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第71話 凄いプレゼント

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「この落とし穴から出してください」
「何? 落とし穴からじゃと? なんて謙虚な少年なのじゃ。良かろう、特別にレベル999まで上がるようにしよう。皆んなには内緒じゃぞ。《エクストラ・レベル(超絶レベル)!》」

 神様が僕のお願いに感動すると、杖先を向けて、青い閃光を僕に飛ばしてきた。
「うひゃ!」と全身が揉みくちゃにされている気分だ。

「さあ、願いは叶えたぞ。では、さらばじゃあ……」
「待て待てぇ⁉︎ 僕のお願いは落とし穴から出たいです! レベル999なんて要らないです!」

 恐ろしい神様だ! 僕のお願いを叶えずに魔法陣を出して帰ろうとした。
 帰る前に必死に引き止めて、何とか立ち止まってもらった。

「レベル999が要らんじゃと⁉︎ なんて欲のない少年なんじゃ! 良かろう! ならば、この神剣スラスラを授けよう! どんなスライムも一撃で倒せる剣じゃ! もちろん、皆んなには内緒じゃぞ」

 だから、違う違う! 違うよぉー!
 神様が青色の凄い剣を渡してきたけど、これじゃない。
 僕が欲しいのは落とし穴からの自由です。

「神様! だからレベルも剣も要らないです。落とし穴から出して欲しいだけです!」
「ホォホォホォ! 冗談じゃ冗談! 分かっておるから安心しなさい」
「神様ぁー」

 神様は笑っているけど、本当に悪い冗談だよ。
 でも、ひと安心だ。これで落とし穴から出られるぞ。

「本当に特別じゃぞ。ワシのサイン入り自画像じゃあ」
「……」

 なに、これ? これも悪い冗談なの?
 神様が美化率1000%の絶対別人の凄い自画像を渡してきた。

「壊すと大変じゃからな。アイテムポーチをサービスで付けておくぞ。これに入れておけば安心じゃ。では、さらばじゃあ」
「……はっ!」

 これ絶対に冗談じゃない! 神様が笑顔で魔法陣の中に入った。
 本気で良いと思った物を僕にプレゼントしている。
 こんなカッコいいお爺さんの自画像なんて貰っても嬉しくないよ!

「待て!」と急いで止めたけど、神様は満足したのか消えてしまった。
 消えずに残ったのは【神剣スラスラ】【自画像】【アイテムポーチ】だけだ。

「そんなぁ……」

 期待だけさせて、全然助かっていない。地面にガックリ項垂れた。
 このままだと落とし穴の中で、一生暮らさないといけない。
 そんなのは嫌だ!

「やるしかないよね」

 沈んだ気持ちで下を見るのをやめて、上を見上げてみた。
 スライムなんかに期待した僕が馬鹿だった。
 脱出したいなら、最初から自分でやるしかない。

「よぉーし! やってやる!」

 邪魔なダイヤ鎧を脱いで、アイテムポーチにしまうと、両手に光の魔剣を装備した。
 僕の取り柄は元気と体力だ。落とし穴の壁まで移動すると「《メタル斬り!」と叫んだ。

 ドォスン!

「よし! 登るぞ!」

 剣が壁に深く突き刺さった。次は左手の光の剣を突き刺すぞ。
 交互に突き刺していけば、天井まで登れるはずだ。
 レベル100の体力を見せてやる。
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