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4日目
道具屋・不動産屋
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「おじ様。お店に置いてある商品を、全種類一つずつください」
道具屋に到着したカノンは、目当ての荷車を手に入れた。
ついでに道具屋の優しい店主に、段ボールでお世話になったお礼がしたかった。
店の商品を大人買いしようとした。
「あははっ。そんなことしなくてもいいよ。必要な物を買ってくれるのが一番嬉しいんだから」
だけど、それは店主に笑顔で断られてしまった。
「そうですか……じゃあ、回復薬(HP回復)と魔法薬(MP回復)と毒消薬を一本ずつください」
「はい、毎度あり——冒険者になったみたいだね。お金があるなら、魔物図鑑やダンジョン図鑑、素材図鑑や魔法図鑑も置いてあるよ。知識はお金よりも価値があるってね」
沢山ある商品の中で必要なのが、三つしかないのはちょっと失礼だが、店主は笑っている。
カノンから小金貨2枚受け取ると、大銀貨7枚を返した。
そして本が置かれた棚を手で差して、オススメしている。
「本ですか……」
本棚の前で、カノンは買おうか考えている。文字は読めるけど、勉強は苦手だった。
だけど本を進化させると、どうなるのか興味がある。
店の商品は断られたから、こっちを大人買いすることにした。
「おじ様。この本棚の本を全種類一冊ずつください」
「…………」
道具屋の店主は、学習能力のないカノンにちょっと呆れている。
それでも本を読めば、少しは学習するはずだと信じることにした。
大金貨を2枚受け取ると、店から出て行く少女の背中を見送った。
♢
「あとは使用人付きの家ですね」
「ク、クゥーン!」
今日の残りの予定は家の購入だ。
使用人付きは無理かもしれないが、家は豪邸でも何でも買える。
街の不動産屋に荷車で行くと、あとで柔らかい敷物を買おうと決めた。
思ったよりも乗り心地が悪かった。
「すみません。使用人付きのお家はありますか?」
「えっと……とりあえずお席にお座りください」
「はい」
不動産屋には三人の従業員がいた。
そのうちの長い緑髪の女性が、厄介なお客様の対応に志願した。
「本日はようこそおいでくださいました。お客様の担当のフィリア・メープルです。どのような家をお探しでしょうか?」
カウンター前の椅子に座るカノンに、フィリアと名乗る女性が丁寧にお辞儀して、椅子に座った。
年齢は23歳で、黒い制服を執事みたいに着て、女性らしさの中に男らしいを持っている。
そんな彼女のカノンの第一印象は、金持ちの馬鹿な娘がやって来た、だ。
「使用人付きで、お風呂と食事の用意をしてくれて、庭付きの家がいいです」
「そうですか……それだと最近ある貴族様のお屋敷が売り出されたところです。少しお高めなんですが、張り紙を出せば、使用人はすぐに集まると思いますよ」
「わぁ~! それいいですね! どんなお屋敷なんです?」
めちゃくちゃな要望だが、フィリアはウンウン頷いている。
全部聞き終わると、ちょうどいい物件があったので紹介してみた。
まずは超高めの物件を紹介して、少し高めの物件を紹介する。
そうすることで、客にお得感を与えることが出来る。
「このお屋敷なんですけど——」
「あー、これはいいです」
「え? あ、はい。かしこまりました……」
フィリアが12億ギルドの物件を紹介しようとしたが、その屋敷に最近まで住んでいた。
新生活を送りたいのに、昔の家に戻るつもりはなかった。
カノンは素早く断って、他の物件を紹介してくれるように頼んだ。
「ではこちらの物件はどうでしょうか?」
「うわぁー、穴だらけですね。物置きですか?」
あまりの即決否定に、もしかすると嫌がらせかもしれない。
そう思ったフィリアは冗談で、今度はゴミ物件を紹介してみた。
平屋の一軒家で、風呂とトイレも付いて、驚き価格の3万ギルドだ。
問題があるとしたら、パトラッシュの体当たり一発で壊れそうな廃屋だということだ。
修理するのはまず無理で、住みたいなら解体費用と新築の建築費用が必要になる。
軽く計算して、350万ギルドになるので、貴族の屋敷と比べるとお手軽物件ではある。
「こちらは解体必須ですが、住宅地なので使用人は集まりやすいと思いますよ」
「じゃあ、ここでお願いします」
「え? 本当にいいんですか?」
一応仕事なので、フィリアは褒められる所だけは褒めた。
でも自分なら絶対に住みたくない。
建物と建物の間にある廃屋で、住宅地密集地だから、朝早くから夜遅くまでうるさい。
「はい、問題ないです。ここでお願いします」
「かしこまりました。すぐに土地と家の権利書をご用意します」
もう一度確認すると冗談ではなく、本気だった。
カノンが大金貨をカウンターに置いたので、気が変わる前に権利書を用意した。
道具屋に到着したカノンは、目当ての荷車を手に入れた。
ついでに道具屋の優しい店主に、段ボールでお世話になったお礼がしたかった。
店の商品を大人買いしようとした。
「あははっ。そんなことしなくてもいいよ。必要な物を買ってくれるのが一番嬉しいんだから」
だけど、それは店主に笑顔で断られてしまった。
「そうですか……じゃあ、回復薬(HP回復)と魔法薬(MP回復)と毒消薬を一本ずつください」
「はい、毎度あり——冒険者になったみたいだね。お金があるなら、魔物図鑑やダンジョン図鑑、素材図鑑や魔法図鑑も置いてあるよ。知識はお金よりも価値があるってね」
沢山ある商品の中で必要なのが、三つしかないのはちょっと失礼だが、店主は笑っている。
カノンから小金貨2枚受け取ると、大銀貨7枚を返した。
そして本が置かれた棚を手で差して、オススメしている。
「本ですか……」
本棚の前で、カノンは買おうか考えている。文字は読めるけど、勉強は苦手だった。
だけど本を進化させると、どうなるのか興味がある。
店の商品は断られたから、こっちを大人買いすることにした。
「おじ様。この本棚の本を全種類一冊ずつください」
「…………」
道具屋の店主は、学習能力のないカノンにちょっと呆れている。
それでも本を読めば、少しは学習するはずだと信じることにした。
大金貨を2枚受け取ると、店から出て行く少女の背中を見送った。
♢
「あとは使用人付きの家ですね」
「ク、クゥーン!」
今日の残りの予定は家の購入だ。
使用人付きは無理かもしれないが、家は豪邸でも何でも買える。
街の不動産屋に荷車で行くと、あとで柔らかい敷物を買おうと決めた。
思ったよりも乗り心地が悪かった。
「すみません。使用人付きのお家はありますか?」
「えっと……とりあえずお席にお座りください」
「はい」
不動産屋には三人の従業員がいた。
そのうちの長い緑髪の女性が、厄介なお客様の対応に志願した。
「本日はようこそおいでくださいました。お客様の担当のフィリア・メープルです。どのような家をお探しでしょうか?」
カウンター前の椅子に座るカノンに、フィリアと名乗る女性が丁寧にお辞儀して、椅子に座った。
年齢は23歳で、黒い制服を執事みたいに着て、女性らしさの中に男らしいを持っている。
そんな彼女のカノンの第一印象は、金持ちの馬鹿な娘がやって来た、だ。
「使用人付きで、お風呂と食事の用意をしてくれて、庭付きの家がいいです」
「そうですか……それだと最近ある貴族様のお屋敷が売り出されたところです。少しお高めなんですが、張り紙を出せば、使用人はすぐに集まると思いますよ」
「わぁ~! それいいですね! どんなお屋敷なんです?」
めちゃくちゃな要望だが、フィリアはウンウン頷いている。
全部聞き終わると、ちょうどいい物件があったので紹介してみた。
まずは超高めの物件を紹介して、少し高めの物件を紹介する。
そうすることで、客にお得感を与えることが出来る。
「このお屋敷なんですけど——」
「あー、これはいいです」
「え? あ、はい。かしこまりました……」
フィリアが12億ギルドの物件を紹介しようとしたが、その屋敷に最近まで住んでいた。
新生活を送りたいのに、昔の家に戻るつもりはなかった。
カノンは素早く断って、他の物件を紹介してくれるように頼んだ。
「ではこちらの物件はどうでしょうか?」
「うわぁー、穴だらけですね。物置きですか?」
あまりの即決否定に、もしかすると嫌がらせかもしれない。
そう思ったフィリアは冗談で、今度はゴミ物件を紹介してみた。
平屋の一軒家で、風呂とトイレも付いて、驚き価格の3万ギルドだ。
問題があるとしたら、パトラッシュの体当たり一発で壊れそうな廃屋だということだ。
修理するのはまず無理で、住みたいなら解体費用と新築の建築費用が必要になる。
軽く計算して、350万ギルドになるので、貴族の屋敷と比べるとお手軽物件ではある。
「こちらは解体必須ですが、住宅地なので使用人は集まりやすいと思いますよ」
「じゃあ、ここでお願いします」
「え? 本当にいいんですか?」
一応仕事なので、フィリアは褒められる所だけは褒めた。
でも自分なら絶対に住みたくない。
建物と建物の間にある廃屋で、住宅地密集地だから、朝早くから夜遅くまでうるさい。
「はい、問題ないです。ここでお願いします」
「かしこまりました。すぐに土地と家の権利書をご用意します」
もう一度確認すると冗談ではなく、本気だった。
カノンが大金貨をカウンターに置いたので、気が変わる前に権利書を用意した。
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