48 / 121
11日目
特別経営相談役
しおりを挟む
「ひゃひひはははっ~♪」
酔っ払って上機嫌になったギルド長を、冒険者ギルドに送り届けた。
約束通りにエリックは職員として仕事を始めた。
最初の仕事は娘を上級冒険者にすることだった。
「おめでとう、カノン。今日からお前は上級冒険者だ」
「わぁ~♪ ありがとうございます!」
金色の冒険者カードを渡して、エリックは拍手している。
職権濫用ではなく、ギルド長から許可は貰っている。
ギルド長が覚えてないと言えないように、書類に署名と認め印まで作成済みだ。
「お父様、上級冒険者になったら何が出来るんですか?」
「ごほん、ごほん。今は仕事中だ。職場ではエリックさんと呼びなさい」
「すみません、お父、エリックさん!」
カノンの間違った呼び方を咳払いした後に、エリックは注意した。
仕事場では父娘だと内緒にしたいようだ。
「うむ。よろしい。ディラン君、教えてやりなさい」
「くっ、何で俺が……」
エリックに呼ばれて、ディランが嫌々やって来た。
明らかに年齢だけ上の、新入りの言うことは聞きたくなさそうだ。
それでも逆らったらどうなるか分かっている。
ディランは上級冒険者の説明を始めた。
「上級冒険者の条件はレベル60以上だ。ほとんどがレアスキルの持ち主で、レベルの低いお前は本当はなれない。その辺を忘れるなよ」
「ディラン君、私の話を聞いていたのかね? 上級冒険者になる方法ではなく、何が出来るのか聞いているんだ」
「申し訳ありません。特別経営相談役」
「分かったのならいい。さあ、続けなさい」
エリックの仕事は偉そうにするだけらしい。
大変そうな仕事だが、娘の前だから気合いが入っている。ディランを厳しく指導している。
ディランは形だけの謝罪をすると、続きを話し出した。
「上級になってもやることは変わらない。依頼人が上級になるだけだ。大商人、貴族、王族から依頼が来た場合、優先的にお前を紹介するだけだ」
「うむ。そういうことだ。ディラン君、彼女に上級依頼を見せてあげなさい」
エリックは何も知らないのに知っているフリをして、ディランに上級依頼を注文した。
流石のディランも、一人の冒険者を優遇しまくる相談役に反論した。
「申し訳ありません。現在、この街は冒険者が不足しています。彼女には配達と護衛を優先的に行ってもらいたいと思っています」
特別経営相談役なら、冒険者ギルドを潰す経営はやめてもらう。
毒酒飲ませて、街の冒険者を酔い潰したんだから、回復するまで責任取ってもらう。
「確かにお客様に迷惑をかけると、評判が悪くなる。次から仕事が来なくなるな」
「その通りです。そして残念ながら、この街の冒険者ギルドの評判は高くありません。現在、上級依頼は一件もありません」
一応商人だったから、エリックは評判が大事なのは知っている。
そして一度失った評判を取り戻すのは、ほとんど不可能に近いのも知っている。
「なるほど。選べる仕事もなしか。カノン、信用できる人間に飛行船を貸して、配達をやらせなさい。友達に冒険者がいただろう。それでいい。私も配達に行く!」
「分かりました。誘ってみます」
「やれやれ。忙しくなってきたぞ!」
ディランから冒険者ギルドの状況を聞いて、特別経営相談役が自ら配達員に立候補した。
冒険者ギルドの危機を救おうと、英雄になりきって的確に娘に指示を出している。
まずは評判を上げる為に下級依頼を頑張るようだ。
小型飛行船を借りると、配達のアイテムポーチを持って近くの町に出発した。
酔っ払って上機嫌になったギルド長を、冒険者ギルドに送り届けた。
約束通りにエリックは職員として仕事を始めた。
最初の仕事は娘を上級冒険者にすることだった。
「おめでとう、カノン。今日からお前は上級冒険者だ」
「わぁ~♪ ありがとうございます!」
金色の冒険者カードを渡して、エリックは拍手している。
職権濫用ではなく、ギルド長から許可は貰っている。
ギルド長が覚えてないと言えないように、書類に署名と認め印まで作成済みだ。
「お父様、上級冒険者になったら何が出来るんですか?」
「ごほん、ごほん。今は仕事中だ。職場ではエリックさんと呼びなさい」
「すみません、お父、エリックさん!」
カノンの間違った呼び方を咳払いした後に、エリックは注意した。
仕事場では父娘だと内緒にしたいようだ。
「うむ。よろしい。ディラン君、教えてやりなさい」
「くっ、何で俺が……」
エリックに呼ばれて、ディランが嫌々やって来た。
明らかに年齢だけ上の、新入りの言うことは聞きたくなさそうだ。
それでも逆らったらどうなるか分かっている。
ディランは上級冒険者の説明を始めた。
「上級冒険者の条件はレベル60以上だ。ほとんどがレアスキルの持ち主で、レベルの低いお前は本当はなれない。その辺を忘れるなよ」
「ディラン君、私の話を聞いていたのかね? 上級冒険者になる方法ではなく、何が出来るのか聞いているんだ」
「申し訳ありません。特別経営相談役」
「分かったのならいい。さあ、続けなさい」
エリックの仕事は偉そうにするだけらしい。
大変そうな仕事だが、娘の前だから気合いが入っている。ディランを厳しく指導している。
ディランは形だけの謝罪をすると、続きを話し出した。
「上級になってもやることは変わらない。依頼人が上級になるだけだ。大商人、貴族、王族から依頼が来た場合、優先的にお前を紹介するだけだ」
「うむ。そういうことだ。ディラン君、彼女に上級依頼を見せてあげなさい」
エリックは何も知らないのに知っているフリをして、ディランに上級依頼を注文した。
流石のディランも、一人の冒険者を優遇しまくる相談役に反論した。
「申し訳ありません。現在、この街は冒険者が不足しています。彼女には配達と護衛を優先的に行ってもらいたいと思っています」
特別経営相談役なら、冒険者ギルドを潰す経営はやめてもらう。
毒酒飲ませて、街の冒険者を酔い潰したんだから、回復するまで責任取ってもらう。
「確かにお客様に迷惑をかけると、評判が悪くなる。次から仕事が来なくなるな」
「その通りです。そして残念ながら、この街の冒険者ギルドの評判は高くありません。現在、上級依頼は一件もありません」
一応商人だったから、エリックは評判が大事なのは知っている。
そして一度失った評判を取り戻すのは、ほとんど不可能に近いのも知っている。
「なるほど。選べる仕事もなしか。カノン、信用できる人間に飛行船を貸して、配達をやらせなさい。友達に冒険者がいただろう。それでいい。私も配達に行く!」
「分かりました。誘ってみます」
「やれやれ。忙しくなってきたぞ!」
ディランから冒険者ギルドの状況を聞いて、特別経営相談役が自ら配達員に立候補した。
冒険者ギルドの危機を救おうと、英雄になりきって的確に娘に指示を出している。
まずは評判を上げる為に下級依頼を頑張るようだ。
小型飛行船を借りると、配達のアイテムポーチを持って近くの町に出発した。
0
お気に入りに追加
345
あなたにおすすめの小説
「お姉ちゃん、見てるぅ~?」
藍田ひびき
恋愛
『お姉ちゃん、見てるぅ~?私、今から勇者様と一緒に魔王を倒してきまーす』
聖女エステルの元へ送られてきた映像記録には、婚約者の勇者アレンと妹デイジーが映っていた。映像のアレンはエステルとの婚約を破棄し、デイジーを選ぶと告げる。
両親に溺愛されるデイジーに、様々な物を奪われてきたエステル。映像を見ても両親は妹の味方で、彼女が悪いと責め立てる。だが事態は思わぬ方向へ進んでいって……?
※ 設定はゆるふわです。
※ なろうにも投稿しています。
会社で「ポーションを作ってくれ」と無茶振りされました
みこと
ファンタジー
私の名前は上原美里(うえはらみさと)
某製薬会社に勤める27歳のOLです。
ある日部長から「ポーションを作ってくれ」と頼まれました。
えええ、ポーションってあの異世界の。
そんなものできるわけないでしょうが。
でも部長に頭を下げられて、必死に説得されて。
仕方なく作ることにしました。
果たして美里はポーションを作ることができるのか。
田舎者の薬師は平穏に暮らしたい。
シグマ
ファンタジー
田舎の農村で口減らしの為に町へ奉公に出ることになったシャルは、とある薬屋で働くことになった。
そこでひたすらにポーションを作り続けていたら知らないうちに効き目の良さが噂になり、いつしか聖女のいる薬屋と呼ばれるように。
平穏な日々を守るためにもシャルは努力を続けるのだが……。
侯爵様にお菓子目当ての求婚をされて困っています ~婚約破棄された元宮廷薬術師は、隣国でお菓子屋さんを営む~
瀬名 翠
ファンタジー
「ポーションが苦い」と苦情が殺到し、ドロテアが勤める宮廷薬術師団は解体された。無職になった彼女を待ち受けていたのは、浮気者の婚約者からの婚約破棄と、氷のように冷たい父からの勘当。
有無を言わさず馬車で運ばれたのは、隣国の王都。ひょんなことから”喫茶セピア”で働くことになった。ある日、薬術レベルが最高になって身についていた”薬術の天女”という特殊スキルが露呈する。そのスキルのおかげで、ドロテアが作ったものにはポーションと同じような効果がつくらしい。
身体つきの良い甘党イケメンに目をつけられ、あれよあれよと家に連れ去られる彼女は、混乱するままお菓子屋さんを営むことになった。
「お菓子につられて求婚するな!」なドロテアと、甘党騎士団長侯爵の、ほんのり甘いおはなし。
さよなら、英雄になった旦那様~ただ祈るだけの役立たずの妻のはずでしたが…~
遠雷
恋愛
「フローラ、すまない……。エミリーは戦地でずっと俺を支えてくれたんだ。俺はそんな彼女を愛してしまった......」
戦地から戻り、聖騎士として英雄になった夫エリオットから、帰還早々に妻であるフローラに突き付けられた離縁状。エリオットの傍らには、可憐な容姿の女性が立っている。
周囲の者達も一様に、エリオットと共に数多の死地を抜け聖女と呼ばれるようになった女性エミリーを称え、安全な王都に暮らし日々祈るばかりだったフローラを庇う者はごく僅かだった。
「……わかりました、旦那様」
反論も無く粛々と離縁を受け入れ、フローラは王都から姿を消した。
その日を境に、エリオットの周囲では異変が起こり始める。
死を回避したい悪役令嬢は、ヒロインを破滅へと導く
miniko
恋愛
お茶会の参加中に魔獣に襲われたオフィーリアは前世を思い出し、自分が乙女ゲームの2番手悪役令嬢に転生してしまった事を悟った。
ゲームの結末によっては、断罪されて火あぶりの刑に処されてしまうかもしれない立場のキャラクターだ。
断罪を回避したい彼女は、攻略対象者である公爵令息との縁談を丁重に断ったのだが、何故か婚約する代わりに彼と友人になるはめに。
ゲームのキャラとは距離を取りたいのに、メインの悪役令嬢にも妙に懐かれてしまう。
更に、ヒロインや王子はなにかと因縁をつけてきて……。
平和的に悪役の座を降りたかっただけなのに、どうやらそれは無理みたいだ。
しかし、オフィーリアが人助けと自分の断罪回避の為に行っていた地道な根回しは、徐々に実を結び始める。
それがヒロインにとってのハッピーエンドを阻む結果になったとしても、仕方の無い事だよね?
だって本来、悪役って主役を邪魔するものでしょう?
※主人公以外の視点が入る事があります。主人公視点は一人称、他者視点は三人称で書いています。
※連載開始早々、タイトル変更しました。(なかなかピンと来ないので、また変わるかも……)
※感想欄は、ネタバレ有り/無しの分類を一切おこなっておりません。ご了承下さい。
10歳になると妖精と契約できる世界でハズレ妖精と契約してしまった少年
もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
誕生日の朝、カイルは町で一番美味しいミルクを買いに出掛けた。
この国では十歳から妖精と契約して、妖精達が住む世界『夢界』に行く事が出来るようになるからだ。
夢界に行けるのは、十歳から大人になるまでの短い期間だけど、多くの子供が妖精と契約できるように頑張ってミルクを用意する。
そして、カイルの頑張りに応えるように、夜に窓をコンコンと叩く音が聞こえた。
喜んでベッドから起きたカイルは、小鳥のように小さく、羽の生えた綺麗な妖精を探した。
だけど、窓の外にいたのは、どう見ても羽の生えていない人間のお兄さんだった。
カイルは「妖精さんだよ。家に入れて」と笑顔で言うお兄さんを無視すると、カーテンを閉めた。
明らかに妖精さんじゃなくて、泥棒さんだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる