上 下
45 / 98
第2章

第45話⑥ミッドポイント

しおりを挟む
 リラが白目で「ひゅーっ、ひゅーっ」なるまで、たっぷり御者台で楽しんでから馬車の中に入った。
 幼馴染妻ダンジョンからは聖剣汁が溢れ出ている。二人の愛の結晶が生まれてくるのも時間の問題だ。

「リラ、ここでもう少しだけ鍛えたら駄目かな?」

 同じ毛布に包まって、隣に寝ている妻に聞いてみた。
 隠れて暮らすにしても、見つかった場合に逃げきれる力が必要だ。
 子供が生まれて幸せに暮らしている時に見つかって、夫婦二人殺されたら、子供が一人になる。

 もしかすると子供も一緒に殺されてしまうかもしれない。
 そんな日が来ると想像するだけでも怖くて安心して暮らせない。

「ん~、いいけど……もうここのモンスターは相手にならないでしょ」
「まあ、そうだけど……LVと技術は上がると思うよ」
「それだけ上がってもねぇ~」

 元気になったみたいだ。
 さっきまで放心状態だったのに、ペタペタ身体に擦り寄ってくる。
 顔とかおっぱいとか太ももを使って、猫みたいに身体に擦り付けてくる。

 こんな事されたら三回戦目に突入してしまう。
 だけど、今は大事な二人の将来、いや、子供を含めた三人の話をする時だ。
 もしかすると、四人、五人と増える可能性もある。いや、絶対に増える。
 妻がこんなに積極的なエロ可愛いなら、生まれてくる子供が一人のはずがない。

「やっぱり上位職になるしかないか……」

 ミノタウロスとオーガを倒せるようになったのに、まだ上位職になれてない。
 普通ならなれているはずなのに、神様がこの程度は俺にとっては過酷な試練でも何でもないと言ってる。
 だったら、

「【ダンジョンボス】を単独で倒せばなれるかも」

 これは妹が上位職の上の特別職になる為に考えた方法だ。
 ミノタウロスの何十倍も過酷な試練になる。
 これでなれなければ、神様を倒さなければなれない。

「ん~、だったら別のダンジョンに行かないとね。ここにはボスいないから」
「そうだね……」

 リラの言う通り、ダンジョン【コンドミニアム旧市街地】にはボス部屋が存在しない。
 倒しても倒しても無限に湧き出る亜人系モンスターしかいない。
 しかも、戦利品はモンスターが持っている大斧や大包丁ぐらいだ。
 今じゃ中級、上級冒険者に飽きられて、行けば貸し切り状態のダンジョンになっている。

「でも、そんな事ってあるのかな? ダンジョンなんだから、ダンジョンボスはいるよ」
「そう思って探し回って、いないって結論が出たんじゃないの? ん~、暖かいぃ」

 駄目だ。真剣に話しているのに、リラが俺の身体に夢中で話し相手にならない。
 確かに人肌で暖め合うと柔らかいし落ち着くと思う。

 だけど、聖剣だけがソワソワと落ち着かない。
 いいの、駄目なの、と戦闘体勢になっていいのか俺に聞いてくる。
 多分、今は駄目だと思う。

 雌猫が可愛く擦り寄って来たからって、いきなり腰に乗って交尾を始める雄猫はいない。
 今はじゃれ合う時間だ。
 
「よし! デートしよう!」

 結局、結論も聖剣汁も出せないまま朝になってしまった。
 今日一日、旧市街地をモンスター倒しながらデートする。
 それでダンジョンボスが見つからなかったら、【AAだぶるえい級ダンジョン】に行くしかない。

「今日は私も倒すからね。見ているだけじゃ身体が鈍ってしかたないわ」

 両手に籠手を装着したリラが腕を回して張り切っている。
 いっぱいエッチしたから身体が鈍る事はないと思う。
 どっちかと言うと、エッチし過ぎて身体が怠くなっているだけだと思う。

「死ねえ!」
「おりゃー!」
『グゲェ……!』

 二人で並んで亜人モンスターを倒していく。
 いつもは妹とリラの脳筋二人を後ろから見ているだけなのに、今は妹の代わりに戦っている。
 童貞を卒業してから急成長だ。童貞を貰ってくれた妹には本当に感謝している。

「はぁぁ、やっぱりミノとオー以外は手応えないわね」

 殺戮デート中なのに、モンスターが弱過ぎて、リラのやる気が低下中だ。
 そのミノタウロスとオーガさえも一撃で瞬殺しているから仕方ない。

「じゃあ、エッチしながら——」
「却下! ダンジョンでは禁止って言ったでしょ!」
「そうですよねぇ……」

 名案だと思ったのに速攻で断られた。
 モンスターも集まるし、気持ち良いから絶対に良いと思ったのに。
 
「ソリャ! エイャ! もぉー。見るのも禁止!」
「ええっ! 見るのも⁉︎」

 戦っているリラのおっぱいやお尻をチラチラ見ていたら、リラがおっぱいを腕で隠して言ってきた。
 触るのも見るのも禁止されたら、何をすればいいのか分からない。
 それだと戦うだけのデートになってしまう。

「あっ、リラ! あれ見て!」
「もぉー、何?」

 困っていると救世主を見つけてしまった。
 瓦礫の中に動く人影を見つけた。
 亜人じゃなくて、【本物の人間】だ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

性欲の強すぎるヤクザに捕まった話

古亜
恋愛
中堅企業の普通のOL、沢木梢(さわきこずえ)はある日突然現れたチンピラ3人に、兄貴と呼ばれる人物のもとへ拉致されてしまう。 どうやら商売女と間違えられたらしく、人違いだと主張するも、兄貴とか呼ばれた男は聞く耳を持たない。 「美味しいピザをすぐデリバリーできるのに、わざわざコンビニのピザ風の惣菜パンを食べる人います?」 「たまには惣菜パンも悪くねぇ」 ……嘘でしょ。 2019/11/4 33話+2話で本編完結 2021/1/15 書籍出版されました 2021/1/22 続き頑張ります 半分くらいR18な話なので予告はしません。 強引な描写含むので苦手な方はブラウザバックしてください。だいたいタイトル通りな感じなので、少しでも思ってたのと違う、地雷と思ったら即回れ右でお願いします。 誤字脱字、文章わかりにくい等の指摘は有り難く受け取り修正しますが、思った通りじゃない生理的に無理といった内容については自衛に留め批判否定はご遠慮ください。泣きます。 当然の事ながら、この話はフィクションです。

勝負に勝ったので委員長におっぱいを見せてもらった

矢木羽研
青春
優等生の委員長と「勝ったほうが言うことを聞く」という賭けをしたので、「おっぱい見せて」と頼んでみたら……青春寸止めストーリー。

【R18】僕の筆おろし日記(高校生の僕は親友の家で彼の母親と倫ならぬ禁断の行為を…初体験の相手は美しい人妻だった)

幻田恋人
恋愛
 夏休みも終盤に入って、僕は親友の家で一緒に宿題をする事になった。  でも、その家には僕が以前から大人の女性として憧れていた親友の母親で、とても魅力的な人妻の小百合がいた。  親友のいない家の中で僕と小百合の二人だけの時間が始まる。  童貞の僕は小百合の美しさに圧倒され、次第に彼女との濃厚な大人の関係に陥っていく。  許されるはずのない、男子高校生の僕と親友の母親との倫を外れた禁断の愛欲の行為が親友の家で展開されていく…  僕はもう我慢の限界を超えてしまった… 早く小百合さんの中に…

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

RUBBER LADY 屈辱の性奴隷調教

RUBBER LADY
ファンタジー
RUBBER LADYが活躍するストーリーの続編です

お嬢様、お仕置の時間です。

moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。 両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。 私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。 私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。 両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。 新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。 私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。 海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。 しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。 海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。 しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。

処理中です...