上 下
57 / 121
14日目

中級冒険者ベクトル

しおりを挟む
「この卑怯者が。俺が居ない時でも狙っているのか?」

【名前=ベクトル・リングベルト 種族=人間(男) 
 レベル=45(最大レベル) HP=3571/3571 MP=944/944
 力=152 体力=152 知性=134 精神=152 器用さ=152 素早さ=126】

 宿屋に呼びに行った冒険者三人と一緒に、青髪、口髭の褐色の男が現れた。
 街一番の冒険者で、その実力はルセフの三倍近くもある。
 鍛え上げられた力は、下級冒険者では手も足も出ない。

「やっと現れましたね。私が勝ったら、エリックさんと私は冒険者ギルドに戻ります。文句ありませんよね!」

 現れたベクトルに人差し指を向けて、カノンは堂々と宣言した。
 もう勝つ気しかない。
 
「ああ、文句はねえ。ただし、こっちも条件がある。俺が勝ったら装備を置いて、素っ裸で家に帰れ」
「いいですよ! そっちも素っ裸で街を一周してくださいよ!」
「ああ、逆立ちしてやってやるよ」

 子供の喧嘩だが、敗者には辱めが待っている。
 ただし、この勝負は最初から勝者が決まっている。
 才能と努力で勝てない相手がいる。

「良いねぇ~♪ 流石はベクトルさんだぜ!」
「安心しろよ! 俺達が家までお見送りしてやるよ!」

【名前=カノン・ネロエスト 種族=人間(女) 
 レベル=100(最大レベル) HP=7524/7524 MP=2310/2310
 力=286 体力=286 知性=352 精神=352 器用さ=286 素早さ=264】

 カノンの力はベクトルの約二倍だ。
 二人は手を握り合うと、始めの合図で左手が動いた。

「ラアッー‼︎」
「タアッー‼︎」

 二人とも最初から腕相撲をするつもりがなかった。
 お互いの顔面に左拳を叩き込もうとした。だけど、素早さはカノンが上だ。
 ベクトルの拳が届く前に、カノンの左拳が炸裂した。

「ふんがあっー‼︎」

 手加減を知らない素人の全力パンチが、ベクトルの頭を激しく打ち抜いた。
 気絶したベクトルが、フラフラ揺れながらテーブルに倒れて、テーブルを破壊した。
 あとでカノンが修復するから、お店の迷惑にはならない。

「う、嘘だろ……ベクトルさん?」
「痛たたたっ。殴るの痛いです」

 冒険者達がベクトルが小娘に倒されて驚いている。
 父親も殴ったことがないカノンは、左手を振って痛がっている。
 極上回復薬を飲んで治療すると、カノンは残りの冒険者に聞いた。

「他に腕相撲する人はいますか?」
「…………」

 挑戦者は誰もいないようだ。そして当然、敗者には罰ゲームが待っている。
 気絶したベクトルは服を脱がされた後に、馬小屋の馬に乗せられた。
 逆立ちは出来ないので、街一周だけで許された。

「ふぅー。冒険者カードを取り戻せました」

 ベクトルに奪われた、金色の冒険者カードを無事に取り戻した。
 カノンはパトラッシュに乗って、家に向かっている。
 明日からはまた冒険者の仕事が待っている。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

25歳のオタク女子は、異世界でスローライフを送りたい

こばやん2号
ファンタジー
とある会社に勤める25歳のOL重御寺姫(じゅうおんじひめ)は、漫画やアニメが大好きなオタク女子である。 社員旅行の最中謎の光を発見した姫は、気付けば異世界に来てしまっていた。 頭の中で妄想していたことが現実に起こってしまったことに最初は戸惑う姫だったが、自身の知識と持ち前の性格でなんとか異世界を生きていこうと奮闘する。 オタク女子による異世界生活が今ここに始まる。 ※この小説は【アルファポリス】及び【小説家になろう】の同時配信で投稿しています。

隠密スキルでコレクター道まっしぐら

たまき 藍
ファンタジー
没落寸前の貴族に生まれた少女は、世にも珍しい”見抜く眼”を持っていた。 その希少性から隠し、閉じ込められて5つまで育つが、いよいよ家計が苦しくなり、人買いに売られてしまう。 しかし道中、隊商は強力な魔物に襲われ壊滅。少女だけが生き残った。 奇しくも自由を手にした少女は、姿を隠すため、魔物はびこる森へと駆け出した。 これはそんな彼女が森に入って10年後、サバイバル生活の中で隠密スキルを極め、立派な素材コレクターに成長してからのお話。

転生したらチートでした

ユナネコ
ファンタジー
通り魔に刺されそうになっていた親友を助けたら死んじゃってまさかの転生!?物語だけの話だと思ってたけど、まさかほんとにあるなんて!よし、第二の人生楽しむぞー!!

ぐ~たら第三王子、牧場でスローライフ始めるってよ

雑木林
ファンタジー
 現代日本で草臥れたサラリーマンをやっていた俺は、過労死した後に何の脈絡もなく異世界転生を果たした。  第二の人生で新たに得た俺の身分は、とある王国の第三王子だ。  この世界では神様が人々に天職を授けると言われており、俺の父親である国王は【軍神】で、長男の第一王子が【剣聖】、それから次男の第二王子が【賢者】という天職を授かっている。  そんなエリートな王族の末席に加わった俺は、当然のように周囲から期待されていたが……しかし、俺が授かった天職は、なんと【牧場主】だった。  畜産業は人類の食文化を支える素晴らしいものだが、王族が従事する仕事としては相応しくない。  斯くして、父親に失望された俺は王城から追放され、辺境の片隅でひっそりとスローライフを始めることになる。

異世界道中ゆめうつつ! 転生したら虚弱令嬢でした。チート能力なしでたのしい健康スローライフ!

マーニー
ファンタジー
※ほのぼの日常系です 病弱で閉鎖的な生活を送る、伯爵令嬢の美少女ニコル(10歳)。対して、亡くなった両親が残した借金地獄から抜け出すため、忙殺状態の限界社会人サラ(22歳)。 ある日、同日同時刻に、体力の限界で息を引き取った2人だったが、なんとサラはニコルの体に転生していたのだった。 「こういうときって、神様のチート能力とかあるんじゃないのぉ?涙」 異世界転生お約束の神様登場も特別スキルもなく、ただただ、不健康でひ弱な美少女に転生してしまったサラ。 「せっかく忙殺の日々から解放されたんだから…楽しむしかない。ぜっっったいにスローライフを満喫する!」 ―――異世界と健康への不安が募りつつ 憧れのスローライフ実現のためまずは健康体になることを決意したが、果たしてどうなるのか? 魔法に魔物、お貴族様。 夢と現実の狭間のような日々の中で、 転生者サラが自身の夢を叶えるために 新ニコルとして我が道をつきすすむ! 『目指せ健康体!美味しいご飯と楽しい仲間たちと夢のスローライフを叶えていくお話』 ※はじめは健康生活。そのうちお料理したり、旅に出たりもします。日常ほのぼの系です。 ※非現実色強めな内容です。 ※溺愛親バカと、あたおか要素があるのでご注意です。

天然人たらしが異世界転移してみたら。

織月せつな
ファンタジー
僕、夏見映(27)独身。 トラックに衝突されて死にかけたものの、どうにか腰痛が酷いくらいで仕事にも復帰出来た。 ある日、会社にやって来たおかしな男性に「お迎えに参りました」なんて言われてしまった。 まさかあの世ですか? やっぱり死んじゃうんですか? って動揺するのは仕方ないことだと思う。 けれど、死んじゃうと思ったのは勘違いだったようで、どうやら異世界に行くらしい。 まあ、それならいいか。と承諾してしまってから気付く。 異世界って何処? 温和な性格に中性的な顔立ちと体つきの綺麗なお兄さんである主人公。 男女問わず好意を持たれてしまうので、BL要素あり。 男性に「美人」と言うのは性転換してることになるそうですが(そう書き込まれました)男女問わず綺麗な人を美人と表記しています。他にも男性には使わない表現等出て来ると思いますが、主人公は男性であって、自分の性別も分からない白痴ではありませんので、ご了承下さい。

死霊王は異世界を蹂躙する~転移したあと処刑された俺、アンデッドとなり全てに復讐する~

未来人A
ファンタジー
主人公、田宮シンジは妹のアカネ、弟のアオバと共に異世界に転移した。 待っていたのは皇帝の命令で即刻処刑されるという、理不尽な仕打ち。 シンジはアンデッドを自分の配下にし、従わせることの出来る『死霊王』というスキルを死後開花させる。 アンデッドとなったシンジは自分とアカネ、アオバを殺した帝国へ復讐を誓う。 死霊王のスキルを駆使して徐々に配下を増やし、アンデッドの軍団を作り上げていく。

ちょっと神様!私もうステータス調整されてるんですが!!

べちてん
ファンタジー
アニメ、マンガ、ラノベに小説好きの典型的な陰キャ高校生の西園千成はある日河川敷に花見に来ていた。人混みに酔い、体調が悪くなったので少し離れた路地で休憩していたらいつの間にか神域に迷い込んでしまっていた!!もう元居た世界には戻れないとのことなので魔法の世界へ転移することに。申し訳ないとか何とかでステータスを古龍の半分にしてもらったのだが、別の神様がそれを知らずに私のステータスをそこからさらに2倍にしてしまった!ちょっと神様!もうステータス調整されてるんですが!!

処理中です...