114 / 121
25日目
男の恋話
しおりを挟む
重めの調教の途中で火竜は気絶してしまった。
カノンは大型飛行船に乗り換えると、海上をプカプカ浮かぶ火竜を引き揚げた。
続きは地上に変更になった。
「ぐはぁ、ごほぉ、ごほぉ……」
瀕死の火竜が硬い地面に落とされた。
次は署名するまで死なないように、軽めの調教で回復しながら説得だ。
まずは弱点の氷魔法だ。神氷の杖から、遠距離魔法攻撃が発射された。
「ぐふう、た、助けてぇ……」
火竜は叫ぶ力も残っていない。氷の槍を一発撃ち込むだけで、素直に署名した。
爪に自分の血を付けて、スラスラと血文字で読めない名前を書いている。
回復されて縮小されると、頑丈な鳥籠の中に放り込まれた。
「ふぅー、手間取りました。でも、本物のドラゴンが手に入りました。早く名前を決めないといけませんね」
カノンは名前を考えながら、廃都を目指してサメ型飛行船を飛ばした。
火竜はオスなので、カッコイイ名前を考えている。
とりあえず初代と同じドラゴンに決めた。
「ここにはいないみたいです。待ち合わせ場所を決めておけば良かったです」
廃都の分かれた場所まで戻ると、誰もいなかった。
カノンは魔物図鑑を見ながら、上空からルセフ達を探し始めた。
図鑑の魔物が消えれば、そこにルセフ達がいる可能性が高い。
予想通りに魔物が消えると、その場所に飛行船を飛ばした。
「さっさとかかって来いよ。どこにも逃げられねえよ」
「ヤァッ、タァッ!」
「うわぁー、二人しか戦ってません」
飛行船から地上を見ると、ルセフとナンシーしか戦っていなかった。
他の二人はヘルハウンドをアイテムポーチに回収している。
パトラッシュは一応は吠えて、魔物の接近を教えている。
昨日よりは成長している。
カノンは飛行船を着陸させると、鳥籠と一緒に降りた。
ドラゴンは助かったと思っていたかもしれないが、これから決闘が始まる。
勝てばいいが、負ければ縮小されて、特別な訓練所に入れられる。
そこで青い友達と朝まで遊ぶことになる。
♢
「火竜を捕まえて来ました。二人は見てるだけですか?」
「ああ、カノンちゃん、お帰り。小さな火竜だね。それよりもあの二人お似合いだと思わない?」
「お似合い?」
二人は鳥籠の小さな火竜には興味がないようだ。
ウェインがルセフとナンシーを指差して、少し笑って聞いてきた。
カノンが首を傾げると、ジャンもナンシーを見ながら言ってきた。
「俺はにいちゃんは年上の女に、引っ張られるのが良いと思うんだよな。裁縫と料理が得意だから、俺は合格で良いと思う」
「いいや、戦闘能力の方が重要だ。冒険者は危険な仕事なんだ。帰りを待つ女性は心配なんだよ。一緒に働ければ、そういう心配はしなくて済む。冒険者カップルは長続きするんだ」
「本当かよ? お前もにいちゃんも、一度も恋人連れて来たこと無いじゃん。ねえ、姉ちゃんはどう思う?」
「ふぇっ⁉︎」
二人の男が恋話で盛り上がっている。
カノンにまで意見を求めているが、自分達と同じ恋愛素人だと知らない。
聞くなら自分達の母親に聞いた方が遥かにマシだ。
「うーん、無理ですね。ナンシーは年下には興味ないです。告白してもフラれるだけです」
それっぽいことを言っているが、ナンシーの好きな異性のタイプは全然知らない。
完全な個人的な意見だが、それを二人は信じてしまった。
「やっぱり高嶺の花かぁー。男爵家の使用人なら給料良いだろうからね」
「諦めるのは早いって。勝負に勝てばいいんだよ。勝って使用人を一人一人ずつ貰うんだよ」
ジャンは使用人の恋人が欲しいようだ。母親が聞けば、尻を何度も叩かれる台詞だ。
そして隣の悪い大人は注意もしないで、話に乗っている。
「それ良いねぇ~。じゃあ、俺はあの三つ編みの子が良いかな♪」
「はぁぁ? あれは俺んだよ! 俺の女に手出すんじゃねえよ!」
「お前はまだまだチャンスがあるんだから、譲れよ!」
仲が良かったのは一瞬だった。女性は誰の物でもない。
ウェインとジャンが三つ編み茶髪の使用人をめぐって喧嘩を始めた。
ミランダの使用人で、名前はルリ。年齢15歳の若い子供っぽい使用人だ。
「こほん、こほん、他にも可愛い子が近くにいるんじゃないですか?」
醜い争いを止めようと、カノンが軽い咳払いで注意を集めると、可愛いポーズをした。
「はぁぁ? どこにいるんだよ! 自分とか言ったらブッ殺すぞ!」
「カノンちゃん、そこ邪魔!」
「……」
だけど、男の本気の喧嘩は止められなかった。勝った方が三つ編み使用人を貰える。
金髪の使用人は誰も求めていない。黙って見ているしか出来ない。
カノンは大型飛行船に乗り換えると、海上をプカプカ浮かぶ火竜を引き揚げた。
続きは地上に変更になった。
「ぐはぁ、ごほぉ、ごほぉ……」
瀕死の火竜が硬い地面に落とされた。
次は署名するまで死なないように、軽めの調教で回復しながら説得だ。
まずは弱点の氷魔法だ。神氷の杖から、遠距離魔法攻撃が発射された。
「ぐふう、た、助けてぇ……」
火竜は叫ぶ力も残っていない。氷の槍を一発撃ち込むだけで、素直に署名した。
爪に自分の血を付けて、スラスラと血文字で読めない名前を書いている。
回復されて縮小されると、頑丈な鳥籠の中に放り込まれた。
「ふぅー、手間取りました。でも、本物のドラゴンが手に入りました。早く名前を決めないといけませんね」
カノンは名前を考えながら、廃都を目指してサメ型飛行船を飛ばした。
火竜はオスなので、カッコイイ名前を考えている。
とりあえず初代と同じドラゴンに決めた。
「ここにはいないみたいです。待ち合わせ場所を決めておけば良かったです」
廃都の分かれた場所まで戻ると、誰もいなかった。
カノンは魔物図鑑を見ながら、上空からルセフ達を探し始めた。
図鑑の魔物が消えれば、そこにルセフ達がいる可能性が高い。
予想通りに魔物が消えると、その場所に飛行船を飛ばした。
「さっさとかかって来いよ。どこにも逃げられねえよ」
「ヤァッ、タァッ!」
「うわぁー、二人しか戦ってません」
飛行船から地上を見ると、ルセフとナンシーしか戦っていなかった。
他の二人はヘルハウンドをアイテムポーチに回収している。
パトラッシュは一応は吠えて、魔物の接近を教えている。
昨日よりは成長している。
カノンは飛行船を着陸させると、鳥籠と一緒に降りた。
ドラゴンは助かったと思っていたかもしれないが、これから決闘が始まる。
勝てばいいが、負ければ縮小されて、特別な訓練所に入れられる。
そこで青い友達と朝まで遊ぶことになる。
♢
「火竜を捕まえて来ました。二人は見てるだけですか?」
「ああ、カノンちゃん、お帰り。小さな火竜だね。それよりもあの二人お似合いだと思わない?」
「お似合い?」
二人は鳥籠の小さな火竜には興味がないようだ。
ウェインがルセフとナンシーを指差して、少し笑って聞いてきた。
カノンが首を傾げると、ジャンもナンシーを見ながら言ってきた。
「俺はにいちゃんは年上の女に、引っ張られるのが良いと思うんだよな。裁縫と料理が得意だから、俺は合格で良いと思う」
「いいや、戦闘能力の方が重要だ。冒険者は危険な仕事なんだ。帰りを待つ女性は心配なんだよ。一緒に働ければ、そういう心配はしなくて済む。冒険者カップルは長続きするんだ」
「本当かよ? お前もにいちゃんも、一度も恋人連れて来たこと無いじゃん。ねえ、姉ちゃんはどう思う?」
「ふぇっ⁉︎」
二人の男が恋話で盛り上がっている。
カノンにまで意見を求めているが、自分達と同じ恋愛素人だと知らない。
聞くなら自分達の母親に聞いた方が遥かにマシだ。
「うーん、無理ですね。ナンシーは年下には興味ないです。告白してもフラれるだけです」
それっぽいことを言っているが、ナンシーの好きな異性のタイプは全然知らない。
完全な個人的な意見だが、それを二人は信じてしまった。
「やっぱり高嶺の花かぁー。男爵家の使用人なら給料良いだろうからね」
「諦めるのは早いって。勝負に勝てばいいんだよ。勝って使用人を一人一人ずつ貰うんだよ」
ジャンは使用人の恋人が欲しいようだ。母親が聞けば、尻を何度も叩かれる台詞だ。
そして隣の悪い大人は注意もしないで、話に乗っている。
「それ良いねぇ~。じゃあ、俺はあの三つ編みの子が良いかな♪」
「はぁぁ? あれは俺んだよ! 俺の女に手出すんじゃねえよ!」
「お前はまだまだチャンスがあるんだから、譲れよ!」
仲が良かったのは一瞬だった。女性は誰の物でもない。
ウェインとジャンが三つ編み茶髪の使用人をめぐって喧嘩を始めた。
ミランダの使用人で、名前はルリ。年齢15歳の若い子供っぽい使用人だ。
「こほん、こほん、他にも可愛い子が近くにいるんじゃないですか?」
醜い争いを止めようと、カノンが軽い咳払いで注意を集めると、可愛いポーズをした。
「はぁぁ? どこにいるんだよ! 自分とか言ったらブッ殺すぞ!」
「カノンちゃん、そこ邪魔!」
「……」
だけど、男の本気の喧嘩は止められなかった。勝った方が三つ編み使用人を貰える。
金髪の使用人は誰も求めていない。黙って見ているしか出来ない。
0
お気に入りに追加
346
あなたにおすすめの小説
25歳のオタク女子は、異世界でスローライフを送りたい
こばやん2号
ファンタジー
とある会社に勤める25歳のOL重御寺姫(じゅうおんじひめ)は、漫画やアニメが大好きなオタク女子である。
社員旅行の最中謎の光を発見した姫は、気付けば異世界に来てしまっていた。
頭の中で妄想していたことが現実に起こってしまったことに最初は戸惑う姫だったが、自身の知識と持ち前の性格でなんとか異世界を生きていこうと奮闘する。
オタク女子による異世界生活が今ここに始まる。
※この小説は【アルファポリス】及び【小説家になろう】の同時配信で投稿しています。
転生したらチートでした
ユナネコ
ファンタジー
通り魔に刺されそうになっていた親友を助けたら死んじゃってまさかの転生!?物語だけの話だと思ってたけど、まさかほんとにあるなんて!よし、第二の人生楽しむぞー!!
隠密スキルでコレクター道まっしぐら
たまき 藍
ファンタジー
没落寸前の貴族に生まれた少女は、世にも珍しい”見抜く眼”を持っていた。
その希少性から隠し、閉じ込められて5つまで育つが、いよいよ家計が苦しくなり、人買いに売られてしまう。
しかし道中、隊商は強力な魔物に襲われ壊滅。少女だけが生き残った。
奇しくも自由を手にした少女は、姿を隠すため、魔物はびこる森へと駆け出した。
これはそんな彼女が森に入って10年後、サバイバル生活の中で隠密スキルを極め、立派な素材コレクターに成長してからのお話。
ぐ~たら第三王子、牧場でスローライフ始めるってよ
雑木林
ファンタジー
現代日本で草臥れたサラリーマンをやっていた俺は、過労死した後に何の脈絡もなく異世界転生を果たした。
第二の人生で新たに得た俺の身分は、とある王国の第三王子だ。
この世界では神様が人々に天職を授けると言われており、俺の父親である国王は【軍神】で、長男の第一王子が【剣聖】、それから次男の第二王子が【賢者】という天職を授かっている。
そんなエリートな王族の末席に加わった俺は、当然のように周囲から期待されていたが……しかし、俺が授かった天職は、なんと【牧場主】だった。
畜産業は人類の食文化を支える素晴らしいものだが、王族が従事する仕事としては相応しくない。
斯くして、父親に失望された俺は王城から追放され、辺境の片隅でひっそりとスローライフを始めることになる。
死に戻り公爵令嬢が嫁ぎ先の辺境で思い残したこと
Yapa
ファンタジー
ルーネ・ゼファニヤは公爵家の三女だが体が弱く、貧乏くじを押し付けられるように元戦奴で英雄の新米辺境伯ムソン・ペリシテに嫁ぐことに。 寒い地域であることが弱い体にたたり早逝してしまうが、ルーネは初夜に死に戻る。 もしもやり直せるなら、ルーネはしたいことがあったのだった。
異世界道中ゆめうつつ! 転生したら虚弱令嬢でした。チート能力なしでたのしい健康スローライフ!
マーニー
ファンタジー
※ほのぼの日常系です
病弱で閉鎖的な生活を送る、伯爵令嬢の美少女ニコル(10歳)。対して、亡くなった両親が残した借金地獄から抜け出すため、忙殺状態の限界社会人サラ(22歳)。
ある日、同日同時刻に、体力の限界で息を引き取った2人だったが、なんとサラはニコルの体に転生していたのだった。
「こういうときって、神様のチート能力とかあるんじゃないのぉ?涙」
異世界転生お約束の神様登場も特別スキルもなく、ただただ、不健康でひ弱な美少女に転生してしまったサラ。
「せっかく忙殺の日々から解放されたんだから…楽しむしかない。ぜっっったいにスローライフを満喫する!」
―――異世界と健康への不安が募りつつ
憧れのスローライフ実現のためまずは健康体になることを決意したが、果たしてどうなるのか?
魔法に魔物、お貴族様。
夢と現実の狭間のような日々の中で、
転生者サラが自身の夢を叶えるために
新ニコルとして我が道をつきすすむ!
『目指せ健康体!美味しいご飯と楽しい仲間たちと夢のスローライフを叶えていくお話』
※はじめは健康生活。そのうちお料理したり、旅に出たりもします。日常ほのぼの系です。
※非現実色強めな内容です。
※溺愛親バカと、あたおか要素があるのでご注意です。
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
天然人たらしが異世界転移してみたら。
織月せつな
ファンタジー
僕、夏見映(27)独身。
トラックに衝突されて死にかけたものの、どうにか腰痛が酷いくらいで仕事にも復帰出来た。
ある日、会社にやって来たおかしな男性に「お迎えに参りました」なんて言われてしまった。
まさかあの世ですか? やっぱり死んじゃうんですか? って動揺するのは仕方ないことだと思う。
けれど、死んじゃうと思ったのは勘違いだったようで、どうやら異世界に行くらしい。
まあ、それならいいか。と承諾してしまってから気付く。
異世界って何処?
温和な性格に中性的な顔立ちと体つきの綺麗なお兄さんである主人公。
男女問わず好意を持たれてしまうので、BL要素あり。
男性に「美人」と言うのは性転換してることになるそうですが(そう書き込まれました)男女問わず綺麗な人を美人と表記しています。他にも男性には使わない表現等出て来ると思いますが、主人公は男性であって、自分の性別も分からない白痴ではありませんので、ご了承下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる