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僕の人生に良いことはなかった(犬獣人視点)
第2話 修羅威無は食べられるの?
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「ロップ、もう出てきていいわよ」
お風呂の扉を叩いて、シャムがロップに呼びかけている。
ちょっと待っていると、中からかすかな声が聞こえてきた。
「……っ……」
「え? なに?」
「……っ……」
あー、これ絶対に聞こえないやつだ。
ロップの声は可愛いけど、普段から超小声だ。
扉の向こうから話されても、絶対にこっちまで声が届かない。
「仕方ないわね。とりあえず放置して、今後の対策でも考えましょう」
「ぼ、僕に任せるんだも! ロップ、僕だも。開けて欲しいんだも。ロップだも」
シャムが諦めて床に座ると、代わりにアンガスがお風呂の扉の前に座った。
ものすごくやる気に満ちているけど、どう見てもお風呂覗いているようにしか見えない。
「ほら、あんたが一番重要なんだから、さっさと来なさい」
「はぁ~い」
先のことなんか考えたくないけど、行くしかない。
部屋の真ん中に座るシャムの前に座った。
「いい? 篭城するのに必要なのは水と食糧よ。水は心配ないけど、食糧はパンを1人1日3個としても、一週間しか持たないわ」
「えっ⁉︎ じゃあ、アンガス食べないといけないの!」
一週間なんて、あっという間だ。
それに一週間もパンと水だけなんて死んでしまう。
お風呂の扉前に座るアンガスを見てしまった。
「ぼ、僕は牛じゃないんだも! 人間なんだも!」
「まあ、それも有りね。でも、それは最終手段に取っておくわ。あの牛、不味そうだし」
「た、確かに……」
「二人共、失礼なんだも。僕は絶対に美味しんだも」
ううん、絶対に不味そうだ。食べるならロップの方が美味しそうだ。
でも、友達を食べるのは、僕も最後の手段にしたい。
「はいはい。美味しい、美味しい。じゃあ、話を進めるわよ」
「まだ、終わってないんだも。ほら、腕舐めるんだも。美味しい味がするはずなんだも」
「うぐっっ……!」
絶対に舐めたくないのに、アンガスが僕の口に腕を押しつけてきた。
「シャアアッ! 食べていいなら、本当に食べるわよ!」
「ひ、人喰い猫なんだもお‼︎」
助かった。シャムが口を大きく開けて、アンガスの腕に噛みつこうとした。
アンガスが急いでお風呂の扉前に逃げていった。
「まったく、あの牛は……」
「それでどうすればいいの?」
呆れ顔のシャムに聞いてみた。早く話の続きが聞きたい。
「ふふん♪ 名案があるのよ。あの無限に出る青ボールを食べればいいのよ」
「ええー! あれ食べられるの⁉︎」
触った感触は柔らかかったけど、味はまったく予想できない。
「分かんないけど、食べようと思えば食べられるんじゃないの? アンガス、あんた肉好きだったわよね?」
「だも! あれは肉じゃないんだも!」
「いいから食べなさいよ。一口だけでいいから。野菜だけじゃ足りないでしょ?」
「お腹満腹なんだも! 何も食べたくないんだも!」
「ちっ、使えない牛ね。あいつ、パン抜きにしましょう」
ほっ。僕は食べなくていいみたいだ。
ごめん、アンガス。しばらく食事抜きにするけど、修羅威無食べたくなったら言ってね。
すぐに出すから。
お風呂の扉を叩いて、シャムがロップに呼びかけている。
ちょっと待っていると、中からかすかな声が聞こえてきた。
「……っ……」
「え? なに?」
「……っ……」
あー、これ絶対に聞こえないやつだ。
ロップの声は可愛いけど、普段から超小声だ。
扉の向こうから話されても、絶対にこっちまで声が届かない。
「仕方ないわね。とりあえず放置して、今後の対策でも考えましょう」
「ぼ、僕に任せるんだも! ロップ、僕だも。開けて欲しいんだも。ロップだも」
シャムが諦めて床に座ると、代わりにアンガスがお風呂の扉の前に座った。
ものすごくやる気に満ちているけど、どう見てもお風呂覗いているようにしか見えない。
「ほら、あんたが一番重要なんだから、さっさと来なさい」
「はぁ~い」
先のことなんか考えたくないけど、行くしかない。
部屋の真ん中に座るシャムの前に座った。
「いい? 篭城するのに必要なのは水と食糧よ。水は心配ないけど、食糧はパンを1人1日3個としても、一週間しか持たないわ」
「えっ⁉︎ じゃあ、アンガス食べないといけないの!」
一週間なんて、あっという間だ。
それに一週間もパンと水だけなんて死んでしまう。
お風呂の扉前に座るアンガスを見てしまった。
「ぼ、僕は牛じゃないんだも! 人間なんだも!」
「まあ、それも有りね。でも、それは最終手段に取っておくわ。あの牛、不味そうだし」
「た、確かに……」
「二人共、失礼なんだも。僕は絶対に美味しんだも」
ううん、絶対に不味そうだ。食べるならロップの方が美味しそうだ。
でも、友達を食べるのは、僕も最後の手段にしたい。
「はいはい。美味しい、美味しい。じゃあ、話を進めるわよ」
「まだ、終わってないんだも。ほら、腕舐めるんだも。美味しい味がするはずなんだも」
「うぐっっ……!」
絶対に舐めたくないのに、アンガスが僕の口に腕を押しつけてきた。
「シャアアッ! 食べていいなら、本当に食べるわよ!」
「ひ、人喰い猫なんだもお‼︎」
助かった。シャムが口を大きく開けて、アンガスの腕に噛みつこうとした。
アンガスが急いでお風呂の扉前に逃げていった。
「まったく、あの牛は……」
「それでどうすればいいの?」
呆れ顔のシャムに聞いてみた。早く話の続きが聞きたい。
「ふふん♪ 名案があるのよ。あの無限に出る青ボールを食べればいいのよ」
「ええー! あれ食べられるの⁉︎」
触った感触は柔らかかったけど、味はまったく予想できない。
「分かんないけど、食べようと思えば食べられるんじゃないの? アンガス、あんた肉好きだったわよね?」
「だも! あれは肉じゃないんだも!」
「いいから食べなさいよ。一口だけでいいから。野菜だけじゃ足りないでしょ?」
「お腹満腹なんだも! 何も食べたくないんだも!」
「ちっ、使えない牛ね。あいつ、パン抜きにしましょう」
ほっ。僕は食べなくていいみたいだ。
ごめん、アンガス。しばらく食事抜きにするけど、修羅威無食べたくなったら言ってね。
すぐに出すから。
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