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第9話
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「ネロ、ネロ、寝ろ……はっ! そういうことか!」
あれこれと思案した結果、騎士団長イッパツが最後に伝えたかったことが分かった。
「父上、イッパツがどうして無抵抗で殺されたのか分かりました!」
「なに⁉︎ ほ、ほぉー、そうか。儂も今分かったところだ。答え合わせといこうか。申してみよ」
私が分からぬと思っていたのか父上が大きく驚いた。
だけど、この答えで間違いない。
父上に促されて答えを言ってみた。
「イッパツはアリシアに私と寝るように命を懸けて懇願したのです。ですが、結果は最悪のものになりました。無抵抗で懇願するイッパツをアリシアは容赦なく惨殺したのです」
「……ほぉー、ほぼ正解といってもよいな。続きを申してみよ」
玉座に座る父上が肘掛けに左肘をつけ、左頬に手をついた体勢で鋭い目つきで聞いてきた。
さすがは父上だ。おそらくこの先も言わなくても分かっているのだろう。
「はい、父上。イッパツは死の間際でようやく願いが聞き届けてもらえないと悟り、私に願いを託したのです。『王子よ、アリシアと寝ろ』と——ですから、父上。私は行かなければなりません。元はと言えば国宝を盗まれたのは私の落ち度。国宝は私が取り返すのが道理です。アリシアは私が捕まえます」
「ふむ………………」
忠臣の命を賭した願いを無視するわけにはいかない。
王子の前に一人の男として、イッパツの無念の想いを叶えてみせると父上に誓った。
「駄目だ、立場を考えよ」
それなのに父上が難しい顔で長く考えてからハッキリ言い放った。
「ぐっ、どうしてですか!」
「お前は第一王子、いずれは儂の跡を継ぐ者だ。騎士団長ならば仕事で死ぬこともあるだろうが、お前は許されない。それが王族に生まれた者の義務と責任じゃ。分かったなら部屋に戻っておれ」
何だそれは。何だそれは! そんな巫山戯た理由で引き下がれるわけがない。
「父上、分かりません! 分かりたくもない!」
「何だその口の利き方は? それが父親に向かって言う言葉か! お前は黙って部屋に戻れと言っておるのだ! おい、お前!」
「はっ! 王様!」
「そこの馬鹿息子を部屋に閉じ込めておけ!」
「かしこまりました! ささ、王子! お部屋に戻りましょう!」
「触るな!」
「あうっ!」
父上に命じられて兵士が部屋に連れて行こうとしたので、顔面を力一杯ブン殴った。
床に倒れた兵士は見ずに父上を睨みつけて、今度は私がハッキリと言い放った。
「父上! 私は王族に生まれたことが今、死にたいほど恥ずかしい!」
「貴・様・ああああ! 自分が何を言っておるのか分かっておるのか! お前が王子じゃなければ、今頃は墓の中だ! その首が繋がって喋っていられるのも王子だからだ! それすらも分からずに恥ずかしいだと! ならば言ってやろう、お前が王子で儂は死にたいほど恥ずかしいとな!」
あまりの怒りにハラワタが煮えくり返っている。それは父上も同じだろうが、私の方が上だ。
まさかここまで話が通じないとは思わなかった。頭がイカれている。
「くそぉ、親父だけじゃなくて、息子まで殴りやがって……」
「おい、お前! いつまで倒れておる! さっさと部屋に連れて行け!」
「も、申し訳ありません、すぐに! ささ、王子行きましょう!」
「……」
ならば仕方ない。イカれ父上を相手にする時間はない。
立ち上がった兵士に逆らわずに素直に従って謁見の間を出た。
こうなったら王族しかその存在を知らない『裏国宝』を使うしかない。
それを使って王宮を脱出し、アリシアを捕まえて寝る。
国宝を取り戻し、失った名誉と誇りを取り戻してみせよう。
あれこれと思案した結果、騎士団長イッパツが最後に伝えたかったことが分かった。
「父上、イッパツがどうして無抵抗で殺されたのか分かりました!」
「なに⁉︎ ほ、ほぉー、そうか。儂も今分かったところだ。答え合わせといこうか。申してみよ」
私が分からぬと思っていたのか父上が大きく驚いた。
だけど、この答えで間違いない。
父上に促されて答えを言ってみた。
「イッパツはアリシアに私と寝るように命を懸けて懇願したのです。ですが、結果は最悪のものになりました。無抵抗で懇願するイッパツをアリシアは容赦なく惨殺したのです」
「……ほぉー、ほぼ正解といってもよいな。続きを申してみよ」
玉座に座る父上が肘掛けに左肘をつけ、左頬に手をついた体勢で鋭い目つきで聞いてきた。
さすがは父上だ。おそらくこの先も言わなくても分かっているのだろう。
「はい、父上。イッパツは死の間際でようやく願いが聞き届けてもらえないと悟り、私に願いを託したのです。『王子よ、アリシアと寝ろ』と——ですから、父上。私は行かなければなりません。元はと言えば国宝を盗まれたのは私の落ち度。国宝は私が取り返すのが道理です。アリシアは私が捕まえます」
「ふむ………………」
忠臣の命を賭した願いを無視するわけにはいかない。
王子の前に一人の男として、イッパツの無念の想いを叶えてみせると父上に誓った。
「駄目だ、立場を考えよ」
それなのに父上が難しい顔で長く考えてからハッキリ言い放った。
「ぐっ、どうしてですか!」
「お前は第一王子、いずれは儂の跡を継ぐ者だ。騎士団長ならば仕事で死ぬこともあるだろうが、お前は許されない。それが王族に生まれた者の義務と責任じゃ。分かったなら部屋に戻っておれ」
何だそれは。何だそれは! そんな巫山戯た理由で引き下がれるわけがない。
「父上、分かりません! 分かりたくもない!」
「何だその口の利き方は? それが父親に向かって言う言葉か! お前は黙って部屋に戻れと言っておるのだ! おい、お前!」
「はっ! 王様!」
「そこの馬鹿息子を部屋に閉じ込めておけ!」
「かしこまりました! ささ、王子! お部屋に戻りましょう!」
「触るな!」
「あうっ!」
父上に命じられて兵士が部屋に連れて行こうとしたので、顔面を力一杯ブン殴った。
床に倒れた兵士は見ずに父上を睨みつけて、今度は私がハッキリと言い放った。
「父上! 私は王族に生まれたことが今、死にたいほど恥ずかしい!」
「貴・様・ああああ! 自分が何を言っておるのか分かっておるのか! お前が王子じゃなければ、今頃は墓の中だ! その首が繋がって喋っていられるのも王子だからだ! それすらも分からずに恥ずかしいだと! ならば言ってやろう、お前が王子で儂は死にたいほど恥ずかしいとな!」
あまりの怒りにハラワタが煮えくり返っている。それは父上も同じだろうが、私の方が上だ。
まさかここまで話が通じないとは思わなかった。頭がイカれている。
「くそぉ、親父だけじゃなくて、息子まで殴りやがって……」
「おい、お前! いつまで倒れておる! さっさと部屋に連れて行け!」
「も、申し訳ありません、すぐに! ささ、王子行きましょう!」
「……」
ならば仕方ない。イカれ父上を相手にする時間はない。
立ち上がった兵士に逆らわずに素直に従って謁見の間を出た。
こうなったら王族しかその存在を知らない『裏国宝』を使うしかない。
それを使って王宮を脱出し、アリシアを捕まえて寝る。
国宝を取り戻し、失った名誉と誇りを取り戻してみせよう。
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