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第2章

第61話⑨クライマックス

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「ぐああっ……‼︎」「ぬああっ……‼︎」
「や、や、やっぱり僧侶LV23じゃなかった‼︎」

 向かって来る奴と近くにいる奴。
 拳が届く距離にいる奴らを次々に殴り倒していく。
 俺の妹に手と聖剣を出していいのは俺だけだ。

「慌てずいつも通りにやれ! 重盾隊、前に出ろ! 轢き殺すぞ、突撃!」
「うおおおおお‼︎」

 やはり、ただ突っ込んでくるモンスターとは違う。
 古戦士の号令で、身体を隠すほどの四角い大盾を持った戦士達が横一例に並んで向かってきた。

「”ウルトラソウル〟……」

 右拳が黒い光に包まれた。お前達は俺の敵じゃない。

「フンッ‼︎」
「ごははっ……‼︎」

 一撃。盾を粉砕して殴り飛ばした。次々に盾を粉砕して殴り飛ばしていく。
 妹が受けた心の傷はもう治せない。俺も傷付けたが、お前達は250人だ。
 兄として、男として、絶対にお前達だけは許さない。

「邪魔だ、退けえ‼︎ アイツは俺がやる‼︎」
「やめろ! あれは人間が勝てる相手じゃない!」
「うるせい‼︎ うおおおおお‼︎」

 押さえていた戦士達を払い退けて、ロイヤルが剣を二本抜いて向かってきた。
 LV102の戦士なら相当強い。その強さになるには想像を絶する努力が必要だ。

 だけど、俺の妹に想像を絶する陵辱を行なったお前を俺は許さない。
 婚約者を寝取ったのは悪かった。でも、16歳になった時に一番LVが高かった者が貰えるんだよな。
 だったら、お前を倒せば文句はないな。

「死ねえ‼︎」
「”ウルトラソウル〟」

 右腕から振り下ろされた剣を左手に纏った黒光で受け止めた。
 そのまま強く握り締めて、動かせないようにした。

「くっ、オラッ‼︎」
「”ウルトラソウル〟」

 それに対して、左腕の剣を俺の胸に向かって突き出してきた。
 当然それも右手に黒光を纏って、胸に刺さる前に握り締めて止めた。
 そして、

「”ウルトラソウル〟‼︎」
「何だと⁉︎」

 両手に二重のウルトラソウルを込めて、握り締めていた刀身を握り砕いた。

「俺の妹が世話になったな。コイツはそのお礼だ‼︎」
「ぐぶっ、ごげぇ、があああっ……‼︎」

 左拳で右頬を殴りつけると、すぐさま左頬を右拳で殴りつけた。
 顔面を粉砕されて、左から右に殴り飛ばされると、地面を派手に削りまくって停止した。

「本当にLV102か? 雑魚じゃねえか」
「嘘だろ‼︎ ロイヤルが二発でやられやがった‼︎」

 この程度の男に妹が辱められたと思うと泣けてくる。
 こんな雑魚、俺の妹なら秒殺だ。俺の為に逆らえずに我慢してたんだ。
 こんなにも兄思いの妹だったなんて知らなかった。

「リラァー!」

 もう我慢できない。早く妹を助けたい。
 大きな声で幼馴染を呼んだ。

「もぉー、なに! こっちも忙しんだけど!」

 戦士達と戦闘中のリラが応えた。

「このまま屋敷まで突っ切るぞ! 遅れるなよ!」
「ちょっと待ちなさいよ! 私が犯されたらどうすんのよ!」

 返事は聞かずに走り出した。もちろん捕まったら犯されるに決まっている。
 嫌なら死に物狂いで付いてくるしかない。逆に良いなら、250人全員相手してろ。

「ぐぼぉ……!」「ぐがぁ……!」

 邪魔する奴らを殴り飛ばして、屋敷の扉に向かって走り続ける。
 リラも戦士を避けつつ、俺の後ろに付いてきた。
 このまま屋敷の扉を壊して、中で影分身する。

 影俺にリラを任せて、俺は屋敷の中に妹がいないか探し回る。
 今も知らない戦士の相手をさせられているかと思うと、その相手を殺したくなる。

「リラ、そいつとここで雑魚どもの相手をしていろ! 俺はフィリアを探してくる!」

 扉を体当たりで壊して屋敷の中に入ると、暗黒剣をアイテム鞄から取り出して、影分身を使用した。
 暗黒剣を持ったもう一人の俺が影から現れた。
 
「くぅぅぅ! 分かったわよ! 見つけたら、予定通りに逃げるんでしょうね!」
「ああ、多分な」

 それは状況による。五人ぐらいに同時に妹が犯されていたら、この屋敷にいる戦士全員皆殺しだ。
 どうせ追われる身になるなら、徹底的にやってやる。

「フィリア! 何処だ! 何処にいるんだ!」

 リラと影俺と分かれて、屋敷の中を走り回る。見つけた扉を開けて開けて開けまくる。
 けれども、何処にも妹はいない。いたのはメイド服の少女だけだった。

「お願いします、殺さないで……」

 メイド少女がブルブル震えている。俺を怖がっているようだ。

「おい、フィリアという金髪の女戦士を知らないか?」

 だったら、強気に聞くしかない。

「く、訓練場にいると思います、この先を右に曲がって、三番の部屋です……」
「ありがとうよ。これはお礼だ。”スリープ〟」
「はぁぅ……」

 フィリアの居場所が分かったかもしれない。
 アイテム鞄から状態異常魔法の杖を取り出すと、メイドの少女を眠らせてあげた。
 これがなかったら、拳で眠らせる必要があった。

「ここか……フィリア!」

 教えられた部屋に到着すると、暗黒剣を構えて扉を開けた。
 土が敷かれた部屋の中に、見慣れた全身鎧を着た一人の戦士が立っていた。
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