15 / 98
第1章
第15話⑥ミッドポイント
しおりを挟む
「チッ。やっぱり嘘吐いてやがったか。で? 本当は何処にいる。次はその手に隠してる汚いもん潰すぞ」
駄目だ。本当の事言わないと潰される。
でも、本当の事言ったら殺される。
どっちにしても終わる。だったら本当と嘘を混ぜるしかない。
とにかく時間稼ぎして助かる道を探すしかない。
「A級ダンジョンに置いてきました! だって、一週間経っても出てこないなら、死んだって——」
問答無用で聖剣がグシャと踏み潰された。
「ゔぎゃあああ!」
「黙れ。それ以上喋ると殺すぞ」
「ぅぅぅ……!」
痛みでのたうち回りたいのに叫んだら殺される。静かに我慢するしかない。
「どうする、ヨハネ? フィリアの奴、帰ったら重大発表があるとか言ってたよな。それと関係あると思うか」
「さあ。それはそこのゴミに聞いた方が早いんじゃないですか」
「チッ。おい、知ってるなら喋れ。何も知らないなら死ね」
相変わらず酷い扱いだ。人間扱いじゃなくて、人間の姿をした物扱いだ。
妹ダンジョンで大人の男になったから、立ち上がって殴りかかりたいけど……
殴りかかっても一発も当てられずに、本当にゴミ屑みたいに殺されるだけだ。
何としても半殺し放置ぐらいで許してもらうしかない。
「ぅぅぅ……一人でボス倒して、【特別職】になると言ってました。だから、『付いて来るな』と言われて外で待っていたんです。でも、一週間経っても出てこ——」
「それは聞いた。もう黙れ」
人が痛みを堪えて喋っているのに、喋れとか黙れとか何様だよ。脳筋武闘家のくせに。
21歳の大人なんだから、その辺にいる男捕まえてさっさと結婚しろよ。
その無駄なデカ乳、旦那と赤ん坊に与えてろよ。
……とか言いたい。言いたいけど、言ったら死ぬ。
二人が帰るまで、無様な姿で痛みを我慢し続けるしかない。
リラに与えられた聖剣の痛みは、妹ダンジョンでたっぷり回復しよう。
「仕方ねえな。迎えに行ってやるか。おい、ゴミ。さっさと服着てダンジョンまで案内しろ。まさか場所忘れたとか言わねえよな?」
「もちろん覚えています!」
駄目だ。家から帰ってくれるのに、俺まで連れて帰ろうとしている。
もう俺の人生終わりだ。でも、今逆らったら今終わってしまう。
ここは大人しく従って、ダンジョンに着く前に逃げるしかない。
「だったら2分やる。それまでに馬車の運転席に座ってろ。遅れたら馬車で引き摺って行くからな。ほら、あと1分40秒しかないぞ」
「くぁぁぁ! ”ヒール〟!」
両足首と聖剣折られた状態で出来るか。
1分で何とか足だけでも治療する。
だけど、
「ぐべぇっ……!」
「なに回復してんだよ! ゴミ!」
「ごめぴぃ……!」
駄目だったみたいだ。脇腹に蹴りを速攻でブチ込まれた。
脇腹と背中がつって、もうこれ絶対に間に合わない。
それなのに追加の一蹴りが腹にブチ込まれた。
「ぐぅぅぅ……!」
ほらね。やっぱり間に合わなかった。
輪を作ったロープで首を縛られて、二人が乗ってきた馬車に引き摺られている。
何とか服を着る事だけは許してもらった。
『ブヒヒン! ブヒヒン!』
俺が世話している愛馬ならば、ゆっくり走ってくれる。
それなのに馬鹿馬が俺を絞め殺すつもりで走っている。
ダンジョンの場所を教えたから、もう俺は用済みだ。
いつ殺されても不思議じゃない。
遅かれ早かれこうなる日が来るのは分かっていた。
僧侶が重宝されるのは初心者パーティだけだ。
初心者は金が無いから回復薬が買えない。
だけど、中級パーティぐらいになると金に余裕が出てくる。
金だけじゃなくて、戦いにも余裕が出てくる。
戦闘で傷を負う回数が減ると、僧侶の出番はかなり少なくなる。
それなのに仲間というだけで分け前だけは平等に貰える。
ただ後ろに付いて来るだけの男……
それに自分達が命懸けで戦って得た金を渡すべきか……
「ぐぅぅぅ……!」
それがその答えだ。明らかに首を絞めるロープに殺意しか感じない。
きっとダンジョンに連れていって、妹がいない時は事故死に見せかけて俺を殺す。
いや、多分妹も俺を殺すつもりだったのだろう。【特別職】になったら俺は完全に用済みになる。
あのままダンジョンボスを倒していたら、きっと俺は妹に殺されていた。
重大発表とは、つまり俺の死だ。
「くっ、何としても生きてやる!」
殺されると分かっているなら、逃げるに決まっている。
首絞められながらも回復は出来る。
両足首と聖剣を回復したら、ロープを首から外して逃げてやる。
そして、妹の事は忘れて、何処かの小さな村でひっそりと暮らそう。
隠れて暮らす俺を探し出して殺すほど、奴らも暇じゃないと祈りつつ。
「ぐべぇっ……!」
何か知らんけど、回復しようとした途端にロープが凄い力で締め付けてきた。
理由は簡単だ。
「テメェー、回復すんなって言ったよな! 次やったら壁に吊るすぞ!」
「ご、ごめぴぃ……!」
馬車後方の小窓を乱暴に開けて、メスゴリラが死刑宣告してきた。
「はぁはぁ、はぁはぁ……!」
息が出来るって素晴らしい。首が折れる前にロープを緩めてくれた。
だけど、次やったら息の根止められる。
そして、脳筋メスゴリラに馬車の中から魔力を探知できるわけがない。
大魔導師ヨハネの仕業だ。あの女がメスゴリラに密告した。
氷のような無表情で俺に興味ないフリして、めちゃくちゃある。
回復するなら、あの氷女が寝ている時にやるしかない。
駄目だ。本当の事言わないと潰される。
でも、本当の事言ったら殺される。
どっちにしても終わる。だったら本当と嘘を混ぜるしかない。
とにかく時間稼ぎして助かる道を探すしかない。
「A級ダンジョンに置いてきました! だって、一週間経っても出てこないなら、死んだって——」
問答無用で聖剣がグシャと踏み潰された。
「ゔぎゃあああ!」
「黙れ。それ以上喋ると殺すぞ」
「ぅぅぅ……!」
痛みでのたうち回りたいのに叫んだら殺される。静かに我慢するしかない。
「どうする、ヨハネ? フィリアの奴、帰ったら重大発表があるとか言ってたよな。それと関係あると思うか」
「さあ。それはそこのゴミに聞いた方が早いんじゃないですか」
「チッ。おい、知ってるなら喋れ。何も知らないなら死ね」
相変わらず酷い扱いだ。人間扱いじゃなくて、人間の姿をした物扱いだ。
妹ダンジョンで大人の男になったから、立ち上がって殴りかかりたいけど……
殴りかかっても一発も当てられずに、本当にゴミ屑みたいに殺されるだけだ。
何としても半殺し放置ぐらいで許してもらうしかない。
「ぅぅぅ……一人でボス倒して、【特別職】になると言ってました。だから、『付いて来るな』と言われて外で待っていたんです。でも、一週間経っても出てこ——」
「それは聞いた。もう黙れ」
人が痛みを堪えて喋っているのに、喋れとか黙れとか何様だよ。脳筋武闘家のくせに。
21歳の大人なんだから、その辺にいる男捕まえてさっさと結婚しろよ。
その無駄なデカ乳、旦那と赤ん坊に与えてろよ。
……とか言いたい。言いたいけど、言ったら死ぬ。
二人が帰るまで、無様な姿で痛みを我慢し続けるしかない。
リラに与えられた聖剣の痛みは、妹ダンジョンでたっぷり回復しよう。
「仕方ねえな。迎えに行ってやるか。おい、ゴミ。さっさと服着てダンジョンまで案内しろ。まさか場所忘れたとか言わねえよな?」
「もちろん覚えています!」
駄目だ。家から帰ってくれるのに、俺まで連れて帰ろうとしている。
もう俺の人生終わりだ。でも、今逆らったら今終わってしまう。
ここは大人しく従って、ダンジョンに着く前に逃げるしかない。
「だったら2分やる。それまでに馬車の運転席に座ってろ。遅れたら馬車で引き摺って行くからな。ほら、あと1分40秒しかないぞ」
「くぁぁぁ! ”ヒール〟!」
両足首と聖剣折られた状態で出来るか。
1分で何とか足だけでも治療する。
だけど、
「ぐべぇっ……!」
「なに回復してんだよ! ゴミ!」
「ごめぴぃ……!」
駄目だったみたいだ。脇腹に蹴りを速攻でブチ込まれた。
脇腹と背中がつって、もうこれ絶対に間に合わない。
それなのに追加の一蹴りが腹にブチ込まれた。
「ぐぅぅぅ……!」
ほらね。やっぱり間に合わなかった。
輪を作ったロープで首を縛られて、二人が乗ってきた馬車に引き摺られている。
何とか服を着る事だけは許してもらった。
『ブヒヒン! ブヒヒン!』
俺が世話している愛馬ならば、ゆっくり走ってくれる。
それなのに馬鹿馬が俺を絞め殺すつもりで走っている。
ダンジョンの場所を教えたから、もう俺は用済みだ。
いつ殺されても不思議じゃない。
遅かれ早かれこうなる日が来るのは分かっていた。
僧侶が重宝されるのは初心者パーティだけだ。
初心者は金が無いから回復薬が買えない。
だけど、中級パーティぐらいになると金に余裕が出てくる。
金だけじゃなくて、戦いにも余裕が出てくる。
戦闘で傷を負う回数が減ると、僧侶の出番はかなり少なくなる。
それなのに仲間というだけで分け前だけは平等に貰える。
ただ後ろに付いて来るだけの男……
それに自分達が命懸けで戦って得た金を渡すべきか……
「ぐぅぅぅ……!」
それがその答えだ。明らかに首を絞めるロープに殺意しか感じない。
きっとダンジョンに連れていって、妹がいない時は事故死に見せかけて俺を殺す。
いや、多分妹も俺を殺すつもりだったのだろう。【特別職】になったら俺は完全に用済みになる。
あのままダンジョンボスを倒していたら、きっと俺は妹に殺されていた。
重大発表とは、つまり俺の死だ。
「くっ、何としても生きてやる!」
殺されると分かっているなら、逃げるに決まっている。
首絞められながらも回復は出来る。
両足首と聖剣を回復したら、ロープを首から外して逃げてやる。
そして、妹の事は忘れて、何処かの小さな村でひっそりと暮らそう。
隠れて暮らす俺を探し出して殺すほど、奴らも暇じゃないと祈りつつ。
「ぐべぇっ……!」
何か知らんけど、回復しようとした途端にロープが凄い力で締め付けてきた。
理由は簡単だ。
「テメェー、回復すんなって言ったよな! 次やったら壁に吊るすぞ!」
「ご、ごめぴぃ……!」
馬車後方の小窓を乱暴に開けて、メスゴリラが死刑宣告してきた。
「はぁはぁ、はぁはぁ……!」
息が出来るって素晴らしい。首が折れる前にロープを緩めてくれた。
だけど、次やったら息の根止められる。
そして、脳筋メスゴリラに馬車の中から魔力を探知できるわけがない。
大魔導師ヨハネの仕業だ。あの女がメスゴリラに密告した。
氷のような無表情で俺に興味ないフリして、めちゃくちゃある。
回復するなら、あの氷女が寝ている時にやるしかない。
12
お気に入りに追加
259
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
スケートリンクでバイトしてたら大惨事を目撃した件
フルーツパフェ
大衆娯楽
比較的気温の高い今年もようやく冬らしい気候になりました。
寒くなって本格的になるのがスケートリンク場。
プロもアマチュアも関係なしに氷上を滑る女の子達ですが、なぜかスカートを履いた女の子が多い?
そんな格好していたら転んだ時に大変・・・・・・ほら、言わんこっちゃない!
スケートリンクでアルバイトをする男性の些細な日常コメディです。
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました
フルーツパフェ
大衆娯楽
とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。
曰く、全校生徒はパンツを履くこと。
生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?
史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる