『スライム』しか召喚できない召喚士LV1★☆☆☆☆☆☆が初ダンジョンで脱出不能のデストラップ『深過ぎる穴』に落ちました

第27話 脱出方法の心当たり

「9999回！　10000回！」

　落とし穴生活112日目。
　ナイトスライムとの一ヶ月という長い修業の日々で、お腹はペタンコになってしまった。
　逆に腕や足の筋肉がパンパンになっている。

「うむ。そろそろ良さそうじゃな。剣技の修業を始めるぞ」
「えっ？　終わりじゃないの？」

　一万回も頑張って素振りしたから、普通は終わりでいいと思う。
　それにナイトスライムが召喚解除させてくれないから、食糧が尽きかけている。
　僕、水だけで生きられないよ。

「では、頑張ったお主には二つの剣技を伝授してやろう」

　そんなの要らないから、早く帰って欲しい。

「一つは《スライム斬り》——スライムに大ダメージを与える技だ。もう一つは《メタル斬り》——硬いスライムに大ダメージを与える技だ。この二つを習得できれば、果物食べ放題、鉱石取り放題だ」
「先生、よろしくお願いします！」

　うん！　ここまで頑張ったんだから、もうちょっと頑張ってもいいよね！
　ナイトスライムにビシィと頭を下げてお願いした。

「よろしい。まずはスライム斬りじゃ。剣技を習得するまでは、《スライム斬り！》と叫びながら、がむしゃらにスライムを倒し続けるんじゃ。そのうちに叫ばずに出せるようになるぞ」
「《スライム斬り！》《スライム斬り！》」

　言われる前に動く。これが怒られない修業の基本だ。
　剣を素振りのように全力で振り下ろして叫んだ。

「そうそう、その調子だ。だが、スライム斬りが発動されると剣が青く光るぞ。それは剣を振っているだけじゃ。次にメタル斬りだ。これもスライム斬りと同じじゃが、斬る相手はブロンズスライムだ。メタル斬りが発動されると剣が銀色に光るぞ」
「《メタル斬り！》《メタル斬り！》」

　全然光らないけど、僕の汗は光って見える。これはもう習得したと言ってもいいと思う。
「先生、ありがとうございました！」と頭を下げてお礼を言った。

「うむ。では、頑張ったお主にもう一つ教えてやろう。この落とし穴から脱出したければ、我らスライムの王——《キングスライム》に会うのだ」
「キングスライム？　それに会えば助かるの？」

　もう帰って欲しかったけど、脱出方法は知りたいです。もうちょっといてください。

「分からぬ。だが、他に思い当たる方法はない。では、ワシの召喚を解除して、次にマジシャンスライムを呼び出すのじゃ。修業してくれるようにワシが頼んでやろう。感謝するんだぞ」
「は、はい……」

　えぇー！　もう修業は十分だよ！
　修業終わりだよ！　解除するから早く帰ってよ！
　焼き肉食べたいよ！　レモングミかけて食べたいよ！
「解除！」とナイトスライムに触れて叫んだ。