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一匹目

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「なるほど」

 一冊の本を読み終えると、僕はさっそく調査の準備を開始した。
 目標は100匹だ!
 黄色いリュックサックに色鉛筆とスケッチブックとノートを入れる。
 水筒とタオルも必要かな?

「あら、ケンちゃん? どこか行くの?」
「うん! 猫の調査に行くんだよ!」
「あら、そうなの? でもあんまり遅くならないようにね。四時までに帰って来るのよ」
「うん! 分かってる。行ってきま~す」
「はい、行ってらっしゃい。車に気をつけるのよ」
「はぁ~い!」

 新しい優しいお母さんに手を振って、僕は新しい家を出た。
 近所に住んでいる野良猫さん達を調査しに行くのだ。

「えーっと、黒猫さんと白黒猫さんと……?」

 さっきまで読んでいた野良猫図鑑の内容を思い出そうとするけど思い出せない。
 日本に古くから住んでいる野生の猫さんは実は四種類だけらしい。
 黒猫さんと白黒猫さんまでは思い出したんだけど、残りの二種類が思い出せない。
 まあ、あとで調べればいいよね。

「ネコさん、ネコさん、どぉ~こかな?」

 いつもは道を歩いていたら、すぐに見つけられるのに今日は全然いない。
 僕に見つからないように、みんな隠れているのかな?

 塀の上にも屋根の上にも車の下にもいない。
 う~~~ん、誰かの家でご飯でも食べているのかなぁ~?

 野良猫図鑑にはネコさんの身体の色ごとに性格が違うと書かれていた。
 白猫さんは耳が聞こえにくい病気を持っている事があるから、すごく臆病な性格だって書いてあった。
 きっと車が通るような道は危ないから、いないのかもしれない。
 安全な場所を探した方がいいかも。

「よぉ~~し! 公園に行こう!」

 僕は目的地を変更した。
 近くに大きな団地があるから、その中にある公園を調べれば一匹ぐらいは見つかるぞ。

「ルンルンルン~~♪」

 いつもの道も探しものをしながら進むと凄くワクワクする。
 まるで、いつもと違う道みたいだ。

「あっ、見つけた! 黒猫さんだぁ!」

 団地の中の狭い通路を進んでいると前から黒猫さんがやって来た。正真正銘の野良猫さんだ。

「………」

 う~~~ん、この黒猫さんはクールで無口だ。
 ニャーニャー鳴いてくれないし、近寄って来ない。

 黒猫さんが目の前を通ると不幸な事が起こるという噂があるけど、あれは嘘らしい。
 図書館で借りた野良猫図鑑には黒猫さんは幸運の猫さんと書いてあった。
 やっぱり噂話なんか信じないで、自分でキチンと調べないと本当の事は分からないよね。
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