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第8話 撫子との喧嘩
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♦︎道重・視点♦︎
「……来たな」
四分程待っていると、十字路の方から車がゆっくりやって来た。
俺達に気づいたのか停止した。刀を持った左手を大きく振って、俺だと主張する。
伝わったのか、ゆっくり車が向かってきた。
「go」
車が三メートル程の距離で停止した。運転席には緊張した顔の撫子が見える。
三人に歩くように言うと、撫子に後部座席の扉のロックを外すように伝えた。
「you、you、in」
ロックが外されると扉を開けて、子供二人を指差して、中に入るように言った。
二人が不安そうな顔で母親の顔を見ると「XxX」と母親が言った。
二人が大人しく車の中に入っていく。
「歩、この人達は何? 何で殺さないの?」
「この三人は殺さない。子供を人質に、母親に男がいる場所に案内させる」
「えっ? そんなの危ないよ! お願いだからやめて!」
俺が何を考えているか分からない、撫子の不安そうな声と戸惑いの表情から伝わってくる。
殺さない理由を簡単に説明すると、母親の腕を掴んで助手側の扉に引っ張っていく。
扉を開けて母親を座らせると、シートベルトを締めさせた。
次に後部座席の扉を開けて、子供二人に右に詰めるように手で教える。
助手席の後ろに座って、銃口を母親の右脇腹に押し当てた。
これで下手な動きをしたら、撃つと分かったはずだ。
「十字路に向かってくれ。薬師寺達と合流して、薬師寺と一緒に子供を見張るんだ。俺は剛田と二人で母親に道案内させる」
撫子にこの後の予定を話していく。まずは母親と子供を分断する。
その後は剛田と合流して、母親に男達がいる場所に案内させる。
男三人を選んで殺して、俺達が無事に車に戻れたら、母親と子供を解放する。
「……そんなことしなくていいよ。三人いるんだよ、これで終わりに出来るんだよ。危ないことしないで」
新しい予定を話したが、撫子が車を動かさない。
俺の方を見ずにハンドルを握ったまま、押し殺した声で言ってくる。
俺にこの三人を殺せと言ってくる。
「……本気で言っているのか?」
「本気だよ。歩が出来ないなら、私が代わりにやるよ。その為に付いて来たんだから」
冗談を言う奴じゃないのは知っている。
俺が住民を殺せないと思っていたと言ってきた。
「親にでも言われたのか? 俺が怖くて出来ない時は、代わりにやるように言われたのか?」
「違うよ。私の意思で来たの。歩が優しいの知っているから。歩、銃を返して。歩が殺したことにすれば終わりだから。歩は誰も殺さないていいんだよ。それで終わりだから……」
重苦しく空気がお互いの言葉を重くする。嫌な話をしているからだ。
撫子がハンドルから手を離すと、ハンドガンを返すように言ってきた。
俺はただ返すだけで、撫子が全部終わらせてくれるそうだ。
「お前は子供を殺して平気なのか? それで幸せになれるのか?」
だけど、渡すわけにはいかない。撫子の声は苦しそうに震えている。
将来母親になって子供を生む女が、子供を殺したいと思うはずがない。
「……平気じゃないよ、平気でいられるわけないよ。でも、歩が死ぬ方が平気じゃいられない。私の中じゃ子供よりも歩の方が大切なんだよ」
俺の方を振り向いた撫子は泣いていた。
やりたくないけど、俺の為にやる。そんな気持ちが溢れている。
「余計なお世話だ。俺には俺のやり方がある。親父が女子供を殺して、認めてくれると思うのか? あり得ない。お前は俺の言う通りにすればいいんだ。余計なことは考えずに黙って見ていろ」
「黙って見てられないよ! もう戻って来ないと思って、凄く怖かったんだよ。私の気持ちも考えてよ!」
撫子の提案をくだらないと言って断った。
それなのに撫子が声を荒げて、感情的に言ってきた。
面倒な女は嫌いだ。いつも通りに素直に言うことを聞けばいい。
「俺がお前にやってほしくないんだ! お前の気持ちなんて知るか。俺の為だと言うなら、二度と馬鹿なこと言うな。勝手なことしたら結婚しない。俺が殺したい奴を殺す、俺が殺したくない奴は殺すな。分かったな!」
「うぅぅ」
強い感情に強い感情をぶつける。その所為で母親と子供が怯えている。
殺したくない奴は殺す必要はない。俺が殺す。
泣いている撫子の気持ちは全部無視して、何もするなと強い口調で命令した。
「分かったら運転しろ。無駄な会話をしている間に、薬師寺と剛田に何かあるかもしれないんだ。その時はお前の責任だ。責任は取ってもらうからな」
「うぐっ、すんっ……ごめんなさい」
嫌な気分だ。ただでさえ気分が悪いのに、余計なことで頭がぐちゃぐちゃになる。
車がUターンして、十字路を目指して進んでいくのに、気分が落ち着かない。
紙パックの水を手に取って、飲んで落ち着こうとしたが無駄だった。
早く薬師寺達と合流したい。撫子と離れれば、嫌な気分は消えるはずだ。
「……来たな」
四分程待っていると、十字路の方から車がゆっくりやって来た。
俺達に気づいたのか停止した。刀を持った左手を大きく振って、俺だと主張する。
伝わったのか、ゆっくり車が向かってきた。
「go」
車が三メートル程の距離で停止した。運転席には緊張した顔の撫子が見える。
三人に歩くように言うと、撫子に後部座席の扉のロックを外すように伝えた。
「you、you、in」
ロックが外されると扉を開けて、子供二人を指差して、中に入るように言った。
二人が不安そうな顔で母親の顔を見ると「XxX」と母親が言った。
二人が大人しく車の中に入っていく。
「歩、この人達は何? 何で殺さないの?」
「この三人は殺さない。子供を人質に、母親に男がいる場所に案内させる」
「えっ? そんなの危ないよ! お願いだからやめて!」
俺が何を考えているか分からない、撫子の不安そうな声と戸惑いの表情から伝わってくる。
殺さない理由を簡単に説明すると、母親の腕を掴んで助手側の扉に引っ張っていく。
扉を開けて母親を座らせると、シートベルトを締めさせた。
次に後部座席の扉を開けて、子供二人に右に詰めるように手で教える。
助手席の後ろに座って、銃口を母親の右脇腹に押し当てた。
これで下手な動きをしたら、撃つと分かったはずだ。
「十字路に向かってくれ。薬師寺達と合流して、薬師寺と一緒に子供を見張るんだ。俺は剛田と二人で母親に道案内させる」
撫子にこの後の予定を話していく。まずは母親と子供を分断する。
その後は剛田と合流して、母親に男達がいる場所に案内させる。
男三人を選んで殺して、俺達が無事に車に戻れたら、母親と子供を解放する。
「……そんなことしなくていいよ。三人いるんだよ、これで終わりに出来るんだよ。危ないことしないで」
新しい予定を話したが、撫子が車を動かさない。
俺の方を見ずにハンドルを握ったまま、押し殺した声で言ってくる。
俺にこの三人を殺せと言ってくる。
「……本気で言っているのか?」
「本気だよ。歩が出来ないなら、私が代わりにやるよ。その為に付いて来たんだから」
冗談を言う奴じゃないのは知っている。
俺が住民を殺せないと思っていたと言ってきた。
「親にでも言われたのか? 俺が怖くて出来ない時は、代わりにやるように言われたのか?」
「違うよ。私の意思で来たの。歩が優しいの知っているから。歩、銃を返して。歩が殺したことにすれば終わりだから。歩は誰も殺さないていいんだよ。それで終わりだから……」
重苦しく空気がお互いの言葉を重くする。嫌な話をしているからだ。
撫子がハンドルから手を離すと、ハンドガンを返すように言ってきた。
俺はただ返すだけで、撫子が全部終わらせてくれるそうだ。
「お前は子供を殺して平気なのか? それで幸せになれるのか?」
だけど、渡すわけにはいかない。撫子の声は苦しそうに震えている。
将来母親になって子供を生む女が、子供を殺したいと思うはずがない。
「……平気じゃないよ、平気でいられるわけないよ。でも、歩が死ぬ方が平気じゃいられない。私の中じゃ子供よりも歩の方が大切なんだよ」
俺の方を振り向いた撫子は泣いていた。
やりたくないけど、俺の為にやる。そんな気持ちが溢れている。
「余計なお世話だ。俺には俺のやり方がある。親父が女子供を殺して、認めてくれると思うのか? あり得ない。お前は俺の言う通りにすればいいんだ。余計なことは考えずに黙って見ていろ」
「黙って見てられないよ! もう戻って来ないと思って、凄く怖かったんだよ。私の気持ちも考えてよ!」
撫子の提案をくだらないと言って断った。
それなのに撫子が声を荒げて、感情的に言ってきた。
面倒な女は嫌いだ。いつも通りに素直に言うことを聞けばいい。
「俺がお前にやってほしくないんだ! お前の気持ちなんて知るか。俺の為だと言うなら、二度と馬鹿なこと言うな。勝手なことしたら結婚しない。俺が殺したい奴を殺す、俺が殺したくない奴は殺すな。分かったな!」
「うぅぅ」
強い感情に強い感情をぶつける。その所為で母親と子供が怯えている。
殺したくない奴は殺す必要はない。俺が殺す。
泣いている撫子の気持ちは全部無視して、何もするなと強い口調で命令した。
「分かったら運転しろ。無駄な会話をしている間に、薬師寺と剛田に何かあるかもしれないんだ。その時はお前の責任だ。責任は取ってもらうからな」
「うぐっ、すんっ……ごめんなさい」
嫌な気分だ。ただでさえ気分が悪いのに、余計なことで頭がぐちゃぐちゃになる。
車がUターンして、十字路を目指して進んでいくのに、気分が落ち着かない。
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