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第2章

第65話⑩解決

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 戦士の中に影俺を倒せる奴がいるとは思わなかった。
 妹を見つけたのに、これだとリラを助けに行かないといけない。

 だけど、やられたのなら、再び影俺を出せば問題ない。
 どんな強敵も二人でやれば倒せない敵はいない。

 屋敷の玄関扉に向かって、妹の手を引っ張って走っていく。
 早く助けに行かないと、リラが戦士達に犯されてしまう。
 俺の妻の中に俺以外のものが入るのは駄目だ。
 俺専用ダンジョンとして、綺麗に大切に使い続けたい。

「フィリア、ちょっと暴れるけど大丈夫だからな!」

 もうすぐで着きそうだ。
 戦士達が何十人残っているか知らないけど、今度こそ妹の身は俺が守ってやる。

「うん。でも、私も強くなったから大丈夫だよ。LV82まで上がったんだよ」
「それは凄いな。でも、お兄ちゃんに任せていれば大丈夫だ。フィリアはお兄ちゃんが守ってあげるから」
「うん、お兄ちゃん……」

 まるで幼い頃に戻ったみたいだ。フィリアが憧れの眼差しで見ている。
 こんな目で見られているのに、情けない姿は見せられない。
 邪魔する戦士は全員地面に沈めてやる。

「ほぉー、死体が消えたからモンスターかと思ったら、もう一人いたのか」
「くっ、お父さん!」

 玄関から外に出ると、地面に倒れているリラを足で踏んづけて、お父さんが待っていた。
 そのお父さんの隣には、ヨハネが短杖を持って立っている。

「お父さんだと? お前にお父さんと呼ばせるつもりはない」
「くっ! だったら、その足を退けてくれませんか。俺の大切な仲間なんです」
「大切ならキチンと守る事だな。じゃないと失ってから後悔するぞ!」
「がはっ……!」
「リラァー‼︎」

 退かした足でリラの脇腹を蹴り飛ばして、俺の方に飛ばしてきた。
 急いで飛んでくるリラにウルトラヒールをかけて、走って受け止めると地面に寝かせた。

「うぐっ、ごめんね、役に立てなくて……」
「何も言わなくてもいい。あとは俺が終わらせる。ゆっくり休んでいろ」
「うん、気をつけてね……」
「誰に言ってる。俺だぞ」

 妊婦だったら、今の蹴りで赤ちゃんが死んでいた。
 このお貴族様は娘を含めて、女の扱い方がなっていない。
 俺が教えてやる。俺の女に足を出したらどうなるのか。

「終わらせるか。ああ、終わらせてやろう。俺がな。貴族とその私兵に手を出したんだ、死ぬ覚悟は出来ているな、平民?」
「死ぬつもりはない。それに先に手を出してきたのはそっちだ。刺客を送って殺そうとしたくせに。お貴族様は約束も守れない馬鹿なのか」
「平民の屑の分際で、お父様になんて口を聞くの! お父様、この屑は私が殺します! いえ、殺させてください!」

 妹と幼馴染を傷付けられて、流石にキレている。口の聞き方なんて知らない。
 それに対してヨハネがブチ切れている。リラはお前の仲間じゃないのかよ。
 怒るなら俺の前に、その腐れ親父に怒れよ。

「……よかろう。受けた恥なら自分で注げ。それが出来ないなら、恥を背負って、今後は俺の言う通りにしろ。分かったな?」
「はい、構いません。あんな屑にやられるつもりは二度とありません」

 本気で戦うつもりのようだ。ヨハネが父親の前に立った。
 その父親の後ろには40人ほどの戦士達が立っている。
 それなのに一人で戦うつもりだ。

「やるつもりなら、後ろの戦士達も使った方がいいぞ。お前じゃ、俺は倒せない」
「LV23の屑の分際で生意気ね。あんたにやられてから、私は本気で修行したわ。毎日、魔法が使えなくなるまで、モンスターを倒して倒して倒し続けた。あんたを殺したいと思わない日はなかったわ。そのあんたが目の前にいるの。悪いけど、楽に殺してもらえると思わない事ね。”エルラルスト風と地の乱舞〟——」

 一応忠告はしておいた。それを無視したのはヨハネだ。
 怒りと屈辱を滲ませた顔で魔法を唱えて、空中に回転する薄い円盤風と尖った石矢尻を作り出した。
 全身を切って、突き刺すらしい。

 だったら、教えてやろう。強くなったのは俺も同じだという事を。

「惨めに泣き喚きなさい」
「”神秘の守り〟」

 飛んでくる風の刃と石の矢尻に対して、全身を守る光の鎧を発動させた。
 そして、そのままヨハネに向かって歩き出した。

「ぐっ、どうして……⁉︎」

 透明な光の鎧が魔法を弾き飛ばしていく。この程度の攻撃で壊されるわけがない。
 壊したいなら、LV100超えの千年竜木の空砲ぐらい撃ってこい。

「どうした? 泣き喚くのはお前の方なのか? だったら、早くしろ。それで勘弁してやる」
「ふ、巫山戯んじゃないわよ! あんたに謝るぐらいなら、死んだ方がマシよ! ”ボルケーノショット憤激の溶岩弾〟‼︎ この世から存在事消してやるわ!」

 俺の挑発にヨハネの本気の一撃が発動された。
 緑、赤、茶の三色の球状の魔力の塊が、空中で俺に向かって、三角形に並ぶと、三角形の中心から歪な燃える岩が少しずつ出てきた。

「”ウルトラソウル〟……」

 肌に感じる魔力で分かる。この一撃は神秘の守りを突破する。
 左手に黒大剣を持たせると右拳に黒い光を纏った。けれども、まだ足りない。
 さらにもう一度、念には念を入れて、もう一度重ねた。

「ほぉー、この魔力はヨハネよりも上か……」

【トリプルウルトラソウル】……
 これで壊せないようなら認めてやる。努力だけは。

「来い。潰してやる」

 立ち止まると言った。撃つ前に倒すなんて男のする事じゃない。

「くぅぅぅ、舐めるなああ‼︎」

 目の前で火山が爆発した。
 俺の胸から股まで消し飛ばせる、ドロドロに溶けた岩石が飛んでくる。
 その溶岩石に向かって、右拳を下から上に振り上げた。

「しゃらくせええ‼︎」
「きゃああああ‼︎」

 怒りの一撃。溶岩石を空高く打ち上げた。
 空中でバラバラに砕かれた溶岩石の雨が降ってきた。
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