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僕の人生に良いことはなかった(犬獣人視点)

第7話 白帯豪武麟現れる

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 でも、今のレベルで外に出ると、灰色狼にバリボリだ。
 もうちょっとどころか、かなりレベルを上げないと安心して外に出られない。

「ここも修羅威無出るのかな?」

 騙し絵みたいな壁に触れてみた。

「あれ? 別の文字になってる」

 現れた設定画面のモンスター選択に修羅威無はなかった。
 代わりにあったのは【豪武麟ごうぶりん】だった。
 なんて読むのか分からないけど、なんか人みたいな絵が描かれている。
 多分、人間みたいな姿のモンスターだ。

「よし、【弱い】【少ない】【遅い】と……」

 設定終わりだ。まずは弱い豪武麟を2人がかりで倒してやる。

『ゴウウッ』
「……子供じゃん」

 待っていると地面から飛び出してきた。なんか僕達に向かって拳を構えている。
 緑色の顔、僕達と同じぐらいの身長、服は分厚い黒い作業服?、頭と腰に白い布を巻いている。

「僕1人で充分なんだも」
「うん、頑張って」

 確かに楽勝だと思う。アンガスが木剣をブンブン振り回して近づいていく。
 そんなアンガスに豪武麟が殴りかかってきた。

『テ、テアッ!』
「だもん!」

 けれども拳が届く前に、アンガスが木剣を振り上げて、豪武麟の頭に叩きつけた。

『ゴヴッブ!』

 うん、やっぱり1人で充分だった。
 頭を砕かれた豪武麟が地面にフラリと崩れ落ちた。

「フンッ! 楽勝なんだも」
「じゃあ、数と強さを上げるね! 目標はレベル10にしよう!」

 修羅威無よりは強そうだけど、僕達2人の敵じゃなそうだ。
 僕もレベル5になって、木剣が軽くなったような気がする。
 つまり強くなれるのは、アンガスだけじゃないってことだ。

『『ゴウウウ……』』
「あれ? 布の色が茶色になってる」
「そんなのどうでもいいんだも。ぶち殺してやるんだも」
「うん、そうだね」

 設定変更後に現れた豪武麟の布が茶色に変わっていた。
 まあ、別に大した変化じゃないから問題ないと思う。
 アンガスと一緒に現れた2匹の豪武麟に向かっていった。

「だもん!」
『フゥッ、ハァアアアッ!』
「ぐもぉ!」

 だけど、アンガスの振り下ろされた木剣を軽々と躱すと、腹に強烈な一発を叩き込んだ。
 堪らずにアンガスが地面に膝から崩れ落ちた。そこからさらに追撃の……

『セイヤァー!』
「ぶへぇぇえ!」
「アンガス~~~~‼︎」

 一撃が顔に叩き込まれた。アンガスが無様に地面に倒れて、ピクピク痙攣している。
 間違いない。豪武麟が喧嘩のプロになっている。
 早くリセットしないと、次々に現れる喧嘩屋豪武麟達にボコボコにされてしまう。

「アンガス、大丈夫!」

 急いでリセットボタンを押して、2匹の豪武麟を消すと、倒れているアンガスを揺さぶった。

「……ぅ……うぅ、い、痛いんだも」

 見れば分かる。鼻血が出ている。
 1階に戻って、シャムに治療してもらった方がよさそうだ。
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