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第35話 氷の領域

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 ……うん、駄目みたい。
 炎も岩も氷の盾に弾かれちゃった。

「ひゃあ! ふぅあ!」と氷の盾二枚を素早く躱した。
 でも、三枚目は無理だ。「《スライム斬り!》と叫んで剣を振り抜いた。
 パキィン! と刀身から溢れる青い閃光が、氷の盾を粉々に砕いた。

「あっ、行けるかも」

 氷の盾が武器なら、全部壊せば、フロストスライムは丸腰になる。

「魔法と剣技を使うか。だが、我に近づけるかな?」

 でも、それは無理みたいだ。
 残り二枚だと思ったのに、フロストスライムが新しい三枚目の氷の盾を出して来た。
 盾を壊しても直せるなら、本体を倒すしかないよね。

「うにゃああ! 《ファイアボール!》」と炎の球を飛ばしながら、本体に突撃した。
 氷の盾が飛んで来るけど、「《スライム斬り!》」の一振りで打ち砕いていく。

 やっぱり行けそうだ。
 一撃で倒すのは無理だろうから、五回ぐらいは切らないとね。

 逃げ回るフロストスライムとの距離が三メートルを切った。
 剣を振り上げて、一刀両断の構えを取った。

「そこまでだ——《アイシクルブレス(氷柱の息)!》」

 ドォスススス!

「えっ? うぎゃああああッッ!」

 フロストスライムが地面に白い息を吐いたと思ったら、地面からたくさんの氷柱が飛び出して来た。
 僕の足を貫通して、たくさん刺さっている。たくさん刺さっている!

「我が氷の領域に足を踏み入れし者には死あるのみだ。冷たきむくろになりて悟がよい」
「うわあああッッ!」

 油断しちゃった! 油断しちゃった! 油断しちゃった!
 一歩も動けない。だけど、出来ることはある。
「《スライム斬り!》」と叫んで、右手の剣を投げつけた。

 ドッス!

「ぐぅっ!」と刺さっちゃった。刺さっちゃったよ!

「《スライム斬り!》」
「ぐぅっ!」

 刺さるなら投げます。アイテムポーチに右手を入れて、二本目を投げつけた。
 ドォス! また刺さった! だったら、もっと投げます!

「《スライム斬り!》《スライム斬り!》《スライム斬り!》」

 全然斬ってないけど、刺さりまくりだ。
 宙に浮いていたフロストスライムが地面に落ちた。
 身体に十二本も剣が突き刺さっている。五本じゃ全然足りない。

「あっ! もう剣がない!」

 トドメの一本が足りない。剣も短剣も使い切った。
 でも、大丈夫だ。カエル油ならたくさんある。

 アイテムポーチに手を入れて、「えいッ! えいッ! えいッ!」と投げつける。
 最後に必殺の「《ファイアボール!》」を唱えて、フロストスライムを火だるまにした。

「ぐぅああああッッ!」
「あぁー、暖かい」

 何だか身体が冷えてきた。
 氷の焚き火でちょっと暖かいけど、早く氷柱から脱出しない死んじゃう。
 刺された足から血が流れている。早く薬草食べないと死んじゃうね。
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