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第25話 まずは素振り一万回

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「えいッ!」と右手でカエル油を投げたら、そのまま伸ばした右手でカエル油を狙った。
「《ファイアボール!》」とこの早さになるまで、何度も投擲と射的を繰り返した。
 簡単には躱せない。簡単には躱せないはずなんだけど……
 
「フロッグの油か。くだらん手を考える」

 ナイトスライムがカエル油と炎の球目掛けて突っ込んで来た。
 剣を振り払って、剣の腹でカエル油を弾き飛ばして、炎の球を五角形の盾で殴り壊した。
 凄い早業だ!

「あわわわわっ!」
「この卑怯者め。その弛んだ身体と一緒に、その小根も叩き直してやる!」

 ボフゥと僕のお腹に、振り払われた剣の腹が深くめり込んだ。
 くの字に曲げられた身体から、「ひゅぶう!」と息が吐き出された。

「さあ、立て。休んでいる暇はないぞ」
「うぅぅぅぅん!」

 休んでいるんじゃなくて、痛がっています。痛くて立てません。
 ひざまずく僕の頭を、剣の腹でペチペチ叩くけど、あと5分待って欲しい。

「やれやれ、スライムキラーの称号を持つのにその程度か? ダラシない。スライムを倒すのが好きなのだろう?」
「ごほぉごほぉ、倒したくて倒したんじゃないよぉー」
「ほぉー、それはどういう意味だ? 事情次第では助けてやってもいいぞ。ワシは騎士だからの。困っている者を助けるのが仕事だ」

 あぁーやばいかも。落とし穴生活続けたせいで、スライムと話しちゃってるよ。
 早く脱出しないと、そのうちガイコツさん達とも会話を始めちゃうぞ。

「ペラペラ、ペラペラ、ペラペーラ!」

 でも、立つまで5分あるから、事情を話しちゃった。
 5分じゃ全然足りないけど、全部話しちゃうぞ。

「なるほどの。事情は分かった。お主に足りないものは、防御力でもレベルでもない。《剣技》だ。ワシが直々に修業してやろう」
「えっ?」

 僕が助けて欲しいのは脱出だけで、修業なんてしたくないよぉー。

「さあ、立て。まずは素振り一万回だ」
「えぇー!」

 やっぱり立たないと駄目みたいだ。このまま寝たいけど、絶対寝させてくれない。
 
 ……
 …

「さぁ、3061回! さぁ、3062回!」
「何だそれは! 剣を振るだけなら誰でも出来るぞ! 目の前に敵がいると思って全力で振らんか!」
「ハァハァ! ハァハァ!」

 もう限界です! 死にそうです! このナイトスライム、もの凄く厳しいです。
 アイテムポーチから出した剣を頑張って振っているのに、全然休ませてくれない。
 お腹減ったし、喉も渇いた。お肉食べたい、果物食べたい。

 こうなったら、油断している時に倒してやる。
 スライムも寝るはずだから、寝込みを襲ってやるぞ。
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