22 / 26
第22話 道重対住民二人
しおりを挟む
♦︎道重・視点♦︎
「はぁ、はぁ……」
気分が最悪なのは、きっと上手くいかないからだ。
車の外に出ると、走ってくる住民二人が見えた。
ハンドガンは撃てない。
出番がなかった刀の出番だが、永遠に出番は来なくても良かった。
左手で鞘を握り締めると、右手で柄を掴んで、鞘から刀を抜いた。
邪魔な鞘を地面に捨てると、両手で刀を握った。
実戦的な戦闘訓練なら親父に受けさせられた。
「くたばれ!」
金髪の白人が左手に持った手斧を振り下ろしてきた。
後ろに躱して、振り回された手斧も続けて躱すと刀を振り上げた。
心を落ち着かせると、男の左肩に刀を力強く振り下ろした。
「ずがああ!」
左肩から右腹に刃が通り抜けた。続けて胴体を横一文字に斬り裂いた。
死んだか確認する暇はない。もう一人の住民が目の前に迫っている。
黒髪の白人がライフルの銃身を右手に持って、振り下ろそうとしている。
刀の切っ先を喉に向けると素早く前進した。
「ごぽっ、ぐぽぉ……!」
切っ先が首骨にぶつかり停止した。刀を引き抜き、腹を真横に斬り裂いた。
手足を斬っても致命傷にはならない。臓器を一つでも破壊できれば、いずれは死ぬ。
地面に落ちている黒鞘を拾うと、車に走った。追加の住民はもう要らない。
「降りろ。get、out」
「no!」
「くっ……!」
剛田の車に行くと後部座席の扉を開けて、ヴェロニカに降りるように言った。
まさか拒否されるとは思わなかったが、無理矢理に降ろしている時間はない。
運転席に座るとエンジンをかけた。剛田を乗せて帰る。拒否されたら置いて行くしかない。
「剛田、最終便だ! 乗らないと徒歩で帰ることになるぞ!」
剛田が戦っていた住民を車で轢くと、強めに言った。
このまま戦っても、集団に袋叩きに遭って死ぬだけだ。
「……なるほど、時間切れらしい。出発してくれ」
周囲を見回すと、後部座席に剛田が素早く乗り込んだ。
暗いから戦いにくいのか、弱い相手を殴る趣味がないのだろう。
それか腹が減ったかだ。後ろに積んでいる料理を食べ始めた。
広場を脱出すると、暗い一本道を走っていく。スピードは出さない。
事故を起こしたら、道路沿いにいる見張り達から襲われてしまう。
「さっきの話どう思う? 撫子達が空港にいると思うか?」
「さあな。確かめないと分からないが、確かめれば嘘なのか分かる」
骨付き肉を食べている剛田に聞いた。確かに色々考えるよりも確かめた方が早い。
どちらかと言うと、本当の場合にどうするべきなのか考えたい。
本当に子供二人が死んでいるのなら、死んだ理由を聞きたい。
「……」
どこから失敗したのか分からないが、明らかに失敗した。
犠牲者は出したくないと言って、目標以上の住民を殺してしまった。
犬石も殺してしまった。桃山と猿橋は住民達に殺されるだろう。
永鳥がどうなったかは聞くことも出来なかった。
だけど、後悔と懺悔の感情が湧いてこない。
感じる感情は疲労感と達成感、生きて日本に帰れる安心感だけだ。
「道重、ここで車を止めろ。ここからは歩きだ」
「……どうしてだ?」
もうすぐ空港に着く。剛田が車を止めるように言ってきた。
ヴェロニカなら車から降ろせばいいが、そのつもりはないようだ。
理由を聞いて、車を止めた。
「子供二人を返す約束をした。まだ返していない。ヴェロニカには車で待っててもらう」
「本当の子供じゃないんだ。世話を任されていただけなら、そこまでする必要はない」
「男の約束だ。死んでいたとしても、死体を返すのが道理だ」
剛田が理由を言ってきたが、お前の気持ちではなく、ヴェロニカの気持ちを聞いてほしい。
でも、命懸けで守ろうとしていた。大事なのは決まっている。
「分かった。そうしよう」
ここで無駄な議論をしている暇はない。夜なら撫子達もホテルに帰っているはずだ。
剛田がヴェロニカに状況を説明すると、拘束せずに車から降りた。
せっかくの料理だから、待っている間に好きなだけ食べてもらうそうだ。
「剛田はこれからどうするつもりだ? 俺は残りは空港でゆっくりしたい」
「そうだな。まだ考えていない」
刀とランプを持って、暗い道を歩いていく。
住民と戦うとは言わずに、考えるだけマシかもしれない。
二重扉の前まで行くと扉の前に立った。ジッと待っていると扉が左右に動き出した。
車の時よりも扉が開く時間が遅かった。開けていいのか迷ったのだろう。
「まずは空港にいるか聞くとするか」
「ああ、軍服の人間に聞けば分かるはずだ」
扉を通り抜けると、撫子達が空港にいるのか調べることにした。
旅客機やヘリコプター、車が並んでいる車庫にいた白人の男に聞いた。
すぐに建物に付いてある電話で、上の人間に連絡を取ってくれた。
「その二人なら空港にいます。子供二人の冷凍保存を頼んだ後に、海岸に釣りに向かったそうです」
「ほー、子供二人死んだ後に釣りとは、結構な頭のイカれ具合だな」
男の報告に剛田は軽く笑みを浮かべると、俺の方を向いて言った。確かにイカれている。
撫子は俺の為に子供を殺すと言っていたから、馬鹿なことをした可能性がある。
「それで今はどこにいるんですか? ホテルですか?」
「そうだと思います。ですが、その前に検査をお願いします。子供の身体から毒物反応がありました」
「毒物……それで死んだんですか?」
撫子達の居場所を聞くと、男は答えた後に検査をお願いしてきた。
子供の死因は毒みたいだが、毒物は島の安全を守る為に持ち込めない。
身体に刺し傷や首を絞められた痕がないなら、撫子が殺した可能性は低い。
「ええ。口内と喉の炎症が酷いので、口から摂取したと思われます。島に毒草が多少は群生しているので、それを使ったと思われています」
「なるほどな。草食べて死ねば毒草だと分かるだろうからな。知識が無くてもいけるか」
男の情報通りなら、子供が自分で毒を飲んだ可能性があるそうだ。
撫子が子供達を助けようと、空港の病院に連れてきたと考えれば、おかしな行動も理解できる。
撫子が殺してない可能性があると分かって、少し安心した。
「剛田、話は後にしよう。死んだら話は出来ない。検査はどこでやるんですか?」
「それなら連絡しました。すぐに来るので、このままお待ちください」
男に聞くと車庫で待つように言われた。
待っていると白い救護車がやって来た。車に乗り込むと病院に連れて行かれた。
血と唾液を取られると、検査結果を待つことになった。
「はぁ、はぁ……」
気分が最悪なのは、きっと上手くいかないからだ。
車の外に出ると、走ってくる住民二人が見えた。
ハンドガンは撃てない。
出番がなかった刀の出番だが、永遠に出番は来なくても良かった。
左手で鞘を握り締めると、右手で柄を掴んで、鞘から刀を抜いた。
邪魔な鞘を地面に捨てると、両手で刀を握った。
実戦的な戦闘訓練なら親父に受けさせられた。
「くたばれ!」
金髪の白人が左手に持った手斧を振り下ろしてきた。
後ろに躱して、振り回された手斧も続けて躱すと刀を振り上げた。
心を落ち着かせると、男の左肩に刀を力強く振り下ろした。
「ずがああ!」
左肩から右腹に刃が通り抜けた。続けて胴体を横一文字に斬り裂いた。
死んだか確認する暇はない。もう一人の住民が目の前に迫っている。
黒髪の白人がライフルの銃身を右手に持って、振り下ろそうとしている。
刀の切っ先を喉に向けると素早く前進した。
「ごぽっ、ぐぽぉ……!」
切っ先が首骨にぶつかり停止した。刀を引き抜き、腹を真横に斬り裂いた。
手足を斬っても致命傷にはならない。臓器を一つでも破壊できれば、いずれは死ぬ。
地面に落ちている黒鞘を拾うと、車に走った。追加の住民はもう要らない。
「降りろ。get、out」
「no!」
「くっ……!」
剛田の車に行くと後部座席の扉を開けて、ヴェロニカに降りるように言った。
まさか拒否されるとは思わなかったが、無理矢理に降ろしている時間はない。
運転席に座るとエンジンをかけた。剛田を乗せて帰る。拒否されたら置いて行くしかない。
「剛田、最終便だ! 乗らないと徒歩で帰ることになるぞ!」
剛田が戦っていた住民を車で轢くと、強めに言った。
このまま戦っても、集団に袋叩きに遭って死ぬだけだ。
「……なるほど、時間切れらしい。出発してくれ」
周囲を見回すと、後部座席に剛田が素早く乗り込んだ。
暗いから戦いにくいのか、弱い相手を殴る趣味がないのだろう。
それか腹が減ったかだ。後ろに積んでいる料理を食べ始めた。
広場を脱出すると、暗い一本道を走っていく。スピードは出さない。
事故を起こしたら、道路沿いにいる見張り達から襲われてしまう。
「さっきの話どう思う? 撫子達が空港にいると思うか?」
「さあな。確かめないと分からないが、確かめれば嘘なのか分かる」
骨付き肉を食べている剛田に聞いた。確かに色々考えるよりも確かめた方が早い。
どちらかと言うと、本当の場合にどうするべきなのか考えたい。
本当に子供二人が死んでいるのなら、死んだ理由を聞きたい。
「……」
どこから失敗したのか分からないが、明らかに失敗した。
犠牲者は出したくないと言って、目標以上の住民を殺してしまった。
犬石も殺してしまった。桃山と猿橋は住民達に殺されるだろう。
永鳥がどうなったかは聞くことも出来なかった。
だけど、後悔と懺悔の感情が湧いてこない。
感じる感情は疲労感と達成感、生きて日本に帰れる安心感だけだ。
「道重、ここで車を止めろ。ここからは歩きだ」
「……どうしてだ?」
もうすぐ空港に着く。剛田が車を止めるように言ってきた。
ヴェロニカなら車から降ろせばいいが、そのつもりはないようだ。
理由を聞いて、車を止めた。
「子供二人を返す約束をした。まだ返していない。ヴェロニカには車で待っててもらう」
「本当の子供じゃないんだ。世話を任されていただけなら、そこまでする必要はない」
「男の約束だ。死んでいたとしても、死体を返すのが道理だ」
剛田が理由を言ってきたが、お前の気持ちではなく、ヴェロニカの気持ちを聞いてほしい。
でも、命懸けで守ろうとしていた。大事なのは決まっている。
「分かった。そうしよう」
ここで無駄な議論をしている暇はない。夜なら撫子達もホテルに帰っているはずだ。
剛田がヴェロニカに状況を説明すると、拘束せずに車から降りた。
せっかくの料理だから、待っている間に好きなだけ食べてもらうそうだ。
「剛田はこれからどうするつもりだ? 俺は残りは空港でゆっくりしたい」
「そうだな。まだ考えていない」
刀とランプを持って、暗い道を歩いていく。
住民と戦うとは言わずに、考えるだけマシかもしれない。
二重扉の前まで行くと扉の前に立った。ジッと待っていると扉が左右に動き出した。
車の時よりも扉が開く時間が遅かった。開けていいのか迷ったのだろう。
「まずは空港にいるか聞くとするか」
「ああ、軍服の人間に聞けば分かるはずだ」
扉を通り抜けると、撫子達が空港にいるのか調べることにした。
旅客機やヘリコプター、車が並んでいる車庫にいた白人の男に聞いた。
すぐに建物に付いてある電話で、上の人間に連絡を取ってくれた。
「その二人なら空港にいます。子供二人の冷凍保存を頼んだ後に、海岸に釣りに向かったそうです」
「ほー、子供二人死んだ後に釣りとは、結構な頭のイカれ具合だな」
男の報告に剛田は軽く笑みを浮かべると、俺の方を向いて言った。確かにイカれている。
撫子は俺の為に子供を殺すと言っていたから、馬鹿なことをした可能性がある。
「それで今はどこにいるんですか? ホテルですか?」
「そうだと思います。ですが、その前に検査をお願いします。子供の身体から毒物反応がありました」
「毒物……それで死んだんですか?」
撫子達の居場所を聞くと、男は答えた後に検査をお願いしてきた。
子供の死因は毒みたいだが、毒物は島の安全を守る為に持ち込めない。
身体に刺し傷や首を絞められた痕がないなら、撫子が殺した可能性は低い。
「ええ。口内と喉の炎症が酷いので、口から摂取したと思われます。島に毒草が多少は群生しているので、それを使ったと思われています」
「なるほどな。草食べて死ねば毒草だと分かるだろうからな。知識が無くてもいけるか」
男の情報通りなら、子供が自分で毒を飲んだ可能性があるそうだ。
撫子が子供達を助けようと、空港の病院に連れてきたと考えれば、おかしな行動も理解できる。
撫子が殺してない可能性があると分かって、少し安心した。
「剛田、話は後にしよう。死んだら話は出来ない。検査はどこでやるんですか?」
「それなら連絡しました。すぐに来るので、このままお待ちください」
男に聞くと車庫で待つように言われた。
待っていると白い救護車がやって来た。車に乗り込むと病院に連れて行かれた。
血と唾液を取られると、検査結果を待つことになった。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
JOLENEジョリーン・鬼屋は人を許さない 『こわい』です。気を緩めると巻き込まれます。
尾駮アスマ(オブチアスマ おぶちあすま)
ホラー
ホラー・ミステリー+ファンタジー作品です。残酷描写ありです。苦手な方は御注意ください。
完全フィクション作品です。
実在する個人・団体等とは一切関係ありません。
あらすじ
趣味で怪談を集めていた主人公は、ある取材で怪しい物件での出来事を知る。
そして、その建物について探り始める。
怪異と共にその物件は関係者を追ってくる。
物件は周囲の人間たちを巻き込み始め
街を揺らし、やがて大きな事件に発展していく・・・
事態を解決すべく「祭師」の一族が怨霊悪魔と対決することになる。
読みやすいように、わざと行間を開けて執筆しています。
もしよければお気に入り登録・投票・感想など、よろしくお願いいたします。
大変励みになります。
ありがとうございます。
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる