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19日目
招かれざる客
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「お父様の心配な気持ちは理解できます。知らない男に大事な娘を奪われるのです。ですが安心してください。どんなに険しい道でも、愛し合う二人で歩けば、幸せを感じるものです。私とカノンさんを結婚させてください」
「娘……」
エリックは伯爵の素敵なプロポーズを聞いて、カノンに代わって返事しそうになった。
だが、本番はこれからだ。娘と私をよろしいお願いしますの返事は飲み込んだ。
「つまりエドウィン伯爵様もジョブは関係ないということですね?」
「もちろんです。女性は物でも、夫の所有物でもありません。そちらの二人は違うようですが……」
「うぐっ!」
男爵二人は伯爵に言い返したいが、地位が上の相手に言えるわけがない。
ここまではほぼ予定通りに進んでいるから、エリックは三人に最終確認した。
「なるほど。ではジョブが無くても、娘を嫁に欲しいんですね?」
「当たり前です。先程は言葉足らずで不快な思いをさせてしまい申し訳ありません。ジョブを含めて、カノンさんを愛しています」
「エリック殿、先程からしつこいですよ。ジョブは関係ありません。我々を金目当ての俗物と一緒にしないでもらいたい」
何度も確認した所為で、男爵二人が不機嫌になっている。
そろそろ潮時だと、エリックがカノンとパトラッシュを呼んだ。
計画通りに伯爵にカノン、屋敷を貸してくれた男爵にパトラッシュを与える。
「実は最初から娘の結婚相手は決めていました。エドウィン伯爵様に娘を頼もうと思っています。そしてグリム男爵様には、このパトラッシュをお願いしようと思っています」
「なぐっ! 犬だと⁉︎」
「カノンさん、これからは二人で幸せな人生を歩みましょう」
逆立てた金髪のグリム男爵の顔は明らかに激怒している。
逆にエドウィン伯爵はカノンの手を握って、幸せにすると誓っている。
対照的な二人だが、まだエリックの話には続きがある。
「実は伯爵様と男爵様には内緒にしていたのですが、カノンにはジョブが無いのです。飛行船を作っていたのは、このパトラッシュなんです。ほら、パトラッシュ。これを飛行船にしなさい」
「ワフゥ!」
エリックは上着のポケットに入れていた、飛行船の切れ端をパトラッシュの前に投げた。
その金色の切れ端にパトラッシュが手を置くと、修復が始まった。
あっという間に飛行船が出来上がった。
「おお! 犬が本当に作ったぞ!」
「ふ、ふっははははは♪ なるほどなるほど。実に残念ですが、カノンさんはエドウィン伯爵様にお任せするしかないようだ。愛し合う二人を邪魔することは出来ない。よしよし、パトラッシュ。今日からここがお前の家だぞぉ~♪」
「気安く触るなワン」
「あぅ……こいつぅ~、やったなぁ~♪」
嘘のような変わりぶりだ。グリム男爵は笑いを堪えられずに笑っている。
地獄から天国にやって来たように、笑顔でパトラッシュを撫で回して、お手パンチを食らっている。
「……これはどういうことですか? 説明してもらいましょうか」
「どうしましたか、エドウィン伯爵様? 顔色が悪いようですが?」
逆にカノンの手を握って、幸せそうにしていた伯爵が、笑みを消してエリックの前にやって来た。
伯爵もカノンではなく、本当はジョブ目当てだったようだ。騙されて怒っている。
「話が違います。娘が作った飛行船に酒に服と、あなたはそう言ったはずです」
「それは申し訳ありません。ですが先程から何度も確認したではないですか。娘にジョブが無くても嫁に欲しいかと」
「ふぅー……あんなものは、ものの例えだと思うに決まっている。カノンさん、パトラッシュの両方ともうちが引き取ります。それで良いですね?」
伯爵が深いため息を吐くと、強欲にも全部欲しいと要求してきた。
その全部の中には、エリックは含まれていない。
カノンが心配した通り、ジョブ目当ての男しかいなかった。
「やれやれ。娘の心配した通りだ。ジョブ目当てで、娘の幸せを考えていない。そんな男に娘は任せられないな。パトラッシュが欲しいなら、これから競売を始めます。そちらに参加してください」
「ワフゥ⁉︎」
カノンの計画は成功した。次はエリックの計画の開始だ。
こんな不愉快な悪戯を貴族にして、謝っただけで許されるわけがない。
本当にパトラッシュには身代わりになってもらう。
文句なしの緊急オークションが始まった。
「1億!」「20億!」「35億!」「40億!」
参加者が次々に金額を言っている。
犬の値段にしては破格な値段だが、雑魚の戦いに興味はない。
「500億」
「っ‼︎」
伯爵が全員を黙らせる金額を言った。
「他にいませんか? いないようですね。フッ。では決定ですね……」
エリックは確認しているが、誰もいないようだ。
大した金額ではないと、エリックは笑っている。
500億程度で、カノンもパトラッシュも渡さない。
この競売の意味は、伯爵自身に慰謝料——和解金を決めてもらう為だ。
500億を渡して、二度と娘に近づくなと宣言する為だ。
払う必要のない和解金を払う、超カッコイイ特別経営相談役のアピールの為だ。
だが、エリックの計画を邪魔する女が現れた。
「0です。勝手にネロエスト家の名前を使い、私の犬を勝手に売るなんて、エリック・エルロン、平民の分際でどういうつもりかしら?」
「はっ! そ、その声は……」
夜会に招待したはずのない、招かれざる客が潜り込んでいた。
エリックが恐る恐る振り返ると、離婚した妻の男爵婦人——ロクサーヌ・ネロエストがいた。
「娘……」
エリックは伯爵の素敵なプロポーズを聞いて、カノンに代わって返事しそうになった。
だが、本番はこれからだ。娘と私をよろしいお願いしますの返事は飲み込んだ。
「つまりエドウィン伯爵様もジョブは関係ないということですね?」
「もちろんです。女性は物でも、夫の所有物でもありません。そちらの二人は違うようですが……」
「うぐっ!」
男爵二人は伯爵に言い返したいが、地位が上の相手に言えるわけがない。
ここまではほぼ予定通りに進んでいるから、エリックは三人に最終確認した。
「なるほど。ではジョブが無くても、娘を嫁に欲しいんですね?」
「当たり前です。先程は言葉足らずで不快な思いをさせてしまい申し訳ありません。ジョブを含めて、カノンさんを愛しています」
「エリック殿、先程からしつこいですよ。ジョブは関係ありません。我々を金目当ての俗物と一緒にしないでもらいたい」
何度も確認した所為で、男爵二人が不機嫌になっている。
そろそろ潮時だと、エリックがカノンとパトラッシュを呼んだ。
計画通りに伯爵にカノン、屋敷を貸してくれた男爵にパトラッシュを与える。
「実は最初から娘の結婚相手は決めていました。エドウィン伯爵様に娘を頼もうと思っています。そしてグリム男爵様には、このパトラッシュをお願いしようと思っています」
「なぐっ! 犬だと⁉︎」
「カノンさん、これからは二人で幸せな人生を歩みましょう」
逆立てた金髪のグリム男爵の顔は明らかに激怒している。
逆にエドウィン伯爵はカノンの手を握って、幸せにすると誓っている。
対照的な二人だが、まだエリックの話には続きがある。
「実は伯爵様と男爵様には内緒にしていたのですが、カノンにはジョブが無いのです。飛行船を作っていたのは、このパトラッシュなんです。ほら、パトラッシュ。これを飛行船にしなさい」
「ワフゥ!」
エリックは上着のポケットに入れていた、飛行船の切れ端をパトラッシュの前に投げた。
その金色の切れ端にパトラッシュが手を置くと、修復が始まった。
あっという間に飛行船が出来上がった。
「おお! 犬が本当に作ったぞ!」
「ふ、ふっははははは♪ なるほどなるほど。実に残念ですが、カノンさんはエドウィン伯爵様にお任せするしかないようだ。愛し合う二人を邪魔することは出来ない。よしよし、パトラッシュ。今日からここがお前の家だぞぉ~♪」
「気安く触るなワン」
「あぅ……こいつぅ~、やったなぁ~♪」
嘘のような変わりぶりだ。グリム男爵は笑いを堪えられずに笑っている。
地獄から天国にやって来たように、笑顔でパトラッシュを撫で回して、お手パンチを食らっている。
「……これはどういうことですか? 説明してもらいましょうか」
「どうしましたか、エドウィン伯爵様? 顔色が悪いようですが?」
逆にカノンの手を握って、幸せそうにしていた伯爵が、笑みを消してエリックの前にやって来た。
伯爵もカノンではなく、本当はジョブ目当てだったようだ。騙されて怒っている。
「話が違います。娘が作った飛行船に酒に服と、あなたはそう言ったはずです」
「それは申し訳ありません。ですが先程から何度も確認したではないですか。娘にジョブが無くても嫁に欲しいかと」
「ふぅー……あんなものは、ものの例えだと思うに決まっている。カノンさん、パトラッシュの両方ともうちが引き取ります。それで良いですね?」
伯爵が深いため息を吐くと、強欲にも全部欲しいと要求してきた。
その全部の中には、エリックは含まれていない。
カノンが心配した通り、ジョブ目当ての男しかいなかった。
「やれやれ。娘の心配した通りだ。ジョブ目当てで、娘の幸せを考えていない。そんな男に娘は任せられないな。パトラッシュが欲しいなら、これから競売を始めます。そちらに参加してください」
「ワフゥ⁉︎」
カノンの計画は成功した。次はエリックの計画の開始だ。
こんな不愉快な悪戯を貴族にして、謝っただけで許されるわけがない。
本当にパトラッシュには身代わりになってもらう。
文句なしの緊急オークションが始まった。
「1億!」「20億!」「35億!」「40億!」
参加者が次々に金額を言っている。
犬の値段にしては破格な値段だが、雑魚の戦いに興味はない。
「500億」
「っ‼︎」
伯爵が全員を黙らせる金額を言った。
「他にいませんか? いないようですね。フッ。では決定ですね……」
エリックは確認しているが、誰もいないようだ。
大した金額ではないと、エリックは笑っている。
500億程度で、カノンもパトラッシュも渡さない。
この競売の意味は、伯爵自身に慰謝料——和解金を決めてもらう為だ。
500億を渡して、二度と娘に近づくなと宣言する為だ。
払う必要のない和解金を払う、超カッコイイ特別経営相談役のアピールの為だ。
だが、エリックの計画を邪魔する女が現れた。
「0です。勝手にネロエスト家の名前を使い、私の犬を勝手に売るなんて、エリック・エルロン、平民の分際でどういうつもりかしら?」
「はっ! そ、その声は……」
夜会に招待したはずのない、招かれざる客が潜り込んでいた。
エリックが恐る恐る振り返ると、離婚した妻の男爵婦人——ロクサーヌ・ネロエストがいた。
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