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第38話 鎧で完全武装

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「ふぅー、危なかったぁー。明日は最初から丸腰の相手を狙うぞ」

 今日は疲れたし、剣技と強力な戦利品を手に入れた。
 今日は明日のモンクスライムとの戦いに備えて、休憩だ。
 休憩するのも大切な仕事なんだぞ。

 お父さんとお母さんには「休憩しすぎだ」と言われていたけど、今日はきっと言われないぞ。

 ……
 …

「うーん、動きにくい」

 剣と盾、鎧で完全武装して、念願の防御力を手に入れた。
 でも、鎧のせいで手足の関節が動かしにくい。
 防御力を取るか、素早さを取るか、悩みどころだ。

「うん! これで行こう!」

 やっぱり今日はこれが正解だ。相手は格闘家のモンクスライムだ。
 全身鎧なら、どこを殴られても蹴られても平気だぞ!

「召喚!」と唱えると、魔法陣から黒い服に、赤いハチマキを頭に巻いた、金色の人型のスライムが出て来た。
 金色の顔に目や鼻はないけど、身体はムキムキの筋肉だるまだ。
 生身であれに殴られたら、絶対に骨がボキボキに折れていた。

「その鎧……この臆病者! 男なら素手で戦え!」

 絶対に嫌です。距離を取って構えたモンクスライムを無視して、突撃開始だ。
 ガチャガチャ鎧を鳴らして、近づいていく。

 硬そうだけど、あの筋肉は鉱石じゃない。メタル斬りじゃなくて、スライム斬りだ。
 でも、まずは先制の「《疾風突き!》」だ。右手の剣を突き出し、ビュンと飛んだ。

「フンッ! 甘いわ!」
「なつぅ!」

 でも、簡単に躱されて、右腕をモンクスライムのたくましい左腕の前腕と上腕に挟まれた。
 そのまま地面に倒されると、流れるように両足で右腕を挟まれて、上半身に両足を乗せられ押さえ込まれた。

「はっ!」

 これは! 腕ひしぎ逆十字だ! このままだと右腕がへし折られる!
 左手から盾を捨てて、アイテムポーチから短剣を取り出した。
 それをモンクスライムの左足の太ももを狙って振り下ろした。

「《スライム斬り!》」
「ぐぬう!」

 ドォス! 太ももに短剣が深く突き刺さった。この技の破り方は知っている。
 普通は噛みつくのが正解だけど、兜を被っているし、この筋肉は噛みちぎれない。
 これが正解だ。

「ぐぬら! この技を破るとは……貴様! 只者ではないな!」

 右足の太ももも突き刺したかったけど、モンクスライムが僕の右腕を解放して、素早く立ち上がった。
 だけど、もう遅いよ。気づくのがね。

「おばあちゃんに教わらなかったみたいだね。本当のプロレス——実戦式プロレスを」
「実戦式プロレスだと!」

 ルール無用、それが実戦式プロレスだ。
 イスでも石でも割れたビンでも何でも使っていい。
 相手を倒すか、降参させれば勝利だ。
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