。
 さらに大量に集めて強いのを作るつもりなら、まあ多少は苦戦する。
 それでも今の俺の相手にはならない。どっちみち雑魚だ。

『”ユニオン合体〟! 我は【シンムル魔草族】の王であり、【死】の王だ! 人間ごときに負ける理由はない!』

 やっぱり息子が何を言っているのか分からない。
 そんな息子の身体に、床から現れた死霊達が群がっている。
 どうやら大きくなるのではなく、黒くなるみたいだ。
 真っ白な肌が真っ黒に変わっていく。
 黒くなるにつれて、存在感が上がっている気がする。

「ふぅー……来い!」

 息子の本気だ。俺も本気で応えるしかない。
 覚悟を決めると右拳に聖拳を発動させた。

『来い、暗黒剣——』

 刀身が半分になった黒剣が息子の右手に飛んでいった。
 柄を掴むと、

『【即死刀=死屍累々】——この刃に触れた者は死ぬ。死なないならくれてやる。永遠の死を』

 剣の形が変わった。大剣が細い片刃の剣に変わってしまった。
 刃全体が禍々しいオーラを放ち、真っ赤な湯気がユラユラ切先から上がっている。
 あれは刺された瞬間に間違いなく死ぬ。レイズデッドでも防げないかもしれない。

「準備は出来たようだな。行くぞ!」

 だけど、息子の剣にビビる親は親失格だ。
 父親ならば、どんな息子でも受け止められる大きくて強い心が必要だ。
 死は体験した。もう俺に怖いものは何もない。息子に向かって走った。

『フゥッ!』

 両手で素早く柄を掴むと、高速の払い斬りが右側から飛んできた。
 避ける、避けない、避ける、避けない、避ける——

「せいやぁ‼︎」

 もちろん避けない。切られるの上等で右拳の聖拳を息子の顔に全力で振り回した。

『がはあああっ‼︎』「ずぐうっ!」

 お互いの必殺が命中した。俺の拳が息子の顔面を砕き、壁に吹き飛ばして激突させた。
 息子の即死刀が俺の右腹を綺麗に切り裂いて、俺を床に倒れさせた。

(”レイズデッド〟)

 本気の勝負だけど、死ぬ気はまったくない。
 本当に死ぬ前に復活の呪文を唱えた。切られた傷が塞がっていく。
 息子よ、悪いが父さんはこういう人間なんだ。悪く思わないでくれよ。

「はぁはぁ! はぁはぁ! 死ぬかと思った‼︎」
『ぐぅ、うっ、はぁはぁ! 巫山戯るな、俺はこんなところで倒れてなんかいられない、俺には、俺には……』

 お互いしぶとい親子だ。あの一撃を喰らって、息子も剣を支えに立ち上がった。
 なんとも凄い根性だ。余程やりたいらしい。

 だけど、三人とも俺の妻で女だ。お前に抱かせるつもりはない。
 もう一度、右拳に聖拳を纏わせた。死んだら生き返らせてやる。
 遠慮なくこの一撃で眠らせてやる。

「子供は寝る時間だ!」

 フラフラと落ちる寸前だ。
 だったらやるしかない。壁際の息子の元に走った。
 パパの子守り歌は超過激だと教えてやる。

『来るなら来い、殺してやる……』

 即死剣の刃を俺に向けて真横に構えた。
 その剣がお前を惑わしているのなら、父として放っておけない。
 その剣に取り憑く死霊達もまとめて送ってやる。
 右拳を突き出すと同時に左拳も突き出した。

「聖双拳”レイズデッド〟‼︎」
『ごばぁ——‼︎』

 二つの拳が刃を砕き、息子を砕き、背後の壁まで砕き壊した。
 手応え有りだ。壁の穴の先には静かに息子が床に寝ている。

「ふぅー。よし、帰るか!」

 四つ目の職業じゃなくて、まさかのサプライズプレゼント=驚きの贈り物だったが、子供は天からの贈り物だ。
 大切にしないといけない。
 明らかな虐待をした後で何を言うかと言われるが、刃物を人に向けるとどうなるのか教えるのは親の義務だ。
 義務なら容赦なくやるしかない。

 壁の穴から廊下に出ると「よっこしょ」と息子を左肩の上に回収した。
 まだまだ軽い。成長するのが楽しみだ。

「さあ、帰ろうか」
「ど、どこにですか……」

 再び穴に入って、玉座の部屋に入ると、エルシアに右手を差し出して言った。
 怯える瞳で俺を見ているけど、そんなの決まっている。
 この城は俺の家には広すぎる。ついでに近場に街がないから非常に不便だ。
 まだ牧場の方が千倍マシだ。

「何言ってんだよ、ママ。俺達の家だよ。これからは三人仲良く暮らそうね」
「い、嫌ぁー‼︎」

 ママ、ここは悲鳴を上げるところじゃなくて、喜ぶところだよ。
 嫌がる、いや、喜ぶエルシアも肩に担ぐと玉座の間を出た。

 この冒険で職業を二つ失って、ただのウルトラソウリョになってしまった。
 だけど、それ以上に大切なものを手に入れた。【家族】それ以上に大切なものはない。
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みんなの感想(1件)

A.N.
2024.03.16 A.N.

エロシーンが早くほしいですね(^^)

もう書かないって言ったよね?
2024.03.17 もう書かないって言ったよね?

大丈夫。これはエロファンタジーじゃなくて、ただのエロ小説です。エロシーンは半分以上もあります。読みたくなくても自動的にエロシーンになります。

解除

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