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27日目
三本目勝負・運比べ
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「はぁ~、行きたくないです」
使用人に起こされたカノンが、部屋の中で溜め息を吐いている。
ミランダとルセフの決着の日がやって来た。
カノンは廃都の支配で忙しいから、あとは二人でやってほしい。
今日は外壁を修復して回りたい。
昨日は47匹になったヘルハウンドを、檻から広場に放し飼いにした。
広場の周囲を建物の壁で、ぐるっと隙間なく囲んでいる。
猛犬達にとっては檻が広くなっただけで、閉じ込められているのは変わらない。
「カノンお嬢様は行かないと駄目ですよ。勝負が続く可能性もあります」
「もう殴り合いでいいんじゃないですか?」
カノンは面倒くさいから、勝つ方が決まった勝負を言っている。
殴られた後に、土下座させられている姉をみたいらしい。
「それなら握手して仲直りした方がいいです。ミランダお嬢様はもう出掛けましたよ」
ミランダは使用人とシリカを連れて、ルセフ家に向かったそうだ。
まだ午前8時だが、お互い昼まで待つ必要はないだろう。
さっさと決着をつけたいはずだ。
「カノンお嬢様も早く行きましょう」
「はぁ~、そうですね。土下座を見逃すと大変です」
使用人に急かされて、やっとカノンは屋敷を出た。
ルセフが勝ったら土下座をお願いすると思っているが、一言も言っていない。
カノンがやらせたいことだ。
サメ型飛行船に乗ると、ルセフ家の近くまで飛んで着陸させた。
カノンがサメ型飛行船を持っていることを、ミランダはまだ知らない。
知れば、奪い取るのは決まっている。
裏庭に到着すると、勝負の結果発表が始まっていた。近所の人達がお祭りのように集まっている。
火竜を倒したと、ルセフの母親が近所に自慢した所為だ。火竜を見ようと集まっている。
「ふふ~ん♪ やっぱり庶民にはその程度が限界みたいね。ベアトリス、いくら稼いだか教えてあげなさい」
「はい、お嬢様。564万ギルドです」
「おおー!」
金稼ぎ勝負の結果は予想通りだった。
如何わしい方法で稼いだ金を、ミランダは堂々と見せている。
ベアトリスが振っている袋からは、ジャラジャラと金貨と銀貨がぶつかる音が鳴っている。
近所の人達が驚いている。
「言っておくけど、ズルしてないわよ。あんたの妹がその証拠よ」
ミランダが言われる前に言った。
シリカの錆色の髪、褐色の肌、歯がピカピカになっている。
光り輝く美少女にされている。普通の少女に戻る日は分からない。
「チッ。人の妹を勝手に光り物にしやがって。治せるんだろうな!」
「知らないわ。でも、あんたが勝ったらお願いしたら分かるんじゃない? 次は魔物勝負だけど、私は倒してないから、あんたの勝ちでいいわよ」
ピカピカ光る妹が返されて、ルセフは怒っている。
自分の姉だと思いたくないぐらい、やり方が汚い。
これだと土下座が見られない。
「だったら次の勝負は何だ? 殴り合いでもしてみるか? すぐに終わらせてやるよ」
一勝一敗だから、延長戦の三本目が始まる。
ルセフは引き分けも仲直りも望んでいない。
カノンと同じ、殴り合いの完全決着を望んでいる。
「野蛮なやり方ね。知恵比べに力比べと来たら、最後は運比べに決まっているじゃない。ベアトリス、金貨を一枚出しなさい」
「はい、お嬢様」
一勝一敗になると、ミランダはカノンの途中報告で分かっていた。
ベアトリスが袋から小金貨を一枚取り出した。
「金貨の裏表を当てる単純な運比べよ。公平に金貨の裏表を選ぶ権利と、金貨を投げる人を選ぶ権利が、片方ずつに与えられるわ。これなら文句ないでしょ?」
ミランダが考えた勝負だ。怪しさしか感じないが、ズルが出来るとは思えない。
そう思ったのだろう、ルセフも勝負を受けることにした。
「ああ、そうだな。当然、こっちは投げる人を選ぶ。イカサマを使われたくないからな」
「フフッ。賢明な判断だけど、あなたに人を見る目があるかしら?」
「言っていろ。リンゼルさん、お願いしてもいいですか?」
「え⁉︎ 俺!」
ルセフは近所のおじさんを指名した。
おじさんは驚いているけど、無関係の人なら不正はしない。
だが、甘すぎる判断だ。
この勝負は運比べではない。受けた時点で負けが決まる。
使用人に起こされたカノンが、部屋の中で溜め息を吐いている。
ミランダとルセフの決着の日がやって来た。
カノンは廃都の支配で忙しいから、あとは二人でやってほしい。
今日は外壁を修復して回りたい。
昨日は47匹になったヘルハウンドを、檻から広場に放し飼いにした。
広場の周囲を建物の壁で、ぐるっと隙間なく囲んでいる。
猛犬達にとっては檻が広くなっただけで、閉じ込められているのは変わらない。
「カノンお嬢様は行かないと駄目ですよ。勝負が続く可能性もあります」
「もう殴り合いでいいんじゃないですか?」
カノンは面倒くさいから、勝つ方が決まった勝負を言っている。
殴られた後に、土下座させられている姉をみたいらしい。
「それなら握手して仲直りした方がいいです。ミランダお嬢様はもう出掛けましたよ」
ミランダは使用人とシリカを連れて、ルセフ家に向かったそうだ。
まだ午前8時だが、お互い昼まで待つ必要はないだろう。
さっさと決着をつけたいはずだ。
「カノンお嬢様も早く行きましょう」
「はぁ~、そうですね。土下座を見逃すと大変です」
使用人に急かされて、やっとカノンは屋敷を出た。
ルセフが勝ったら土下座をお願いすると思っているが、一言も言っていない。
カノンがやらせたいことだ。
サメ型飛行船に乗ると、ルセフ家の近くまで飛んで着陸させた。
カノンがサメ型飛行船を持っていることを、ミランダはまだ知らない。
知れば、奪い取るのは決まっている。
裏庭に到着すると、勝負の結果発表が始まっていた。近所の人達がお祭りのように集まっている。
火竜を倒したと、ルセフの母親が近所に自慢した所為だ。火竜を見ようと集まっている。
「ふふ~ん♪ やっぱり庶民にはその程度が限界みたいね。ベアトリス、いくら稼いだか教えてあげなさい」
「はい、お嬢様。564万ギルドです」
「おおー!」
金稼ぎ勝負の結果は予想通りだった。
如何わしい方法で稼いだ金を、ミランダは堂々と見せている。
ベアトリスが振っている袋からは、ジャラジャラと金貨と銀貨がぶつかる音が鳴っている。
近所の人達が驚いている。
「言っておくけど、ズルしてないわよ。あんたの妹がその証拠よ」
ミランダが言われる前に言った。
シリカの錆色の髪、褐色の肌、歯がピカピカになっている。
光り輝く美少女にされている。普通の少女に戻る日は分からない。
「チッ。人の妹を勝手に光り物にしやがって。治せるんだろうな!」
「知らないわ。でも、あんたが勝ったらお願いしたら分かるんじゃない? 次は魔物勝負だけど、私は倒してないから、あんたの勝ちでいいわよ」
ピカピカ光る妹が返されて、ルセフは怒っている。
自分の姉だと思いたくないぐらい、やり方が汚い。
これだと土下座が見られない。
「だったら次の勝負は何だ? 殴り合いでもしてみるか? すぐに終わらせてやるよ」
一勝一敗だから、延長戦の三本目が始まる。
ルセフは引き分けも仲直りも望んでいない。
カノンと同じ、殴り合いの完全決着を望んでいる。
「野蛮なやり方ね。知恵比べに力比べと来たら、最後は運比べに決まっているじゃない。ベアトリス、金貨を一枚出しなさい」
「はい、お嬢様」
一勝一敗になると、ミランダはカノンの途中報告で分かっていた。
ベアトリスが袋から小金貨を一枚取り出した。
「金貨の裏表を当てる単純な運比べよ。公平に金貨の裏表を選ぶ権利と、金貨を投げる人を選ぶ権利が、片方ずつに与えられるわ。これなら文句ないでしょ?」
ミランダが考えた勝負だ。怪しさしか感じないが、ズルが出来るとは思えない。
そう思ったのだろう、ルセフも勝負を受けることにした。
「ああ、そうだな。当然、こっちは投げる人を選ぶ。イカサマを使われたくないからな」
「フフッ。賢明な判断だけど、あなたに人を見る目があるかしら?」
「言っていろ。リンゼルさん、お願いしてもいいですか?」
「え⁉︎ 俺!」
ルセフは近所のおじさんを指名した。
おじさんは驚いているけど、無関係の人なら不正はしない。
だが、甘すぎる判断だ。
この勝負は運比べではない。受けた時点で負けが決まる。
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