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【人工知能を持つロボットという奴隷】

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「さて、最後のテーマ【人工知能を持つロボットという奴隷】です。ロボットが登場する事で、世界の人のほとんどが人間の社員を持たない社長になります。おそらくはそんな日は来ないだろうと思った人は正解です。全人口の6割、7割ぐらいが実際になれればいい方でしょう。この投稿小説もある意味、会社であり、あなたが小説を考えて投稿しているのなら社長なのです」

 近い将来、人間と同等の能力を持つ人工知能とロボットが開発された場合、多くの人々が失業する事になるでしょう。その場合、人間に残された仕事は娯楽を作る事です。

 随分と前だったと思いますが、人工知能が考えた小説が作られたというニュースがありました。もしも、あなたがその小説を作れる人工知能を持っていて、ほぼ無限に作られる小説を投稿出来るのならば、その利益で生活する事は出来るでしょうか?

「今現在でも、個人がYouTubeなどで多額の収入を得ている例がありますが、それは一部の特殊な例です。ほとんどの人が生活できるだけの利益を上げる事は出来ません。今すぐに世界は変わる訳ではないですが、いずれは現在人間がやっている仕事のほとんどはなくなります」

 戦闘ではドローンと呼ばれる無人飛行機が使用されたように、危険な仕事からドンドン人を使われなくなります。高所作業、汚染区域、炎天下や過度な重量を持ち運ぶ肉体労働など、3Kと呼ばれる《キツい》《汚い》《危険》な仕事はほとんどロボットにやってもらえるようになります。

 いずれは13歳の少女の代わりに水汲みをするロボットも現れるでしょう。まあ、わざわざロボットに頼まずとも、そこまで発展した文明ならば、水道を作るか、一度汲んで来た水を村の中で循環、洗浄する事が出来る機械を設置している事でしょう。

「仕事がなくなった未来、人間がやれる事は遊ぶ事だけです。人間が最も自由だった時代は過去にしかありません。世界が進化すると共に自由は少しずつ剥奪されていきました。これから先の未来、しばらくは私達は半奴隷としての辛い時代が続くでしょう。それでもいつかは半奴隷から解放される日はやって来ます。私達が死んだ後の世界ですが」

 さて、タイトルの答え合わせです。8時間の水汲みをする少女と、12時間の労働をする日本人。一生のうちに起こる不幸の数と幸福の数、どちらが多いかによって不幸か、幸福かは決まります。問題があるとしたら、不幸と幸福の数をカウントをする人の気持ちの匙加減です。大した事ないことでも不幸だと嘆くようならば、正確な判定は難しくなります。

「不幸な人は不幸だと嘆く回数が多いのか、幸福な人は幸福だと思う回数が多いのか、大した事ないことでも、幸福だと思えるのならば、幸福な奴隷になる事はすぐに出来るでしょう。幸福になる方法は実に簡単です。快楽と娯楽を馬鹿のように楽しむ事です。酒を飲んで、ドンチャン騒ぎをすれば大抵の人は楽しく幸福になれるでしょう。目が覚めた時に警察署の檻の中でなければですけどね」

 気づいている人も多いと思いますが、この小説に登場するデータや考えの多くは一部の人達の声だけを参考にして作られています。私にとっての都合の良い情報だけを集めて、私に有利な内容にしているのです。

 本当に正しい情報を知りたいのならば、一部の抜粋した情報だけを信じて答えを出さずに、多くの意見を知る事です。

 あなたの事が嫌いな人から、あなたの話を聞いても、あなたの悪い事しか言わないでしょう。それと同じです。逆にあなたの事が好きな人からしか、話を聞こうとしないのならば、それはあなたの正確な評価とは言えません。

「それを踏まえて、まったく別角度からこの小説を読んだ場合、おかしな点があります。例えば、《大昔の人間は自由で、現在の人間は奴隷である》です。この考え方は実際には別の答えもあります。《大昔の人間は奴隷で、現在の人間は少しずつ自由を得ている》です」

 大昔の人間達は神を信仰し、恐れ、雷や嵐、疫病などの理解不能な事を神の仕業と考えていました。まさに神の奴隷です。時代は変わり、神の奴隷から、王の奴隷へと我々は主人をより近い存在に変える事に成功しました。絶対に勝てない神のような存在が、いつかは死ぬ王という存在に変わったのです。

 私も子供時代は学校は好きではありませんでした。もっと楽しい事だけをやるべきだと思っていたからです。義務やルールだと言って、子供は遊ぶ権利と自由を剥奪されるのです。だからこそ、一部の救世主達は授業中に『僕は自由だ!』と声を上げるのでしょう。

「そもそも、自由というものが生まれたのは最近の事ではないでしょうか? 我々は最近まで国の奴隷として、盲目的に生きていたのです。勝手に戦争を起こして、『死んでくれ』とお願いするような国の奴隷として生まれたのです。我々は多くの時間と犠牲の果てにやっと自由という存在を見つけたのです」

 これから先の未来は、神の奴隷から解放された祖先ように、国の奴隷から解放される為に私達は戦うのです。全ての義務は廃止され、個人個人の考えと自由を尊重する時代に変わるのです。

『選挙に行かない自由!』『健康診断で胃カメラをしないでいい自由!』『病院に行っていない月には健康保険料を支払わないでいい自由!』

 まだまだ、おかしな点や不満な点は沢山あると思います。我々は奴隷にはなりたくないのです。そして、武力と法律で支配できる限界はあるのです。人は誰でも心の中では権利と自由を求めています。これから先の未来には多くの自由があると思います。自由という希望を見つけた私達には、輝かしい未来があると信じて、半奴隷生活を続けてみましょう。

「これで私の研究発表は終わります。お忙しい中、ありがとうございます。幸福になる方法はただ1つだけです。不幸を嘆くよりも、趣味や遊びに熱中する事です。たとえ辛い水汲みでも、何人もの友達と楽しくお喋りしながら歩くのならば、きっと幸福なはずです。まったく楽しくない仕事でも、その仕事で得た収入で楽しむ事は出来るはずです。楽しむ事は生き続けるには何よりも重要な事です。今の時代、まだまだ法律を守って程々に楽しまないと駄目ですが、あなたが幸福な人生を送りたいのならば、さあ、楽しみましょう」
 
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【間違い探し】

①そもそも人間が幸福になれるのだろうか? 神という最も幸福を与える存在を裏切り、更なる自由と幸福を求めて追放されたのが人間である。

②そもそも日本を始め、先進国というものは存在していない。架空の国である。全ての国が発展途上国であり、我々は貧民である。

「『あれあれ? もう終わったと思っていた』と思っていたのなら残念ですが、まだまだ少しだけ続きがありました。宿題を提出したら、先生に採点されて返ってくるものです」

 ①は、まあ、宗教的な考えになりますが、幸福とは何かです。心の底から幸福を感じた事があるでしょうか? 『生まれて来て良かったぁ~~~‼︎』と大声で喜んだ瞬間はあったでしょうか? 

「お金を沢山持っていたら幸福? 好きな相手と付き合えたら幸福? 幸福とは何か。それは人によって違うものです。仕事が出来るのが幸福だと言う人もいれば、仕事なんて大嫌いだと言う人もいます。こうなると幸福が何なのか私にはもう分かりません」

「神はいるか、いないか。まさに『悪魔の証明』です。幸福が実際に存在するのか、しないのか。私には証明する事は出来ません。けれども、『幸福』『不幸』という言葉は確かに身近に存在するのです。ここまで来ると、もう神と同じで、個人の信仰心次第になります。信仰心とは《信じる力》です」

 明日も生きているだろうという気持ちも信仰心です。明日は良い日になるだろうという願望も信仰心です。神を信じなくとも、信仰心はほとんどの人が持っています。つまりは、この世界は信仰心の力で出来ているようなものかもしれません。では、信仰心の話から続いて、②の問題です

 先進国とは、《高度な工業化を達成し、技術水準ならびに生活水準が高い、経済発展が大きく進んだ国家の事》とあります。

「意外と調べてみると、先進国の基準は曖昧なようなので、要するに『俺の国、凄いよ!』と主張しているのが先進国です。私は先進国ではなく、選民思想が強い『選民国』と呼びたいぐらいです」

『日本人は凄い』と度々海外の人々から称賛される事で、私も少なからず優越感のようなものを感じてしまいます。でも、私個人は直接そんな言葉を聞いた事はありません。凄い人間は何処の国にもいます。私達は一部の情報に洗脳されているのです。

「税金が必要なのは当然の事です。消費税が上がるのも仕方ありません。だってこの国は全然整備されていないのです。歩行者用の道に草がボーボーと生えても放置されているのです。金が無いから『オレオレ詐欺』『母さん助けて詐欺』をするのです」

 仕事が無いのも、犯罪が起こるのも、金に困るのも、この国が貧乏で未発達だからです。国を発展、整備するにはお金が必要です。普通は貧乏な人に『寄付してください』と頼んでも断られるだけですが、悲しい事に政府の情報操作で我々は裕福な先進国の日本人とされてしまっています。少ない財産を更に貧乏な日本国に寄付しないといけないのです。この国が発展するまでは。

「今度こそ、これで研究発表は終わります。日本は先進国ではありません。発展途上国です。今すぐに無駄なプライドは捨てて、日本を発展させる為に、死に物狂いで仕事に勉強に頑張りましょう。いつかは子孫に幸福な暮らしを与える事ができるかもしれません」

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