33 / 98
第2章
第33話④プロットポイント①
しおりを挟む
さて、無事に屋敷から出られた俺は、愛馬と馬車、状態異常魔法の杖とアイテム鞄を返してもらえた。
目指す場所は【亜人系モンスター】が多数出現するA級ダンジョン【コンドミニアム旧市街地】だ。
古びた岩の街の中に【ゴブリン】【オーク】【ワーウルフ】【ミノタウロス】【オーガ】と呼ばれるモンスターが多数生息、いや、人間のように生活している。
……と言っても、人間らしい秩序はまったくない。看守のいない牢獄のような場所だ。
殺人、略奪が当たり前のように起こる、ダンジョンと同じ無法地帯だ。
「リラ、さっきは——」
「喋るな、殺すわよ」
駄目だ。猫が虎に豹変している。
御者席の隣に座るリラの両目が血走っている。
ただ、ありがとうとお礼を言いたいだけなのに、それさえ許されない。
もちろん理由は分かっている。協力してくれるだけで死ぬほど感謝している。
「いい。逃げたりしたら両足を固結びするからね」
「はい……」
逃げないように脅してきたけど、物理的に無理だと思う。
もちろん足から骨を抜き取れば出来ない事はない。
そして、恐ろしい事にリラなら骨を抜いて、結ぶ事は可能なのだ。
つまり、逃げたら本当にやられてしまうという事だ。
でも、脅さなくても逃げたりしない。
大切な妹が人質に取られているのに逃げ出す兄貴はいない。
亜人モンスターを眠らせて、毒にして、瀕死になったところを剣でブスリだ。
これなら安全にLVを上げられる。
妹が上級職の大戦士になったのは、LV35の時だった。
残り12なら、死に物狂いで頑張れば、一ヶ月で上級職になれる可能性はある。
僧侶の上級職になれさえすれば、呪いは解けたも同然だ。
「どうどう。よく頑張ったな。しっかり休むんだぞ」
『ヒィヒヒン!』
目的地のすぐ近くまでやってきた。手綱を引いて、愛馬を止まらせた。
時間がないので愛馬を何度も回復して、ほぼ休ませずに走らせた。
コイツには苦労ばかりかけている。
家に無事に帰れたら、家庭菜園で美味しいニンジンを育てて腹一杯食べさせたい。
「ほら、着いたんならさっさと寝るわよ。明日は早いんだから」
「はい……」
御者席の後ろのカーテンを開けて、リラが荷台の中に入っていった。
空はとっくに暗くなっている。確かに寝る時間だ。
でも、荷台に行く事は許されない。
死にたくないなら、このままここに座って寝るしかない。
「ちょっと! いつまでそこに座ってんのよ! さっさと中に入りなさい!」
「はい! すみません!」
ウトウト眠りそうになっていたら、急にカーテンが開いて、リラが怒鳴ってきた。
入っていいらしいけど、入りたくない。何されるか分からない。
「し、失礼します……」
だけど、入らないという選択肢はない。
カーテンを左手で払い退けて、四つん這いの体勢で荷台の中に入った。
「まったくぅー、早く寝るわよ」
「はい、すみません……」
怒っているけど、それ以上に眠いみたいだ。ゴロンとリラが寝転んだ。
もしかして、一緒に寝たいとか。
……とか勘違いして手を出したら、両手固結びされてしまう。
逃げないように監視するなら、外よりも中の方が都合がいいだけだ。
「ふぅー……」
リラが荷台の真ん中で寝ているので、アイテム鞄から毛布を出して、角に座って目蓋を閉じた。
明日からのLV上げに備えて、しっかり休まないといけない。
「はぅっ!」
そう思って寝ようとしていたのに、身体の左側にピタッと柔らかいものが当たった。
慌てて目を開けると、隣にリラが寄りかかっていた。
「なに、一人で寝てんのよ? 寝るなら二人ででしょう」
えええええええええっ。どういう事。
なんか、ちょっと怒ってるんですけど。
「ほら、寒いんだから真ん中で寝るわよ」
「えっ、ちょっ、えっ、ちょっ⁉︎」
俺が馬鹿だから分かんないだけなのかもしれないけど、リラが左腕を掴んで引っ張っていく。
これがどういう意味なのか教えて欲しいけど、付いて行けば教えてもらえる。
だったら付いて行くしかないと思う。
「ほら、二人で寝た方があったかいでしょ?」
「そ、そうですね」
荷台の真ん中に二人で毛布に入って寝転ぶと、リラがピタッと抱き着いてきた。
背中に柔らかいものが二つ当たっている。おっぱいだ。
おっぱい以外に顔やお腹や股間が、俺の首筋や背中や尻に当たっている。
こんな事されたら、反応してはいけないものが反応してしまう。
だけど、これは罠だ。我慢できずに手を出した瞬間に恐ろしい目に遭う。
そうに決まっている。
「はぁはぁ、もう、我慢できない……しちゃうからね」
「うわっ⁉︎」
何もしないで我慢していると、リラの息遣いが荒くなってきた。
そして、急に起き上がって、俺を床に押し倒して馬乗りになった。
これ絶対に殺されるパターンのやつだ。
目指す場所は【亜人系モンスター】が多数出現するA級ダンジョン【コンドミニアム旧市街地】だ。
古びた岩の街の中に【ゴブリン】【オーク】【ワーウルフ】【ミノタウロス】【オーガ】と呼ばれるモンスターが多数生息、いや、人間のように生活している。
……と言っても、人間らしい秩序はまったくない。看守のいない牢獄のような場所だ。
殺人、略奪が当たり前のように起こる、ダンジョンと同じ無法地帯だ。
「リラ、さっきは——」
「喋るな、殺すわよ」
駄目だ。猫が虎に豹変している。
御者席の隣に座るリラの両目が血走っている。
ただ、ありがとうとお礼を言いたいだけなのに、それさえ許されない。
もちろん理由は分かっている。協力してくれるだけで死ぬほど感謝している。
「いい。逃げたりしたら両足を固結びするからね」
「はい……」
逃げないように脅してきたけど、物理的に無理だと思う。
もちろん足から骨を抜き取れば出来ない事はない。
そして、恐ろしい事にリラなら骨を抜いて、結ぶ事は可能なのだ。
つまり、逃げたら本当にやられてしまうという事だ。
でも、脅さなくても逃げたりしない。
大切な妹が人質に取られているのに逃げ出す兄貴はいない。
亜人モンスターを眠らせて、毒にして、瀕死になったところを剣でブスリだ。
これなら安全にLVを上げられる。
妹が上級職の大戦士になったのは、LV35の時だった。
残り12なら、死に物狂いで頑張れば、一ヶ月で上級職になれる可能性はある。
僧侶の上級職になれさえすれば、呪いは解けたも同然だ。
「どうどう。よく頑張ったな。しっかり休むんだぞ」
『ヒィヒヒン!』
目的地のすぐ近くまでやってきた。手綱を引いて、愛馬を止まらせた。
時間がないので愛馬を何度も回復して、ほぼ休ませずに走らせた。
コイツには苦労ばかりかけている。
家に無事に帰れたら、家庭菜園で美味しいニンジンを育てて腹一杯食べさせたい。
「ほら、着いたんならさっさと寝るわよ。明日は早いんだから」
「はい……」
御者席の後ろのカーテンを開けて、リラが荷台の中に入っていった。
空はとっくに暗くなっている。確かに寝る時間だ。
でも、荷台に行く事は許されない。
死にたくないなら、このままここに座って寝るしかない。
「ちょっと! いつまでそこに座ってんのよ! さっさと中に入りなさい!」
「はい! すみません!」
ウトウト眠りそうになっていたら、急にカーテンが開いて、リラが怒鳴ってきた。
入っていいらしいけど、入りたくない。何されるか分からない。
「し、失礼します……」
だけど、入らないという選択肢はない。
カーテンを左手で払い退けて、四つん這いの体勢で荷台の中に入った。
「まったくぅー、早く寝るわよ」
「はい、すみません……」
怒っているけど、それ以上に眠いみたいだ。ゴロンとリラが寝転んだ。
もしかして、一緒に寝たいとか。
……とか勘違いして手を出したら、両手固結びされてしまう。
逃げないように監視するなら、外よりも中の方が都合がいいだけだ。
「ふぅー……」
リラが荷台の真ん中で寝ているので、アイテム鞄から毛布を出して、角に座って目蓋を閉じた。
明日からのLV上げに備えて、しっかり休まないといけない。
「はぅっ!」
そう思って寝ようとしていたのに、身体の左側にピタッと柔らかいものが当たった。
慌てて目を開けると、隣にリラが寄りかかっていた。
「なに、一人で寝てんのよ? 寝るなら二人ででしょう」
えええええええええっ。どういう事。
なんか、ちょっと怒ってるんですけど。
「ほら、寒いんだから真ん中で寝るわよ」
「えっ、ちょっ、えっ、ちょっ⁉︎」
俺が馬鹿だから分かんないだけなのかもしれないけど、リラが左腕を掴んで引っ張っていく。
これがどういう意味なのか教えて欲しいけど、付いて行けば教えてもらえる。
だったら付いて行くしかないと思う。
「ほら、二人で寝た方があったかいでしょ?」
「そ、そうですね」
荷台の真ん中に二人で毛布に入って寝転ぶと、リラがピタッと抱き着いてきた。
背中に柔らかいものが二つ当たっている。おっぱいだ。
おっぱい以外に顔やお腹や股間が、俺の首筋や背中や尻に当たっている。
こんな事されたら、反応してはいけないものが反応してしまう。
だけど、これは罠だ。我慢できずに手を出した瞬間に恐ろしい目に遭う。
そうに決まっている。
「はぁはぁ、もう、我慢できない……しちゃうからね」
「うわっ⁉︎」
何もしないで我慢していると、リラの息遣いが荒くなってきた。
そして、急に起き上がって、俺を床に押し倒して馬乗りになった。
これ絶対に殺されるパターンのやつだ。
11
お気に入りに追加
259
あなたにおすすめの小説
異世界で勇者をやって帰ってきましたが、隣の四姉妹の様子がおかしいんですけど?
レオナール D
ファンタジー
異世界に召喚されて魔王を倒す……そんなありふれた冒険を終えた主人公・八雲勇治は日本へと帰還した。
異世界に残って英雄として暮らし、お姫様と結婚したり、ハーレムを築くことだってできたというのに、あえて日本に帰ることを選択した。その理由は家族同然に付き合っている隣の四姉妹と再会するためである。
隣に住んでいる日下部家の四姉妹には子供の頃から世話になっており、恩返しがしたい、これからも見守ってあげたいと思っていたのだ。
だが……帰還した勇治に次々と襲いかかってくるのは四姉妹のハニートラップ? 奇跡としか思えないようなラッキースケベの連続だった。
おまけに、四姉妹は勇治と同じようにおかしな事情を抱えているようで……? はたして、勇治と四姉妹はこれからも平穏な日常を送ることができるのだろうか!?
悪堕ち王子の快楽ダンジョン、女冒険者を帰さない ~エロゲの悪役に転生した俺、ひっそりスローライフを送りたいだけなのに美少女たちが集まってくる
タイフーンの目
ファンタジー
同人18禁ゲーム【悪堕ち王子の快楽ダンジョン】に転生した主人公、もと日本人のアルト・レイモンド。
〝王家の権力争いで命を狙われた王子アルトは、逃亡生活のすえ、瀕死の状態でとあるダンジョンに転がり込んだ。
邪悪な瘴気に魅入られ、魔族に変貌し、ダンジョンマスターとして君臨。モンスターを強化したり罠を開発して、探索に来た女冒険者たちを非道な手でやり込めるようになる――〟
というのが本来のゲームシナリオ。
しかし、その通りに進めるとアルトには破滅が待っている。
「それくらいならひっそりと暮らしたい!」
人畜無害なダンジョンを装い、自分が快適に過ごすためにあちこち改良するアルト。《クリエイト》スキルと生来の凝り性で、ダンジョンをいじるのに没頭する。
見た目の恐ろしいモンスター娘たちも、《キャラクターメイク》の能力で美少女に。
そうしているうち、やがて女冒険者たちが攻略にやって来た。
アルトは彼なりの『撃退方法』で対処するが――そのあまりの気持ち良さに女冒険者たちが入り浸るようになって……!?
強気な剣士、清楚なシスター、狡猾な盗賊、お忍びでやってきた隣国の皇女まで……信じて送り出した美女・美少女たちが、そのダンジョンから帰ってこない!!!!
※他サイトにも掲載中です。
※○○○シーンはありません。
※鬱展開や、女の子が酷い目に遭うシーンはありません。
※「ダンジョンに夢中になった女冒険者たちが恋人や婚約者よりもこちらを優先させちゃう」的な意味ではちょっとNTR?(BSS?)あり。
聖女の姉が行方不明になりました
蓮沼ナノ
ファンタジー
8年前、姉が聖女の力に目覚め無理矢理王宮に連れて行かれた。取り残された家族は泣きながらも姉の幸せを願っていたが、8年後、王宮から姉が行方不明になったと聞かされる。妹のバリーは姉を探しに王都へと向かうが、王宮では元平民の姉は虐げられていたようで…聖女になった姉と田舎に残された家族の話し。
【R-18】呪いを解かない神官ちゃん
右折坊太郎
ファンタジー
田舎から出てきたばかりの女神官、ミューは一人前の冒険者になるべく、街を訪れていた。
しかし、気弱な彼女は、他の冒険者に声をかけることが出来ず、酒場の隅で小さくなるばかり。
そんな彼女に、魔法剣士の男ユーリが手を差し伸べ、二人はパーティーを組むことになる。
冒険を重ね、仲良くなっていく二人だったが、ある時、ユーリがとある呪いにかかってしまった。
神官であるミューは呪いを解ける力が有るはずなのだが、何故か彼女は「呪いが解けない」と嘘をつく。
彼女が呪いを解かない訳とは――。
――――
※成人男性向けの美少女小説です。この物語に登場する人物は18歳以上です。
この作品は『呪い』をお題に書きました。
ポンコツ女子は異世界で甘やかされる(R18ルート)
三ツ矢美咲
ファンタジー
投稿済み同タイトル小説の、ifルート・アナザーエンド・R18エピソード集。
各話タイトルの章を本編で読むと、より楽しめるかも。
第?章は前知識不要。
基本的にエロエロ。
本編がちょいちょい小難しい分、こっちはアホな話も書く予定。
一旦中断!詳細は近況を!
18禁ゲームの貴族に転生したけど、ステータスが別ゲーのなんだが? えっ? 俺、モブだよね?
ライカ
ファンタジー
【アルタナシア・ドリーム】
VRオンラインゲームで名を馳せたRPGゲーム
その名の通り、全てが自由で様々な職業、モンスター、ゲーム性、そして自宅等の自由性が豊富で世界で、大勢のプレイヤーがその世界に飛び込み、思い思いに過ごし、ダンジョンを攻略し、ボスを倒す………
そんなゲームを俺もプレイしていた
なんだけど……………、何で俺が貴族に転生してんだ!?
それこそ俺の名前、どっかで聞いた事ある名前だと思ったら、コレ、【ルミナス・エルド】って言う18禁ゲームの世界じゃねぇか!?
俺、未プレイなんだが!?
作者より
日曜日は、不定期になります
裏切られてダンジョンの最下層に落とされた僕。偶然見つけたスキル、《スキル交換》でSクラスモンスターの最強スキルを大量ゲット!?
果 一
ファンタジー
第16回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を賜りました。 ダンジョン攻略パーティ《緑青の剣》に荷物持ちとして雇われていたエランは、ある日上層の攻略中に、本来下層にしかいないSクラスモンスター、サイクロプスに遭遇する。勝ち目がないと判断したリーダー、ウッズは、モンスターの狙いを指定した人物に定めさせるスキル《標的誘導》をエランに掛けて、エランを最下層へ続く大穴に突き落としたのだ!
サイクロプスを撒くための囮にされたエランは、サイクロプスもろとも最下層へと落下していく。
スキル《空気障壁》を自身の周りに張ったことで運良く生き延びるも、直後に落下してきたサイクロプスと対峙し、エランは絶体絶命のピンチに!
が、たまたま近くに落ちていた宝箱を見つけ、それを開く。すると、ゲットしたのはなんと――
スキル《交換(リプレイス)》
自分の通常スキル・魔法スキルを、相手の持つスキルと交換できる。
《交換》のスキルを使い、エランは自身の弱小スキルとサイクロプスの持っていた最強スキル《衝撃拳》を交換し、難なくサイクロプスを破壊する!しかも、Sクラスモンスターの撃破によって、レベルが一気に上昇して……!
これは、お荷物な荷物持ちだった少年が、ダンジョンの危機をも救って英雄兼、ダンジョンの制覇者になる物語。
《最下層追放編》第1話〜35話
《最凶の天空迷宮編》第36話〜84話
※本作は小説家になろう・カクヨムでも公開しています
※文字数制限の関係上、上記掲載版のタイトルは『裏切られてダンジョンの最下層に落とされた僕。偶然見つけたスキル、《スキル交換》でSクラスモンスターの最強スキルを大量ゲット!? ~一気にレベルアップして無双します!~』となっております。
もしも○○だったら~らぶえっちシリーズ
中村 心響
恋愛
もしもシリーズと題しまして、オリジナル作品の二次創作。ファンサービスで書いた"もしも、あのキャラとこのキャラがこうだったら~"など、本編では有り得ない夢の妄想短編ストーリーの総集編となっております。
※ 作品
「男装バレてイケメンに~」
「灼熱の砂丘」
「イケメンはずんどうぽっちゃり…」
こちらの作品を先にお読みください。
各、作品のファン様へ。
こちらの作品は、ノリと悪ふざけで作者が書き散らした、らぶえっちだらけの物語りとなっております。
故に、本作品のイメージが崩れた!とか。
あのキャラにこんなことさせないで!とか。
その他諸々の苦情は一切受け付けておりません。(。ᵕᴗᵕ。)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる