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第2章

第33話④プロットポイント①

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 さて、無事に屋敷から出られた俺は、愛馬と馬車、状態異常魔法の杖とアイテム鞄を返してもらえた。
 目指す場所は【亜人系モンスター】が多数出現するA級ダンジョン【コンドミニアム旧市街地】だ。

 古びた岩の街の中に【ゴブリン小鬼】【オーク猪人間】【ワーウルフ狼人間】【ミノタウロス雄牛人間】【オーガ大鬼】と呼ばれるモンスターが多数生息、いや、人間のように生活している。
 ……と言っても、人間らしい秩序はまったくない。看守のいない牢獄のような場所だ。
 殺人、略奪が当たり前のように起こる、ダンジョンと同じ無法地帯だ。

「リラ、さっきは——」
「喋るな、殺すわよ」

 駄目だ。猫が虎に豹変している。
 御者席の隣に座るリラの両目が血走っている。
 ただ、ありがとうとお礼を言いたいだけなのに、それさえ許されない。
 もちろん理由は分かっている。協力してくれるだけで死ぬほど感謝している。

「いい。逃げたりしたら両足を固結びするからね」
「はい……」

 逃げないように脅してきたけど、物理的に無理だと思う。
 もちろん足から骨を抜き取れば出来ない事はない。
 そして、恐ろしい事にリラなら骨を抜いて、結ぶ事は可能なのだ。
 つまり、逃げたら本当にやられてしまうという事だ。

 でも、脅さなくても逃げたりしない。
 大切な妹が人質に取られているのに逃げ出す兄貴はいない。
 亜人モンスターを眠らせて、毒にして、瀕死になったところを剣でブスリだ。
 これなら安全にLVを上げられる。

 妹が上級職の大戦士になったのは、LV35の時だった。
 残り12なら、死に物狂いで頑張れば、一ヶ月で上級職になれる可能性はある。
 僧侶の上級職になれさえすれば、呪いは解けたも同然だ。

「どうどう。よく頑張ったな。しっかり休むんだぞ」
『ヒィヒヒン!』

 目的地のすぐ近くまでやってきた。手綱を引いて、愛馬を止まらせた。
 時間がないので愛馬を何度も回復して、ほぼ休ませずに走らせた。
 コイツには苦労ばかりかけている。
 家に無事に帰れたら、家庭菜園で美味しいニンジンを育てて腹一杯食べさせたい。

「ほら、着いたんならさっさと寝るわよ。明日は早いんだから」
「はい……」

 御者席の後ろのカーテンを開けて、リラが荷台の中に入っていった。
 空はとっくに暗くなっている。確かに寝る時間だ。
 でも、荷台に行く事は許されない。
 死にたくないなら、このままここに座って寝るしかない。

「ちょっと! いつまでそこに座ってんのよ! さっさと中に入りなさい!」
「はい! すみません!」

 ウトウト眠りそうになっていたら、急にカーテンが開いて、リラが怒鳴ってきた。
 入っていいらしいけど、入りたくない。何されるか分からない。

「し、失礼します……」

 だけど、入らないという選択肢はない。
 カーテンを左手で払い退けて、四つん這いの体勢で荷台の中に入った。

「まったくぅー、早く寝るわよ」
「はい、すみません……」

 怒っているけど、それ以上に眠いみたいだ。ゴロンとリラが寝転んだ。

 もしかして、一緒に寝たいとか。
 ……とか勘違いして手を出したら、両手固結びされてしまう。
 逃げないように監視するなら、外よりも中の方が都合がいいだけだ。

「ふぅー……」

 リラが荷台の真ん中で寝ているので、アイテム鞄から毛布を出して、角に座って目蓋を閉じた。
 明日からのLV上げに備えて、しっかり休まないといけない。

「はぅっ!」

 そう思って寝ようとしていたのに、身体の左側にピタッと柔らかいものが当たった。
 慌てて目を開けると、隣にリラが寄りかかっていた。

「なに、一人で寝てんのよ? 寝るなら二人ででしょう」

 えええええええええっ。どういう事。
 なんか、ちょっと怒ってるんですけど。

「ほら、寒いんだから真ん中で寝るわよ」
「えっ、ちょっ、えっ、ちょっ⁉︎」

 俺が馬鹿だから分かんないだけなのかもしれないけど、リラが左腕を掴んで引っ張っていく。
 これがどういう意味なのか教えて欲しいけど、付いて行けば教えてもらえる。
 だったら付いて行くしかないと思う。

「ほら、二人で寝た方があったかいでしょ?」
「そ、そうですね」

 荷台の真ん中に二人で毛布に入って寝転ぶと、リラがピタッと抱き着いてきた。
 背中に柔らかいものが二つ当たっている。おっぱいだ。
 おっぱい以外に顔やお腹や股間が、俺の首筋や背中や尻に当たっている。
 こんな事されたら、反応してはいけないものが反応してしまう。

 だけど、これは罠だ。我慢できずに手を出した瞬間に恐ろしい目に遭う。
 そうに決まっている。

「はぁはぁ、もう、我慢できない……しちゃうからね」
「うわっ⁉︎」

 何もしないで我慢していると、リラの息遣いが荒くなってきた。
 そして、急に起き上がって、俺を床に押し倒して馬乗りになった。
 これ絶対に殺されるパターンのやつだ。
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