上 下
57 / 72

第57話 人形の皮を被った悪魔

しおりを挟む
「きゃはははは! この私を呼び出すなんて、優秀な召喚士ねぇ! でぇ? 誰を殺して欲しいの?」
「……」

 楽しそうに聞いてきたので、黙って左手でデビルスライムを指差した。
 倒させてくれると本当に助かります。

「こらこら! 私に死ねって言ってるの? あんた、生意気ね。決ぃぃぃめたぁ! あんた、殺しちゃう!」

 うん、やっぱり駄目みたい。
 矛先が紫色の細い三又の槍をクルッと回して、僕に右手で向けてきた。
 翼があるから、空を飛べる可能性も考えておかないとね。

「行くわよぉ~! そりゃあ!」
「にゃあ!」

 ガァン!

 飛ばすに真っ直ぐに走って向かって来た。
 疾風突きのような速い突きだけど、左手のダイヤ盾でしっかり受け止めた。
 ボックススライムで、盾の使い方はしっかり覚えたぞ。

「やるぅ~! どんどん行くわよ!」

 褒められちゃった。でも、槍の乱れ突きが襲いかかってきた。
 盾で防ぎきれなかった突きが、手や足にガァンガァン当たってくる。

 でも、ダイヤの鎧が頑丈すぎて全然痛くない。
 剣を後ろに引くと、「《疾風突き!》」と反撃開始だ。

 ガァツン!

「あたぁ! ちょっとぉ~! 女子の身体を傷物にするとか信じられないんですけど!」

 絶対に女の子じゃない。
 剣先が左肩に当たると、パラパラと白い肌が崩れ落ちて、青い肌が丸見えだ。
 陶器のような身体の中にスライムが入っているだけだ。人形の皮を被った悪魔だ。

「これなら余裕で倒せるよ」
「ふふっ。それはどうかしら?」
「えっ?」

 雑魚悪魔に安心していたのに、まだ本当の力を隠しているみたいだ。
 デビルスライムが槍先を見せるように向けて笑った。

「《弱化の槍》——この槍の攻撃を喰らうと、力が減少するのよ。あなたの力を半減させてもらったわ。ここからは痛ぶりタイムよ。ボロぞうきんにしてあげる!」
「……」

 本当だ。僕のHPとMPが半分になっている。
 いつもは72万もあるのに今はたったの【HP362861/363465】だ。

「そりゃそりゃそりゃ~! ほらほら、どんどんHPが減っていく恐怖を味わいなさい!」
「……」

 うん、やっぱり大丈夫だと思う。一撃で10ちょっとしかダメージ受けてない。
 これなら平気で反撃し放題だ。槍の突きを避けずに受けて、スライム斬りで切りつけた。

 ザァン!

「あたぁ! あはははは! 玉砕覚悟ってやつぅ? でも、残念! 《ドレイン突き(HP吸収)!》」
「はっ!」

 駄目だ、避けきれない!
 三又の矛先に黒い霧が発生した。その矛先が僕の胸に激突した。

 ドガァ!

「あううッ!」とあれ? 全然痛くないぞ。
 もの凄い攻撃かと思って驚いたのに、ダイヤの鎧が防いでくれた。
 あのおばさん、やっぱり凄いおばさんだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

平凡を望む、されど...

わか
ファンタジー
『簡単なあらすじ』異世界転移した男が懸命に生きる物語。 『長いあらすじ』仕事が終わり、帰宅する主人公。家の玄関を開けると...そこは異世界?開けたはずの玄関のドアが消失し、異世界に放り出されてしまった。困惑する主人公にスマホから着信音がなる。この先の人生において、もっとも重要な出来事が起こるとは...その時は思っていなかった。 カクヨム、なろうに併用して投稿する予定です。 完結まで週2話の投稿、たぶん、はい。頑張ります。

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

ドラゴンディセンダント

ドクターわたる
ファンタジー
結界によって隔離された“降魔の地”と呼ばれる関東の僻地に六つの高校がある・・・“降魔六学園”と呼ばれている。 世界でも珍しい召喚士だけが入学できる全寮制の高校群で一般人は基本的に立ち入り禁止となっている。召喚士は魔族と戦うために4000年ほど前に生まれたと言われるが、その役割は文明が発展して変わりつつある。定期的に・・・約400年に一度、魔族は大規模地上侵攻を目論むが古い召喚士は必要なくなりつつあった。来年11度目の地上侵攻が起こることは事前にほぼ場所・時・規模の予想が付いており来年の世界各地で起きるであろう地上大侵攻は1名も命を落とさず人類側が勝つ予定ではある・・・ “感覚合一の儀”を行うことで人口の約2%が召喚獣の卵と契約できて召喚士となる、つまり魔術や超能力のような力が使用可能になるわけである。一般人とはすこし異なる存在となるわけだ、古くは陰陽道と言われたが、現代では召喚士は試験にパスする必要があるが国家資格となっており様々な権限を持ち優遇される。 さらに召喚士にも差がある・・・最も大きな差は召喚獣が竜族かどうかである・・・竜族の召喚士は非常に強力である、ただし竜族と契約できるものは僅かである。 ここ、“降魔六学園”の生徒のほとんどは召喚士だが魔力を解放した戦闘・・・“召喚戦闘”での切磋が義務付けられ各校内ではランク戦、全国では公式戦が行われ優秀な召喚士を輩出している。 今年4月、六つのうち一つ、第3高校に如月葵という少女が入学してくる。 強力な召喚士は中学時代から全国に名前が知れ渡るのが通常だが彼女は全くの無名である。・・・彼女の身に宿している召喚獣は火竜・・・それもあり得ないほど強力な・・・世界の在り様に関与するほどの力を内包しているが彼女は何も気にしていない・・・基本適当で行き当たりばったりだから・・・。 六学園すべてで新入生3000人ほどの合同入学式は終わる。如月葵だけではない・・・どうやら他にも強力な力を持った新入生がいるようだ。 第1高校3年に西園寺桔梗という六学園の代表たる総生徒会長がいる、全国大会では団体戦も個人戦も数年負けていない。旧財閥の家系であらゆる権力を持っており中央集権的に圧政を強いている。 自由気ままな如月葵と権力の権化である西園寺桔梗は周囲を巻き込みつつ衝突する。 しかし予想外の人物の登場で事態はあらぬ方向へ転がる。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活

SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。 クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。 これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。

2年ぶりに家を出たら異世界に飛ばされた件

後藤蓮
ファンタジー
生まれてから12年間、東京にすんでいた如月零は中学に上がってすぐに、親の転勤で北海道の中高一貫高に学校に転入した。 転入してから直ぐにその学校でいじめられていた一人の女の子を助けた零は、次のいじめのターゲットにされ、やがて引きこもってしまう。 それから2年が過ぎ、零はいじめっ子に復讐をするため学校に行くことを決断する。久しぶりに家を出る決断をして家を出たまでは良かったが、学校にたどり着く前に零は突如謎の光に包まれてしまい気づいた時には森の中に転移していた。 これから零はどうなってしまうのか........。 お気に入り・感想等よろしくお願いします!!

処理中です...