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あこぎな商売始めておる(神視点)

14話

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 さて、幸せに生活しておるかの?
 退廃地区に住む獣人の子供達にスキルを与えて、しばらく経過した。
 まあ、たったの数日じゃ。そこまでの変化はないじゃろうて。
 だが、神たる者の務めじゃ。見守ることしか出来んが、見届ける義務がある。

 確か、この辺じゃったはずじゃが……
 ダンジョンの気配を追って、退廃地区を上から探していく。
 間違いなくこの近くにおるはずじゃ。

「パンが食べたいなら頑張るの」
「よぉーし、やるぞ!」
「どうぞ、なんだも」

 おっ! 見つけたぞよ!
 可愛い人形を持った兎少女がダンジョンの扉の前で、カゴに入ったパンを持っておる。
 隣には木剣を持った牛少年が、ダンジョンに入る、儂の知らない獣人の子供達に木剣を渡しておる。

 なるほどのぉ~。子供達に修羅威無を倒させて、パン代を稼がせておるんじゃな?
 自分達だけでなく、周りのお腹を空かせた子供達も助けるとは見上げた心意気じゃ。
 さすがは儂が見込んで、スキルを授けてだけのことはある。

 ほっほっほつ♪ そして、そんな優しい子供達を見つけた、儂もさすがじゃな。
 まあ、これは当たり前じゃな。神じゃから♪

「えいっ、えいっ!」

 ほぉー、部屋を限界まで拡張しておるな。
 前よりも4倍も広くなった白い部屋に、木剣を持った子供達が10人もいる。
 2人は犬少年と猫少女、残りの8人はやはり知らんな。お友達じゃろうか?

「はぁ~い、時間切れよ。パンは無し」
「そんなぁー! あと3匹だから倒させろよ!」

 なんじゃ、なんじゃ? ケンカか? 仲良くせんと遺憾ぞよ。
 猫少女が猿少年の木剣を取り上げておる。それに対して猿少年が怒っている。
 いや、パン無しに怒っておるんじゃな。

「はあ? 文句あるの? 私、説明したよね? 10分で青ボール100匹倒したらパンあげるって。出来なかったのは、あんたの責任でしょ」

 なるほどのぉ~、1分で10匹だの。
 休まずに続ければ、やれる数ではあるな。
 つまりは猿少年が遊んでいたということじゃな。

「だから、あと3匹だからいいだろ! 1分あればやれるって!」

 ダメじゃダメじゃ。子供だからといって、時間を守らなくていい道理はないぞ。
 パンとはいえ、生き物じゃ。生きているものをいただくということは、それは尊いことなんじゃ。
 そんなことも分からないようなら、今一度、溝のお金拾いから始めんしゃい。

「アンガスゥ~! コイツ、なんか文句あるみたいよぉ~!」

 およっ? 猫少女が外にいる牛少年を呼んでいる。
 あぁー、なるほどの。暴力的とはいえ、心はか弱い少女なんじゃな。
 分かるぞ、分かるぞよ。その気持ち! 男には頼りたくない。
 だけど、時には甘えたくなる、それが女心というやつじゃ。
 恥ずかしくない。全然恥ずかしいことではないぞ!
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